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理想の未来に死にゆく絆:第5話

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理想の未来に死にゆく絆:第5話
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束の間の散策、ダレストリスの状況


「は~、やっと着いた~!」

 船から降りて星川 潤也は体を伸ばす。
 グラン・グリフォンからダレストリスまで、魔力狩りをしながらの長旅は過酷なものだった。
 ここまで来れたのは、潤也に続いて降りるアリーチェ・ビブリオテカリオ松永 焔子信道 正義、エスとハディック隊のおかげである。

「気を抜いてんじゃないわよ! ここからが本番なんだから!」

「アリーチェ様の言う通り……。今までが準備運動ですからね」

「だが見る限り、大きな混乱は見られないな」

 他の地域では教会を拠点に避難していたり、町や村が壊滅していたりと凄惨な状態だった。
 しかし、この港町では商人が届いた品の確認や、船員が船の掃除をしたりと日常が営まれている。

「さて、思った以上に落ち着いていますがどうします?」

 エスの問いに、焔子が向き直る。

「私は教会に行き、それらしい事件と犯人の目撃情報を収集してきます」

「俺はアリーチェと店でも回ろうかなって思ってる」

「とか言って、ちょっと観光しようかなって思ってるでしょ?」

「うっ……」

「まぁ、染まる武器も探さないといけないから、あたしたちはこの辺りを散策してるわ」

「潤也、アリーチェ。俺も同行していいか?」

「あぁ、かまわないぜ」

「我々は宿でも探しておきますね」

「大丈夫なのか?」

「大丈夫でしょう。我々はそこまでやわではありませんから」

「わかった。お前たちがそう言うなら信じるよ」

「何かあればパロトを使って連絡してください」

 エスの肩にヨウムサイズの黒い鳥が止まる。

「ええっとしゃべる魔鳥、だっけ」

「そうです。パロトに伝えたい内容を話せば、必ず届けてくれます。状況に応じて活躍させてあげてくださいね」

「オシャベリ イッパイ シヨウネ~」

 パロトは翼を広げ、エスの肩から飛び立つ。

「俺たちも行くか! じゃあ、みんなまた後でな!」

◆ ◆ ◆


「人間と魔族が一緒に暮らしている国か……。こういう国が、もっと増えたらいいのにな」

 潤也、アリーチェ、正義は近くの港町を散策する。
 彼らがいるのは露店が左右に軒を連ねている通り。
 ここでは魚や野菜といった生鮮食品や加工品などの販売を行なっている。
 時間は朝なのだが、多くの人がカゴを提げ、品を吟味していた。

「とりあえず、武器売ってそうな店に行きましょう」

「あぁ、えぇと、武器武器……」

 潤也は右側の露店をアリーチェは左側の露店から探す一方、正義は微かな違和感を覚えていた。

(2人への視線が、若干きついような……)

 最初は特に何も感じなかったが、人とすれ違うたび潤也とアリーチェに冷たい視線が注がれる。
 彼らの後ろに正義が立つと、わずかだが一般人たちの目元が和らぐ。

(2人は何もしていないはずだが……)

 迷惑になるような行動は取らず、ちゃんと人の流れに合わせて歩いている。
 暗黙のルールの存在も疑ったが、見ただけだとそういうものはないように思えた。

(あまり2人から離れないようにしよう)

 正義が周囲を警戒する中、冷ややかな視線を向けられているとは知らない潤也とアリーチェは武器兼アクセサリーショップに足を止めていた。
 木製の筒には剣が無造作に入れられ、台にはチョーカーやモノクルなどが均等に並べられている。
 アリーチェはモノクルを取るが、姿に変化はない。
 他のモノクルも手にしてみるが、どれも姿は変わらなかった。
 念のためマギアビジョンを通して見ていると、ある物を思わず手に取る。

「ねぇ、これ、あんたのお嫁さんやフィリアに似合うんじゃないかしら?」

 アリーチェが取ったのは、金のパーツをベースに透き通った青の石がついたイヤリング。
 石は小ぶりで丸く、さりげないおしゃれにもちょうど良さそうである。

「お、お嬢ちゃん、いい目してるね。そいつは死に直面したとき一度だけ強力な結界を張ってくれる貴重なものだ。なかなか手に入らない代物だよ」

「へぇ……じゃあ、これを2つくれ!」

「残念だけど、これは1つしかないよ」

「じゃあ、そのイヤリングとこの青のネックレスを」

「毎度あり!」

 フィリアにはイヤリングを、大切な人にはネックレスを贈ることにした潤也。
 だが、2つ合わせての金額に財布がちょっとだけ寂しくなったのは彼女たちに内緒にしたい。

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