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理想の未来に死にゆく絆:第4話

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理想の未来に死にゆく絆:第4話
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不幸降臨<2>


「まだやっていたんですか……」

 盾の検証を終え、飛鷹たちのところに戻ったエスは呆れた顔をする。

「やっと捕まえた……!」

 息を荒く切らしながら、飛鷹は仰向けになったクルーアルの手首を掴んで跨がる。
 クルーアルは彼の様子を楽しむかのように含み笑いを浮かべていた。

「何だよ」

「別に?」

「シンさーん、そろそろクルーアルさんに相談しましょうよー」

「……そうだな」

 殴るのはいつでもできると頭の隅に片付けて、飛鷹は立ち上がる。

「ほら、お前も起きろ」

「押し倒したかと思えば」

「うるせぇ」

 クルーアルは差し出された手を取って立ち上がる。

「それで相談って?」

「あいつらの世話の手伝いを頼みたい」

 飛鷹はダークエルフらを後目(しりめ)に続ける。

「あいつらが今後どうしたいかは聴けてねぇけど、俺たちについていきたいって言うなら連れて行こうと思ってる」

「僕たちは魔界ギルド人界支部じゃないんだぞ」

「わかってる。ちょっと手を貸してくれるだけでいい」

「クルーアルさん。私たちは人と魔族の共同旅団……そんなものを作れないかと思っていまして」

「断る。エスとハディック隊は事情を知っているから問題ないが、ダークエルフは論外だ」

 ついさっきまで敵だった者たちを引き入れるのだ。
 警戒するのは当然で。断られるのも自然な流れだった。

「……わかった。俺がまとめて独自に動くことにする。変な頼みして悪かったな」

 彼らの今後に耳を傾けようと背を向ける。

「独自に動くだと?」

 食いつくような言い方に飛鷹は振り向いた。
 クルーアルの瞳がらんらんと輝いている。

(げ……何か嫌な予感……)

 クルーアルは飛鷹の右腕に抱きつく。

「集合!」

 彼の号令にハディック隊が二列に並んで飛鷹たちの前に整列する。

「おい、何するつもりだ!」

 逃れようともがくが、クルーアルは離してくれない。

「いいから黙って聞け」

 クルーアルは彼らを見据え、口を開いた。

「僕は本日をもって指揮を降りる。よって今日からお前たちのボスは飛鷹だ」

「……は?」

 飛鷹が受け止めるのに時間を要す中、話は進む。

「呼び方はいつも通りでいいから。ちょっと練習しよう」

 クルーアルはまず自分を指す。

『クルーアル様!』

 次に風を指す。

『風様!』

 そして飛鷹を指す。

『ボス!』

「いじってんだろうが!!」

「飛鷹、安心しろ。教育は完璧だ。お前のためなら何でも動いてくれるぞ」

「どうしてこうなった……」

「お前が独自に動くとか言うからだろう。だったら、僕の全てをあげた方がいいんじゃないかと思って。そうすれば僕は飛鷹の頼みを聞けるし、飛鷹たちは駒が増えて活動を広げられる。Win-Winってやつだよ。僕もサポートするから、な?」

 ポンポンと肩を叩くクルーアル。
 飛鷹は予想外の出来事に返す言葉が全く出てこない。

(いやはや、大変なことになりましたねぇ! まぁ、何があっても支えますからね、シンさん!)

 風はニコニコしながら今後の動向に期待する。
 そこに潤也が遠慮がちにやってきて、クルーアルに声をかけた。

「ええっと……ちょっと話があるんだけどいいか?」

 クルーアルは呆然とする飛鷹を放置して潤也に近づく。

「何かな?」

「エスとハディック隊をダレストリス帝国に連れて行きたい。ダレストリス一世と魔王アクロノヴァがいるんだ。ノー・キラーから庇護してもらえるんじゃないかと思ってる」

「……なるほど。君の考えにのってみよう。エス、ちょっと来てくれ」

 クルーアルはエスを連れ、冒険者たちと少し離れた場所へ。
 クルーアルが何か話している最中、エスは目を見開く。
 すると、エスは冒険者たちの方に視線をやった。
 その表情は困惑しているように見えたが、一瞬で戻る。
 飛鷹は風の耳に頼るが、彼女の聴力を持ってしても聞こえない。
 何らかの魔法で遮断されているようだ。

「おーーーーい、ダイアはいるか?」

 ポルックスが白い箱を持ってやってくる。

「なんだよ」

「お前に届け物だぞ」

 差し出された白い箱に、ダイアは目を輝かせる。
 ポルックスから箱を受け取ると、ダイアはその場で解く。

「何が届いたの?」

 エルが隣に座ると、「Happy Birthday」と書かれたクッキーが乗った生クリームたっぷりのホールケーキが顔を出す。

「ダイア、誕生日なの?」

「うん! 誕生日(10月22日)になると、このケーキが贈られてくるんだ!」

「へぇ~、おめでとう」

 頭をなでてやれば顔をほころばせるダイア。
 早速カットされたケーキを素手で掴む。

(あぁ……そんないきなり……)

 頬張る姿を目にしながら、エルは誰が届けているのか気になって箱の蓋を取る。

(え……?)

 箱の側面に刻印された店名に目を疑った。
 cafe Classical Sweets、ノー・キラーお気に入りの店だ。
 エルは即座に振り返り、食べちゃだめと言おうとすると、ダイアがケーキを差し出す。

「エルも食べようぜ!」

 エルはケーキを手で掴み、一口。

(味は普通のシフォンケーキだ……)

 生クリームやスポンジ、クッキーもかじるが変な味は全くしない。

「ねぇ、このケーキ食べてお腹壊したことない?」

「そんなのあるわけないだろ!」

 明るく否定してダイアはケーキを頬張り続ける。
 贈り主は誰なのか。
 エルは迫っているかもしれない危険に表情を険しくした。
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