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理想の未来に死にゆく絆:第3話

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理想の未来に死にゆく絆:第3話
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トラディ村に潜む者


 夕食を済ませた冒険者たちは各々好きなように過ごす。
 そんな中、飛鷹と風は散歩と称し、引き続きエルフの民に目を光らせていた。

「徹夜ですかね~」

「そうなるかもな」

 なかなか尻尾を出さない相手とわかっているが、長く観察しているとどうしても集中力が切れる。
 その隙を突いて何か見逃していたらと思うと、ノー・キラーに負けたような気がしてならない。

(気合い入れねえと……)

 目頭を解すのを我慢していると、ロージが弓を手に建物の通りを外れ、森の奥へ行くのを見かける。
 もう何度も歩き回り、見て回り、話を聞いているからわかる。
 夜に森の奥へ行くことなどほとんどないと。

「行くぞ」

 風に一声かけ、ロージの後を追う。
 月明かりを頼りに、足音をできるだけ立てずに移動。細心の注意を払う。
 奥へ進むにつれ、遠くなる村の明かり。風は少しだけ振り返るが、飛鷹の背を追うことに集中する。
 しばらくして、ロージはフックショットを使って一本の木に登る。
 枝を足場にすると、ある人物と接触した。

(あれは……エス!?)

 飛鷹と風は太い幹の陰に隠れる。

(くそっ、何しゃべってんだ……全然聞こえねえ!)

 いらつきを覚える飛鷹とは対照に、風の耳はその会話を捉えていた。

「まさか、生きているなんて思いませんでしたよ、ロージ」

「お嬢様がこの黒弓を捨て置かれてから、私の命(めい)は盾を回収することです。死ぬわけにはいきません」

「にしては遅すぎます」

「遅い……? 彼らの信頼を得て盾を奪う……お嬢様の教え通りに実行しています! 遅いはずがありません」

「ロージ、あのあとどうなったのかご存じないでしょう? 屋敷メイドの8割が殺されたのですよ。その原因が貴女です。貴女が盾をなかなか持ってこないから、ノー・キラー様は怒り狂ったのです。彼女たちはノー・キラー様の怒りを抑えるためだけに死にました。何の抵抗も許されないまま」

「……嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘、嘘だっ! そんなわけっ!」

「そう思うなら、ご自分の目で確かめてきたらどうですか。顔ぶれがかなり変わっているはずです」

「ではなぜこの村に魔族をっ……」

「私にはさっぱりです。そろそろ本題に入りましょう、ロージ。気持ちを落ち着けて。まだ挽回できるはずですから」

「……わかりました」

「ノー・キラー様から、私と貴女で協力して盾を取り戻すよう指示が出ました」

「冒険者がいますが……」

「大丈夫です。ダークエルフとハディック隊の部下を用意しています。人数は不明ですが。それと日程と連携については……ロージ、弓を貸してもらえますか?」

(はっ、まずいです)

 風が飛鷹の腕を掴もうとした瞬間、衝撃波が二人を襲う。
 ぎりぎりで躱して、武器を構えた。

「盗み聞きは良くないですよ」

「ロージと何をするつもりだ」

「教えませんよ」

「おーい!! そっちですごい音がしたんだけど、大丈夫かー!!」

 村側から他のエルフの声がする。
 エスは即座に姿を消した。

「あ、おいっ!」

「大丈夫ー! ちょっと暴発しただけだからー!」

「気をつけろよー!」

 ロージが答えてくれたおかげで、エルフたちはこちらに向かってくることなく通り過ぎる。

「……アンタが実行役か、ノー・キラーじゃねえんだな」

「お嬢様は忙しいので」

「アンタが知っている範囲でいい。ノー・キラーは本当に染まる武器が目的なのか」

「もちろんです。あとはレアリアン家を根絶やしにすることぐらいでしょう」

「ノー・キラーさんはどんな気持ちで、こんな出来事を起こしているんですかね?」

「お嬢様の気持ちはわかりません。もし知っていたとしても、申し上げることはできません」

 ロージはその場から立ち去ろうとする。

「どこに行く」

「戻るんですよ」

「そうはさせねえ。アンタを拘束して皆の前に突き出す」

「いいんですか? 村を訪れただけの冒険者と村に居続けてきた私……どちらが信用されるか明白ですよ」

「わかってもらえると信じている」

「そうですか……そうだ、こうしましょう。私たちの計画実行まで日はあります。その間、何もしません」

「どういうことですか」

「正々堂々勝負しましょう、ということです。彼らの前に突きつけて敵だ、なんて言われるの、面白くありません。互いにその日まで何もせず、ただただ過ごす。もし、魔族が襲撃してきたら説得して止めますので、計画実行までの間、安全は保障しますよ。どうです?」

「エルフたちに知らせることはできないのか」

「許されません。もしそのような素振りを見せたら射貫きます。ですが冒険者間での共有はご自由にどうぞ」

「……本当に何もしないんだな?」

「はい、しません」

「……わかった。アンタに従う」

「シンさん!」

「突然襲撃されて慌てるようなやつらじゃない。状況に合わせて動いてくれるはずだ」

「提案承諾、感謝します。それまではごゆるりとお過ごしください」

 ロージはフックショットで上がり、その場から姿を消す。
 二人はそれを見送ることしかできなかった。
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