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理想の未来に死にゆく絆:第3話

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理想の未来に死にゆく絆:第3話
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Sideクルーアル


(ここも違いますか……)

 冒険者たちが夕食を取っている間、エスはノー・キラーのアジト探しに奮闘していた。
 魔障壁ぎりぎりまで近づき、建物を探すが見当たらない。

(レガリスではない、ということでしょうね)

 踵を返そうとすると、独特な気配がして立ち止まる。

「……ここで何をされているんです?」

「魔界で歴史を繰り返してきて帰ってきた、ってところかしら」

 その声は紛れもなくノー・キラーだった。

「そろそろバラも咲こうとしているし、とても楽しみだわ」

「バラですか。貴女に花の趣味がおありだったとは」

「ふふ、ねぇ、エス。覚えてる? トラディ村に盾を取りに行ったときのこと」

「えぇ、それがどうかしたんですか?」

「死んでいたと思っていた子が生きていたの」

「……まさか……」

「その子が今頑張って盾を取り戻そうとしてくれている……エス、あなたも手助けしなさい」

「……かしこまりました……ですが冒険者たちが村に滞在中です。ダークエルフを手配していただけないでしょうか」

「……わかったわ。どれくらい集まるかわからないけど、あまり期待しないでちょうだいね」

「ありがとうございます」

 エスは足早にその場を去る。
 それを見送ったノー・キラーは、一人のダークエルフを呼び出した。

「トラディ村にいるあの子とともに、エスを始末してちょうだい。報酬もたんまり出すから」

「かしこまりました」

◆ ◆ ◆


 ――レガリス王国、王都ルクサス。
 荘厳なレガリス城を背に、クルーアルは聖職者の恰好で潜伏先に戻る。
 その手には赤いリボンで袋口を結んだ白い袋。
 それを持って衣服の検査をしたあと、リインの部屋を訪ねる。

「ただいま、予定の物が手に入ったぞ」

「ほんとに?」

「見て驚け」

 クルーアルがリボンを解き、取り出したのは染まる武器の靴だった。

「どこで手に入れたの?」

「小さな服飾店の片隅に置いてあった。人によって姿が変わるから商売にならない、引き取ってほしいと言われてスムーズだったよ」

 リインはクルーアルをぎゅっと抱きしめる。
 突然の抱擁に、クルーアルはその背中を軽く叩いた。

「どうしたんだ、急に……」

「無事でよかった……きみがどうしてもオルディアに行くって言うから……」

「そこは譲れなかった。この靴はリインのために取ってきたんだよ」

 クルーアルは染まる武器の靴をリインの前に差し出す。

「これを履いて、また自由に飛んでほしい」

「あ……」

 リインはエヴィアンとエルフのハーフで、翼がありながら飛べない。
 飛べない理由はわかっていて、リインはそれでもいいと思っている。
 でもクルーアルはそれじゃいけないと思っていて。
 二人の気持ちは、ずっと平行線を辿っている。
 もう何度も自分の気持ちは伝えてきた。
 それでも彼は受け入れてくれない。
 こっちが望んだことなのに。彼は自分を責めている。
 こんなものもいでしまおうかとも考えたけど、彼が全力で引き止めてきそうなので、行動には移していない。

(きみはいろんなものに縛られすぎている……どうしたら解放してあげられる?)

 心の中で問いても、答えは得られない。
 リインは差し出された靴に足を通す。
 黒かったブーツは真っ白なブーツに生まれ変わった。

「リイン」

「うん……」

 マントを脱ぎ、黒く染まった翼を広げて控えめに羽ばたく。
 ふわりと宙に浮く姿に、クルーアルはぱっと笑顔を浮かべた。

「よかったっ……これで違う能力だったら、僕は……」

 顔を伏せ、小さく震える肩にそっと手を置くリイン。
 その表情には陰りがあった。

(どうしたら、本当の気持ちが伝わる……?)

 二人の気持ちは水面下ですれ違っていく。
 そこにタイミングよくノック音が入ってきて、エスが顔を覗かせた。

「失礼します。二人とも少しよろしいですか?」

「どうした?」

「お話ししたいことがあります」

「……ハディックを起こしてこい。執務室で待っている」

◆ ◆ ◆


「くあ~あ」

 大あくびするハディックを最後に、執務室に四人揃う。

「それで話って何だ」

「ノー・キラーが染まる武器の盾を取り戻すために動いています。それに伴い、私も出向くことになりました。そこでですが、ハディック。貴方の部下を連れて行きたい」

「構わんが、ノー・キラーは仲間を出してくれんとか」

「ダークエルフを連れてくるよう頼みました。ですが、人数は不明ですし、使う武器もわからない。偏りを防ぐためといったところです」

「冒険者たちと殺り合うんか」

「そうなりますね」

「ノー・キラーは他に何か言っていたか」

「魔界にて歴史を繰り返してきたと」

「なるほど。ということはあれと辻褄が合うな」

「魔界人界関係なく……今回は随分効率的だね」

「となると、エス」

「わかっています。……今まで大変お世話になりました」

「はぁ……やっと小言から解放されるな」

「目の上のこぶが取れて、すっきりじゃき」

「鬱陶しいのもなくなるね」

「聞き捨てならないんですが」

「みんな、お前への不満だ」

「餞が不満とか最低じゃないですか」

「とにかく、冒険者たちにも伝えておけ、早急に」

「寝たいんですが」

「許さないよ?」

 エスは乱暴に席を立つ。

「とりあえず! 部下の件は頼みましたからね!」

「わかっとるけぇ、はよ行け」

「全く人使いが荒いんですから!」

 ぶつぶつ文句を言いながら出て行くエス。
 残った三人は聞こえないようにクスクス笑いながら見送る。

「魔法で飛ばしてやるか。ちょっと引き止めてくる」

 クルーアルも席を立ち、怒った背中を追いかけたのだった。

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