エルの相手をしてくれるのはスレイ。
彼が指名されたのは、槍の貫通力で強度を盾で殴打力を測るには適切だったからだ。
エルの後ろにつくのはアルス。
ダイアを指名しようと思ったが、万が一のことを考えて避けた。
アルスを背にしたことで、両手盾が少しだけ重くなる。
「エルさん、本気で来て下さい」
「スレイさんも! 本気でお願いします!」
「始め!!」
エスの合図に先手を打ったのはスレイ。
最初から全力で行く彼は真正面から穿つ。
エルは両手盾を横にして受け止めた。
(硬いですね……!)
(衝撃は多少あるけど、耐えられないほどじゃない)
エルは槍を弾き返し、体勢を整えるスレイに即座に打撃を与える。
スレイは大盾で対抗、互いに押し合う。
(打撃力もなかなか……今はアルスさんが後ろについているからこの威力なんでしょうが……もし守る人が増えたら……打撃だけで命を奪うことができるかもしれません)
その可能性に鳥肌が立つ。
誰かを守る盾、誰かを殺す盾になるのは全てエル次第。
染まる武器の盾は、ただ彼の意志に従うだけである。
そして常に問う。
命ひとつひとつは重く尊い。お前は守り、ときに奪う覚悟はあるのかと。
スレイはエルの体勢を崩し、盾で殴打。
エルは抉るようにして強く叩きつけようとする。
スレイはその寸前に空気を震わせ、衝撃を緩和。
盾同士の攻防が続く中、シンはエスに疑問を投げた。
「染まる武器のことなんだが、生きた者から取り出した魔力を受け止める器事態の材料は何で、どのように鍛えられているのかが気になる。何か知ってるか?」
「道具を使って魔力を回収し、器に移し入れる感じだろ」
垂がエスの反対側から顔を出す。
「垂さんがおっしゃっている通りですね。鍛え方があるかわかりませんが、手順としては魔力を道具等使って回収し、武器に注ぐといったところです。ですが、これには問題点が一つありまして、武器が大量の魔力に耐えられなかったら破損し、魔力も消えます。一回一回が運試しみたいな部分があるのですよ」
「大量に買い占められた武器がそれにあたるのか……」
「ええ、と言いたいんですが……今回は魔力狩りに使われている可能性が高いです。事実、ダークエルフの持つ短剣はどこにでも売ってありそうな代物でした。前回の経験を学習しているなら、別の方法で創っているはず……あ、終わったみたいですね」
エルとスレイはお互い息を切らしながら、握手を交わす。
「おつかれさまでした。どうですか、手応えは掴めましたか?」
「これからかなって思います」
「持つ人によっては染まる武器は癖の強い武器になりますが……上手く扱えば貴方の味方になってくれますので、ぜひ使いこなしてくださいね」
エスの励ましにエルは頷く。
盾を眺めながら、未来を守る決意を固めた。