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理想の未来に死にゆく絆:第2話

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理想の未来に死にゆく絆:第2話
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 冒険者たちは輪になり、目の前に出されたランチを眺める。
 長方形の木皿にはステーキ、その後ろに紫、緑、オレンジの葉物野菜が添えられ、隣にはカリカリに焼いたライトブレッドと、フレンチトーストが並ぶ。
 かぼちゃスープは小さなマグカップの中で湯気を立たせていた。

「いただきます!」

 朝霧 垂はさっそくステーキを頬張る。

「すげー美味い!」

 垂の褒め言葉に、冒険者たちは頷いて同意する。

「よかったです。……あ」

 優はカームのことをすっかり忘れていたと、カームの方を見遣るが……

「? 何じゃ? ちゃんとおいしいぞ」

 普通にステーキを頬張っていた。

「それならよかったです」

 優はカームの年齢を気にしながらマグカップを取る。

「そう言えばカームに質問がある」

 垂がカームの方に顔を向ける。

「何じゃ」

「成長術についてだ。成長した姿で魔族の魔法を受けると歩けなくなるって言ってたな。その他にもデメリットがあるなら全て教えてくれ。既に使っちまってる以上、何か起きたときに俺たちがすぐに対処できるようにしておきたいからな」

 カームの視線は軽く空を仰ぎ、垂に戻る。

「……まず、体が大きくなるときはとても痛い。成長が完了するまでダイアには痛みに耐えてもらうしかない。じゃが、回数を重ねれば痛みは消える。また見た目ゆえ、ダイアの事情を知らぬ大人がダイアを変なことに巻き込むことだってあるじゃろう。体は大きくても心はそのままであることを忘れるでない。あとはメンタル面じゃな。本人次第でもあるが、急に大人になるんじゃ。いろいろと困惑することがあるかもしれん。皆で支えてやることが重要になってくる」

「それ以外のデメリットはないんだな?」

「ないの」

「あと、実際に体が成長して術と同じ大きさになったとき、この術の効果はどうなるんだ?」

「なくなる。それだけじゃ」

「カーム氏、俺からの質問もいいか!」

 ジェイクが話に入る。

「魔族の攻撃魔法をくらってはならないというのは、体に直接受けなければいいのか?」

「そうじゃ。体に直接受けなければ問題ない」

「輝神の加護や纏った気などで防げば問題はねぇのか?」

「いや、無理じゃ。わしも最初はそう思っていたが、全く歯が立たなかった」

 垂がカームの言葉に勘づく。

「……まさかとは思うが、被験者がいたというわけじゃねぇよな?」

「……そうじゃ。わしの孫がそうじゃった。成長術のデメリットが話せるのは孫のおかげでもある」

「その孫はどうしているんだ?」

「車椅子生活じゃよ。歩けなくなってもう17年は経っておる」

「カーム……お前そんな経験をしておいて、よくダイアに成長術をやろうと思ったな」

「子供だって一人の人間。戦う意志があるのなら、尊重されるべき。孫の言葉じゃ。子供の意志に耳を傾け、実現させてあげるのは大人の役目だと思わんか」

「そうだとしても、だめなものはだめだと止めるのも大人の役目……いや、一人一人がすることだ。第一危険であることを知りながら、話を持ちかけること自体が間違っている」

 緊張した空気が流れる。
 カームはそれを解すように言葉を吐いた。

「……術を解くこともできるが、解くか?」

「解いてよ。俺は賛成できない」

 幸人が意見をこぼす中、千羽矢が真剣な顔で見つめる。

「……ダイア、君はどうしたい」

「……幸人、垂。オレのためにいろいろ考えてくれてありがとな。気持ちはすごく嬉しい。でも術は解きたくねぇ。本当はおまえらに任せればいいと思うんだけどよ、見てるだけじゃやなんだ。オレ自身強いやつ相手に戦うのは厳しいけどさ、おまえらの手が届かないところに手を届かせることぐらいはできるかもしれねぇ。成長術はそれを叶えてくれるチャンスだって思ってる。だから頼む」

 小さいながらに芯のある雰囲気と射貫くような瞳が覚悟を語る。
 冒険者たちはそれを肌で感じ取って、静かに頷いた。

「……ダイア。自分で覚悟を決め、選んだことなら。その想いは支える。頼斗とともに」

「千羽矢……」

「そのために鍛えてやってんだ。一緒に戦おうぜ」

「頼斗……」

「もう、しょうがないなぁ。こうなったら応援するしかないよねぇ、垂ちゃん」

「そうだな」

 垂はそう溢して、カームに視線を戻す。

「解決方法を探してないわけではないんだろ」

「当たり前じゃ。歩けなくなるのを解消できるように新しい術を研究しておる」

(その研究にどれくらい時間がかかるかだな……それ次第で対応も変わってくるはずだ)

 垂は想定できる事を頭の中で巡らせる。

「……ダイア。もし、解きたくなったらいつでも声をかけるがよい。どこにいても駆けつけるぞ」

「うん。みんな、本当にありがとな」

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