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アルスター辺境伯領の冒険! 最終回

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アルスター辺境伯領の冒険! 最終回
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SCENE1. 遺跡探索


 最終決戦を経て、シャングリラに到着したアーク。
 しかし、シャングリラには未だバルバロイ・サヴェジの残党が無数に残っており、また、新たなるバルバロイもシャングリラへと襲来し続けていた。
 このような状況下においては、アーク本来の目的である<シャングリラへの移民入植>は不可能だと、王都レンスターの王族貴族たちは判断し、入植のための一大掃討作戦を展開することとした。
 その掃討作戦に投入されることとなったのが、かねてより醜聞に揺れ、改易も取り沙汰されていたアルスター辺境伯家とラードナー伯爵家の騎士団、そしてアルスター辺境伯家世子フィオナ・アルスター率いるフィオナ騎士団であったのは偶然ではあるまい。
<闘いにより貴族の証しと誉れを立てよ>――帯剣貴族であるアーク貴族ならではの峻厳な論理により、彼ら彼女らには汚名返上と名誉挽回のチャンスが与えられたのだ。
 王都レンスターからの命を受けたフィオナは、アルスター辺境伯領の事実上の統括者として、その機会を受け入れた。
「我が身と家名に受けた恥を濯ぎ、敵を打ち払い、民人を安んじめる機会を与えていただきありがとうございます。フィオナ騎士団、いえアルスターに関わる全ての貴族は、王室の藩屏として、たとえそれがいかに困難な使命であっても達成してみせます」
 そのように王室の使者に答えるフィオナは、どこか吹っ切れた清々しい表情をしていた。
 しかし、フィオナの担当正面だけでも1000のバルバロイ・サヴェジ残党と100の新来バルバロイが徘徊しているという。これを打ち払い、王室の与えた使命を全うするのは大変な労苦と言えた。
 そこで、少しでもその労苦を軽くするため、先に提唱されていた<アンチバルバロイジャマー量産計画>が発動された。バルバロイの意思疎通を妨害し統率の取れた戦闘を不可能にすることで、闘いを有利に進める手段を獲得することがその目的である。
 そして、アンチバルバロイジャマーの量産に必要なバイオプラントの確保のため、アルスター辺境伯領の片隅に埋もれていた遺跡の探索が開始された。遺跡にはモンスターが住み着き、危険度は高かったが、バルバロイと異なり通常装備だけでもどうにかなるのが救いではあったろう。
 複雑な迷宮と化した遺跡へと、探索隊メンバーたちは挑むのであった。



 耳をつんざく轟音とともに、道を塞いでいた木の根がなぎ倒され、大穴が開く。パワードスーツ<FPW-88ファランクス>に乗り込み、PSチェインブレードを振るって、デラバス・オーダインは遺跡の進路を切り開いてきた。
「確か、クローヴィスの話ではバイオ関係の遺物発見が目的だったな」
 デラバスはそのようにひとり呟く。彼はもともとアルスター辺境伯領に関わりのある者ではない。だが、フォールドミスでこの世界に迷い込み、宇宙漂流していた際にアークに救われ、その際の生命の恩人クローヴィス・キルデアに、アルスター辺境伯領に課せられた試練の助けとなるよう頼まれて、遺跡を訪れていたのだ。
「あの賢明なクローヴィスが手を貸すんだ、なにか理由があるな――入植後を見据えての行動か」
 デラバスはそのように推測する。アルスター辺境伯領のバルバロイ掃討作戦がうまく行けば、アーケディア王国は新しい入植地を確保し、アルスター辺境伯家は今後のアーケディア王国でも生き残っていくことができる。ならば、アルスター辺境伯家を後押しすれば、王国は入植地を確保し、大貴族への恩義を獲得できる。そんなところか――と読んで、デラバスは首を振った。
「まぁ、上の連中の思惑はどうでもいい。面白い冒険の機会を与えてくれたんだ、せいぜい堪能することにしよう」
「全く、デラバスらしいわね」
 遺跡を探索する彼の姿を、<PPS90バーバ・ヤガー>の操縦席から見つめるプリムラ・F・ラニアは、どことなくしっくりした感覚を覚えていた。
 彼女はかつての世界ではデラバスのビジネスパートナーだったが、ここアークではデラバスの冒険の相棒を務めている。彼女としては元の世界に戻りたいというのはあるのだが、それよりもデラバスとともに冒険することに生きがいを強く感じていた。
「今のところ、モンスターの姿はないわね。めぼしい遺物を見つけたらできるだけ持ち帰りましょう」
「とはいっても、まだそれほど奥に入ったわけじゃないからな。お宝は一番奥に眠ってるってのがこの手の話の常道だが――DECO、なにかめぼしいものは見つかったか?」
 デラバスが開けた穴から奥に入って、内部を確認していたDECO・モリサマーは、<PPS90バーバ・ヤガー>の首を振りつつ答える。
「この辺りは遺跡でも重要じゃない場所みたいです。でも端末みたいなものは見つけたです!」
「規格が合うかな……」
「やってみるです!」
 DECOは生体LANジャックで脳神経と端末を直接つなぎ、ダイヴを試みる。
「繋がるは繋がったです! でもジャンクデータばかりです!」
「あんまり無理すんな、下手に攻性防壁でも食らわされたらたまったもんじゃない」
 デラバスはそう言うが、DECOはデータ検索を諦めない。
「もうちょっと探ればきっとお宝が出てくるです!」
 そして、莫大なジャンクデータをマイニングしたあと、ようやく価値あるデータにたどり着いた。
「んー、これは地図です! バイオ設備の在り処が記されてます!」
「良くやった!」
 デラバスは早速DECOが発掘したデータを調査隊全員に配布し、一路バイオ設備の置かれている研究施設中枢部へと潜っていくのだった。



