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理想の未来に死にゆく絆:第2話

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理想の未来に死にゆく絆:第2話
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「暗いな」

 検査終了後、冒険者たちは少し前のエーリッヒとブリジットのようにテーブルに突っ伏していた。
 何か大事な物を失った顔とは対照に、彼らの前にはコーヒーとケーキが並ぶ。

「明かり、つける?」

「大丈夫だ。ありがとう、リイン」

(あんなのなんて聞いてないわよ!)

 アリーチェは検査の過程を振り返る。
 まず案内されたのは寝台が一つだけ置かれたシンプルな部屋。
 中には屈強な男が三人。女性は一人もいない。
 その屈強な男たちに脱ぐように言われ、渋々脱ぎ、タオル一枚になる。
 寝台に横になるよう指示を受け、眠らされたのでそこから先の記憶はない。
 起きたとき、隣に服が置かれていたのだが、無造作に入れたはずの黒ゴスロリが丁寧に畳まれていた。
 アリーチェはそのとき察した。下着まで見られたと。

(でも……検査するとき、みんなすごいピリピリしていたわ……とても警戒しているのね……)

 ノー・キラーがどれほど危険な魔族なのか。
 彼らの態度がそれを物語っていた。
 アリーチェはちゃんと理由がある検査だと信じ、出された苺タルトにフォークを刺す。

「シンさん、大丈夫です?」

 風の隣では飛鷹が異様に疲れ切った様子で、うなだれている。

「すごい悲鳴上げてましたけど、術が効かなかったとか……」

「そんなんじゃねぇ……」

「今までの検査で一番面白かった回だな」

 クルーアルがくすくす笑いながら、コーヒーを飲む。
 その様子に飛鷹はぎろりと睨んだ。
 二度目の直腸検査をまぬがれたのはよかった。
 だが、クルーアルに服を無理やり脱がされる強制脱衣プレイを飛鷹は強いられてしまったのである。

(俺、何かしたのか?)

 そう考えるも思い当たらず。
 親密になるような行動も取った覚えはない。

(わかんねぇやつ……)

 飛鷹は体を起こし、オペラを隣に座っている風にずらしたあと、コーヒーを口にする。

「喰われるとでも思ったのか」

「あんな尻の掴み方されたら誰だってそう思うだろ……」

「飛鷹……お前には1ミリもこう……湧くものがない」

「湧くな。困る」

「……怒った?」

「すげぇ、嫌だった」

「ごめんな」

「ちょっと聞きたいんですけど。何で身体検査したわけ?」

 二人のやりとりの切れ目に、シレーネが入る。

「潜伏先に入るにあたって武器を隠してないかなどを確認するためだ。本来は一回きりでよかったんだが、帰ってくるたびにしないといけない出来事が起こってしまってね……あぁ、もうすぐその元凶が帰ってくるぞ」

 がちゃと扉が開き、ひとつ結びしたオールバックのエルフが入ってくる。
 右目にモノクルをかけ、白いロングコートを着た男性のエルフだ。

「今、戻りました……。おや、お客様ですか?」

「あぁ。昨日ノー・キラーと接触した冒険者たちだ」

「はじめまして。エス・レクチュアルと申します」

 エスは名前だけ名乗って、棚で隠された奥の部屋へ消える。

「エスは僕たちとノー・キラーのスパイをやっているんだが、数日前ノー・キラーの潜伏先から帰ってきたエスのコートに見知らぬ小さな魔導具がくっついていてね。それがきっかけで毎日身体検査をすることになったんだ」

「それを先に言って欲しかったですわ。そうすればこんな気持ちには……」

「ちゃんとした説明もなしに検査をしてすまなかった、焔子」

「それで、その魔導具はどうされたのです?」

「即時破壊したが……最初何なのかわからなかった。だが、昨日飛鷹が降ってきた件で確信した。場所を探知されたと」

「だから移動するよう指示出したんだな」

「あぁ……そろそろ本題に入ろうか。君たちが知りたいのは?」

「あたしはノー・キラーがなぜあんたに化けていたのか。そしてなぜダイアのお母さんを殺したのかが知りたいの」

 アリーチェは布にくるまれた何かをテーブルに置く。

「これはノー・キラーの片腕よ。質問の見返りはこれでいいかしら?」

「ありがたく貰うが……これは魔獣の餌にするべきじゃないか?」

 クルーアルはリインに腕を渡す。

「そうだね」

 リインは布を解くと、天井に腕を放り投げる。
 投げた先には六つの目玉を持った蜘蛛の魔物。
 アリーチェは目を見開き、悲鳴を上げるのを必死に堪える。
 六つ目の蜘蛛はポリポリと音をたてながら腕を食す。
 テーブルに肉片や骨の欠片が落ちないのが救いだ。

「い、いつからいたのかしら……?」

「きみたちが入ってきたときからだけど。ずっと腕が欲しかったんだろうね」

 けぷと軽くゲップすると、二階に続く階段へすばやく去って行った。

「気を取り直して……飛鷹と風は何が知りたい?」

「お前が持っているノー・キラーについての情報、そしてアンタとノー・キラーの関係性だな」

「私は姿が変わる魔導具についてですね」

「焔子は?」

「私はノー・キラーとファング・ムーンの関係性です」

「シレーネたちは?」

 シレーネの代わりにヘルムートが答える。

「今回の件を運命と言った意味、街の武器屋における買い占めの関与についてだな」

「ろぼ子とフィルは?」

「私は、みんなと、同じ、です……」

「オ、オレも、同じだ!」

 クルーアルは顎に指先を添える。

「これは昔話からした方が良さそうだ。まずは飛鷹と風、お前たちの質問に答えてやる。アリーチェと焔子、ヘルムートの質問には昔話をしてから答えることにしようか」

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