「武器の買い占めについてだが、初めて聞いた。具体的な話を聞かせてくれないか?」
「数日前、貴族のような男がセプテット内の武器屋にある全ての武器を購入したそうだ。私たちは貴方か貴方に変装したノー・キラーではないかと思っている」
「武器の買い占めは行なっていない。第一、そんな費用はない。ただでさえカツカツだ。なぁ、リイン」
「どっかの誰かのせいでカツカツだけどね」
「許せ」
「ノー・キラーが購入した場合、何が目的だと思う」
「そうだな……僕が思いつくのは染まる武器が市場に紛れ込んでいる可能性があるということだ。ノー・キラーには戦闘を共にする仲間がいないからな」
「メイドとアンデット化した村人だけだよね」
「どういうことだ?」
「ノー・キラーは拠点を置くとき、村を作るんだ。大きな屋敷を建て、アンデット用の家を作って、そこにもう既に死んでいる村人たちを放って、生きているかのように振る舞わせる。そうすれば彼女の村の完成だ。端から見れば本当の村に見えるから区別はつきにくいがな」
「場所の傾向はあるのか?」
「ないな。山の中だったり街中だったり……場所は不規則だ。また村を移動させるそうだから、エスに探ってもらっているが見つかっていない」
「前回は探すのに一年かかりましたよ」
エスが空いている席に座る。
「魔力探知でも厳しいのか」
「厳しいです。遮断されていますからね。一軒一軒、それっぽいところを訪問するしかありません。アジト探しはおすすめしませんよ」
「なぁ、クルーアル」
「どうした、飛鷹」
「さっきも言ったが、アンタたちにも何か目的があるなら協力する」
「そうですわね。対ノー・キラーで共闘したいところですわ」
「しかしまぁ、魔族と手を組むというのは私たちの秘密にしたいですねぇ。公にしては混乱が起きそうですし」
「風、オレモマゾク」
フィルが顔だけ人化を解く。
「わかってますよう。とりあえず、顔を人化させてください。顔の色と手の色が違いすぎてちょっと……」
フィルは自分もちゃんと認識されていることにホッとし、顔を戻す。
「みんな、ありがとう。僕もぜひ協力を願いたい」
「んで、アンタたちの目的は?」
「ノー・キラーを倒すことと、染まる武器の破壊だ」
「破壊ですか……」
焔子はピアスに触れる。
染まる武器の本来の持ち主がノー・キラーとは言え、今はアイビーの形見。
壊さなければならないとなると、母の思い出をダイアは失うことになる。
「破壊しなければ、魔王などに渡ってしまう可能性がある。それに六つ全て揃ってしまったら危険だ。装備者が魔族あるいは悪意を持った人族だったらよっぽど強くない限り、誰も止められない」
「さっき、遺物鑑定、したとき、焔子さんの、話を、否定しません、でしたが……」
「お前たちが持つ分には使用しても構わない。ただし、ノー・キラーを倒したら破壊してほしい」
「わかりました……」
「クルーアル、あの件を彼らに任せてみませんか?」
「エス、僕もそう思っていた。お前がだめなら、彼らに行ってもらうしかない」
「あの件って何だ?」
飛鷹がエスとクルーアルの顔を交互に見る。
「実は染まる武器の盾が、グラングリフォンにあるエルフの村に保管されていることがわかったのです」
「そこはエスの故郷なんだが、エスは魔族側についた身。交渉を図ったが話も聞いて貰えない」
「そこで、貴方たちにお願いしようと思ったのです。第三者なら話を聞いてくれるかもしれませんから」
「なるほどな……」
「ただし、村の者は仲間意識が強く警戒心も強いです。下手に動くと取り合ってもらえないかもしれません」
「わかった。俺たちはそこに行けばいいんだな」
「はい。どうかよろしくお願いいたします」
「他の武器の場所はわかっていますの?」
「それが不明だ。フクロウに空から探ってもらっているが、それらしきものは見つかっていない。何かわかったら連絡する」
「頼むぞ。……俺たちは帰るか。みんなに報せねぇと」
「待て」
「まだ何かあるのか?」
「引っ越したばかりなんだ。ちょっと手伝え」