 彼らの有様を後ろで見守っていたロデス・ロ-デスは、ほっと息を付いた。現状、彼が危惧していたようなダンジョン特有の罠は見つかっていない。
「少し残念かな」
 そのようにぼやくと、ロデスについてきたアリシア・メカニックがツッコミを入れる。
「オークの根城になってるらしいから、危ない罠はないんじゃないかな?」
「だが防衛用のなにがしかは配置されていると思うが?」
「それはもっと奥、オークの根城にあるかもしれないけど……」
「そうでなくちゃ張り合いがない。ただまぁ、古代の遺物が”アンチバルバロイジャマー量産のため”のバイオ設備、というのが、いささかロマンがないが」
 葉巻をふかしてうそぶくロデスに、アリシアは複雑な表情をする。
「ロデスは夢追い人なんだね」
 その言葉には若干の揶揄と、そして憧れが混じっている。
「そうさ。ロマンだけでは生きられないが、ロマンがなければ生きてる意味がない。そういうもんだ」
「ふーん。ボクはそういうの、あまり判らないけど、まあ、キミのカッコいいところが見られるのはそう悪くないかな」
 アリシアの言葉に、ロデスはニヤリと笑った。
「ロマンを追うものはいつだって格好いいものさ――さあ行くぞ」
 前衛が開けた大穴に向かい、歩み寄っていくロデス。アリシアも足早に彼を追った。



 更にその後ろ、宇宙艇フェニックスSの操縦席では。
「埋もれた超技術の発掘! 久々に燃えるぜ! なんせ俺は宇宙を股にかけるロステクハンターだからなヒャッハー!」
 アキラ・セイルーンが怪気炎を上げていた。
 しかし。
 バキリ、という音を立ててアキラの頬に傍らのルシェイメア・フローズンが放ったストレートがヒットする。
「――ルシェイメアさん、なんで俺殴られたんですか、っーかなんか折れてはいけないものが折れた音がした気がするんですけどぉ!?」
「ああもうやかましい耳元でぎゃーすか騒ぐな! なんだかこのアバターになるとお主をみるたびにもやもやした気分になって仕方がないんじゃ!」
「それってもしかして……」
”夢の世界”での顛末を思い返して鼻の下を伸ばすアキラに。
「それ以上言ったら本当に折れてはいけないものが折れるぞよ」
 ルシェイメアが冷酷な宣告を下す。
「アッハイ、スミマセン」
 カクカクと首を縦に振るアキラに、とりあえずルシェイメアは鉾を下げた。
「しかし謎じゃのう。わしらは三千界を渡る特異者じゃが、”夢の世界”のアバターやスキル、装備が何故か使える。これは三千界的にもイレギュラーじゃ。好奇心が掻き立てられて仕方がないんじゃが」
「ルーシェ、それは後で考えてもいいんじゃね? 今は遺跡探索のほうが大事だぜ?」
 アキラの現実的な言葉に、ルシェイメアはふくれっ面をする。
「お主という男はこの大魔女たるわしの思惟を邪魔しおって……じゃが正論ではあるな、前に進むとするかのう」
「そうそう。そんでもってお宝ゲットしてルーシェとグフフ……」
「やかましいわい!」
 アキラの言葉に、顔を赤く染めて怒鳴り返すルシェイメアだった。



 一行が前に進むと、通路は次第に障害物が少なくなり、生活の気配を帯びてきた。通路の左右には松明が並べられ、光源となっている。明らかに先住者が利用していると判断できた。
「DECO、ここはマップじゃどの辺りだ?」
「物資搬入路から倉庫に出る辺りです! オークがいるならこの辺りからです!」
 元気のいいDECOの返事を聞いて、デラバスは警戒を強めた。
「総員戦闘準備! オークごときに遅れを取るとは思わんが、奴らも星詩や星楽を使う! 惑わされて遅れを取るなよ!」
 応、と後続の者たちから声が上がる。
 デラバス、プリムラ、DECOの3人は前衛として倉庫のドアを破り、内部へと素早く侵入した。
 すると、そこは神殿状の区画に改造されており、屈強なオーク兵士とオーク神官が待ち伏せしていた。
「くそっ、撃ちまくれ!」
 デラバスが号令を発すると同時に、オーク神官が星音を奏でる。突如出現した土壁と火球に、デラバスのファランクスから放たれたプラズマスフィアがぶつかり、拮抗して消える。しかし土壁は幾分崩れた。
 そこにプリムラがバーバヤガーからブラックホール・バースターを打ち込む。重力子線の規格外の威力が、周囲の物体を巻き込んで崩壊させる。土壁はあっという間に消滅した。
「行くです!」
 土壁の崩壊を見て、DECOが立体機動と高速機動で先行しようとするが、そこにオークの楽師が奏でる星楽が直撃する。集中力を麻痺させる微睡と疾風を起こす颯の組み合わせで、DECOは生体強化外骨格のコントロールを失い墜落する。
「あわわ、流石に痛いです! 怒ったです!」
 DECOは朦朧とした意識を覚醒させ、新刊と楽師に肉薄しようと試みるが、目前にわらわらと現れたオーク戦士が彼女の行動を阻む。手にしている武器は粗末な近接格闘武器だが、オークの膂力でぶん殴られれば外殻は大丈夫でも衝撃緩衝装置が保たないかも知れない。そうなれば中身がシェイクされてミンチになる可能性がある。
「DECO、一旦下がれ!」
「はいです!」
 デラバスの声に、不利を悟ったDECOは後退。颯の後押しを受けて猛然と攻めかかってくるオーク戦士たちだが、ロデスのマーダーズアイが輝くと、一瞬怯んだ素振りを見せ、足が止まる。そこに、デラバスのサイコスフィア、プリムラのブラックホール・バースター、ロデスのホーミングビームガン、アキラとルシェイメアのフェニックスSに搭載されたレーザーガンが集中射撃を浴びせる。
「――!」
 オーク戦士たちが最後に見たものは圧倒的な力の奔流だった。
「これだけの集中射撃を浴びせれば……」
 デラバスは呟くが。
「跡形もないわね。やりすぎたんじゃない?」
 プリムラがツッコミを入れる。実際、オーク戦士だけでなく神殿の内装は跡形もなく、内壁にひびが無数に入っていた。
「でも神官と楽師は逃げたです! 奥があいつらの本拠です!」
 DECOのいう通り、センサーには更に奥に進む生体反応が写っていた。
「ん、長居するのは危ないな」
「そうね、崩れかかっているし」
 ロデスの言葉に、アリシアがうなずく。
「かーっ貴重な遺産を台無しにしおって! やりすぎじゃ!」
 ルシェイメアはお冠だが。
「とはいえルーシェだってノリノリだったじゃん」
 と、アキラが突っ込む。
「ま、まあ済んだことは仕方がないことじゃ」
 ルシェイメアがそのように応えたところで、デラバスが告げる。
「追撃するぞ。さっさと片付けちまおう」
 一同は深くうなずき、敵の逃げた方向へと進むのだった。



 デラバスを先頭に通路を進むと、そこは上り坂になっていた。
「悪い予感がするな……」
 ロデスが呟く。
「何?」
 アリシアが聞き返すと。
「いやな、一本道で坂道となると、定番トラップが――」
 ロデスが言い終わらないうちに、ガタリと音がして、巨大な石の球がゴロゴロと音を立てて転がり落ちてくる。このままでは全員下敷きになってぺしゃんこだ。
 だが、プリムラは冷静にブラックホール・バースターを撃ちはなった。巨大な石の球が疑似ブラックホールに吸い込まれ、事象の地平線の彼方へと消えていく。
「所詮オークの罠なんてこんなものよね」
 と、プリムラが足を踏み出すと。
 ガラリ。
 嫌な音を立てて、天井が崩れ、プリムラのバーバヤガーの頭に直撃した。
「小癪な真似を……」
 バーバヤガーにとってはかすり傷だが、乗っているプリムラはコクピットの内部で衝撃に目を回す。大したダメージではないが、いちいち苛立つ輩だと思えてならない。
「落ち着け。ともかく瓦礫を退けるぞ。この調子じゃ、他にどんな罠があるかしれたもんじゃない」
「ですです! センサーをフル稼働して備えるです!」
 デラバスとDECOが口々に告げる。
 そしてロデスは葉巻をふかし。
「面白くなってきやがった。アリシア。お前の考えも案外当たってそうだぞ」
 そのようにアリシアに言う。
 対するアリシアは。
「間違いないよ。これだけ周到な罠があるなら、他の仕掛けもきっとあるよ! 出番が楽しみだなぁ」
 そう意気軒昂に応える。
 その様子を見ていたルシェイメアとアキラは、この先の難関に思いを巡らせ、それでもなお、必勝の確信を抱くのだった。



 長い坂道を上りきると、そこはオークたちの大会堂に改造されていた。中央にはオークの長らしきパワードスーツ並みの巨体を誇るオークが、やはり身の丈ほどもある戦斧を盛って立っており、周囲には神官と楽師が屯し、彼らを守るように無数のオーク戦士たちが集っている。
「ウォォォォォッ!」
 オークの長が闘いの叫びを上げると、オーク戦士たちがデラバスたちに殺到してきた。そして、楽師と神官が星楽と星音を放つ。
 しかし、デラバスたちも無策ではなかった。アリシアの連れてきていたシンガーソングライター四方祓い士が対抗し、微睡でオーク戦士たちの動きを鈍らせるとともに、ウィズダム・クロックで敵の動きを若干鈍らせる。
 オーク戦士たちの挙動が乱れたところに、デラバスたちは全火力を集中した。プリムラのバーバヤガーのマルチロックオンミサイルが乱れ飛び、DECOのレーザーライフルが無数の光条となって戦場を薙ぎ払い、デラバスのプラズマスフィアが当たるを幸いなぎ倒していく。
 またたく間に敵は恐慌状態に陥り逃げ始めるが、そこにロデスのフォアシュートによるホーミングレーザー4連撃が降り注ぎ、残敵を掃討する。
 そして、逃げる場所もないと悟ったオークの長が前進してくるのに対し、アキラとルシェイメアの乗るフェニックスSがブライトバードアタックを掛け、その姿を消し炭へと変えた。
「さて、地図ではこの下に異物が眠っているはずだが、入り口が見つからないな」
 デラバスは首をひねる。
 そこに、ロデスとアリシアがドヤ顔でしゃしゃり出てきた。
「アークの遺跡には因子が関わる解錠コードがある。おそらくそれだろうと、こいつは言ってる」
「そう! D因子、M因子、S因子、G因子の4つが揃わなければ開かない仕掛けがここにはあるんだよ! 多分、きっと、おそらく、メイビー」
「なるほど、それは道理じゃな」
 ルシェイメアが頷き、アキラもそれに乗る。
「まずはこのオークの死体を片してしまおうぜ! 儀式をやるにはちいとばかり血生臭すぎるし」
「可能性は十分あるな。プリムラ、DECO、とりあえず死体を片付けるぞ」
「面倒だけど仕方ないわね」
「儀式興味あるです! 成功すればお宝ゲットです!」
 デラバスたちはオークの死体をひとところに集め、そして床が見える程度に清掃した。
 すると、そこにはちょうど4つの因子に適合する印が床の四方に書き込まれているではないか。
「ほら! ボクの言ったとおりだよ! 遺跡の儀式は本当にあったんだ!」
 アリシアが目をキラキラさせながら大きな声を張り上げると。
「そうだな、だが具体的な儀式内容がわからん」
 ロデスが冷静にツッコミを入れる。
「それはきっと、印の上に適合する人間を乗せるんでいいんじゃないかな……」
 自信なさげになるアリシア。
 そこに、ルシェイメアがさも知恵者のような顔をして助言する。
「儀式内容についてはこの部屋のどこかかDECO殿が集めたデータにあるじゃろ。まずはそれを探すのじゃ」
 彼女の助言に従い、デラバスたちは部屋の中を、DECOはデータを探索する。
 そうすると、デラバスは生き残っていた施設の端末を見つけた。
「DECO、この端末からデータを抜いてくれ」
「了解です! データ全部引っこ抜くです!」
 DECOは再び生体LANジャックでデータをロードしていく。その姿を見たアキラは不思議そうにつぶやいた。
「”夢の世界”とアークの遺跡にはなにか関係があるのかにぃ? 規格が偶然合ってたなんてことはありえそうにないけど」
 そのような疑問に、ルシェイメアが応える。
「地球にあるものは三千界にあるものの投影じゃ。ならば、”夢の世界”もまた、三千界と共通する部分を持っていてもおかしくあるまいて」
「ほーん。そういうものなのかにぃ」
「とはいえ、アークの技術は未知なるものが多い。なぜ飛んでいるかも説明できんしのう」
「ほんそれ。でもまぁその御蔭でロステクに出くわせるならラッキーだぜ。それより……」
 アキラの腹がきゅうと鳴いた。
「オークって、もしかして食ったらうまくね?」
 ルシェイメアはうなずいた。
「そうじゃのう……お主の言うところによるとオーク肉はうまいと定番らしいではないか。丁度いい。新しい魔女のスープの材料を探しておったところじゃ」
「え」
 露骨に嫌な顔をするアキラに対し。
「なんじゃ、貴様も味をもうちょっと頑張って欲しいと言っておったであろう。リクエストに答えてやるのじゃ、文句はなかろう――まぁ、まずは普通に調理して食べられるかどうか確かめてからのことじゃがの。わかったらキリキリとオークを積み込め」
「りょーかい」
 アキラはオークの無残な死体のうち、比較的原型をとどめているそれをフェニックスSへと積み込んでいった。
「ふむ、オーク肉か。ダンジョン料理というのもロマンがあるな」
「えーボクはゴメンだな。なまじヒトに似ているから気が引けちゃう」
 ロデスに対しアリシアは肩をすくめてみせる。
「好き嫌いは良くないぞ。もしかしたらオーク肉でもっと背が伸びて胸も――って痛い痛い。いきなり肘鉄食らわすな」
「ボクが一番気にしてることを言うからだよ!」
 アリシアはむくれてそっぽを向いた。
「ったく……何やってんだか」
 デラバスは周囲で繰り広げられる漫才に軽い頭痛を覚えながら、探索を続ける。すると、戦火の中で無事だった石碑が見つかった。
「当たりだ。アリシアの言ったとおり、4因子を記した場所に適合する因子の持ち主を立たせ、合言葉を唱える。それで床の中心が開き下に降りられる」
「こっちは下に何があるかわかったです! 培養装置の他に、大物が――広域ドラグーンレーダーがあるです!」
「こっちはオークが溜め込んでいた財宝を見つけたわよ。奴ら、光り物が好きだったのね。アークでなら一生遊んで暮らせるほどの財宝だけど、手に入らないのは残念だわ」
 DECOとプリムラの報告を受け、デラバスは思わぬ成果に驚いた。
「よし、じゃあさっさと儀式を終わらせて、お宝を回収してずらかろう。この遺跡も崩れかかっているしな」
「急いで儀式をするよ」
 アリシアはそう告げるとG因子の印の上に立ち、四方祓い士はM因子、シンガーソングライターはS因子、先達を走る少年はD因子の印の上に立つ。そして合言葉を告げると、広間中央の玉座になっていた台が沈み込み、下へ降りる通路が開いた。
「やった、成功だ!」
 皆が異口同音に叫ぶ。
「よし、降りるぞ」
 デラバスたちは次々に下層へと降り、そこで目当てのバイオ設備と広域ドラグーンレーダーを発見して回収した。なお、オークの財宝も回収したのは言うまでもない。
 だが。
 地鳴りがし、天井がぼろぼろと崩れ始めた。
「思ったより早かったな」
「もっとアークの秘密を知りたかったにぃ」
「ぼやっとせずに逃げるのじゃ」
 デラバス一行が早々に遺跡から退散すると、直後遺跡は崩れて陥没し、土煙が上がった。間一髪で下敷きになるところだったが、成果は上々だった。
 かくして、アンチバルバロイジャマーの量産化に目処が付くのみならず、広域バルバロイレーダーによる今後の掃討作戦の有利を得るとともに、デラバスたちは莫大な財産をアルスター辺境伯領に献上することになった。
「あの遺跡に広域バルバロイレーダーがあったの、いつかこういう日が来るときのために先人が残しておいてくれたのかな……」
 アリシアはそう呟き。
「これだけの財産があればアークで起業できるんだが、クローヴィスからは遺跡発掘で得たものは全てアルスターに属すると言われているからな。まぁ、冒険のスリルを報酬と思っておくか」
 デラバスは感慨深げに呟いた。

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