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理想の未来に死にゆく絆:第2話

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理想の未来に死にゆく絆:第2話
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 シン、マルチェロ・グラッペリ藤白 境弥シンシア・レイコットエステル・ミルズスレイ・スプレイグユエ・スプレイグ高瀬 誠也、フィリアの九人は街に入るとそれぞれ分かれ、聞き込みを開始する。
 境弥とエステルはシンシアと二手に分かれて、情報収集を行なう。
 移動中、エステルは提琴でプレリュードを奏でる。
 優しく澄んだ音色が響き、街の人は横目で見たり、手を止めてエステルたちを目で追う。
 情報を一つでも多く集めるためには、街の人たちの協力は必要不可欠だ。
 演奏は警戒を解くこともできるし、注目も集められる。
 それにエステル自身が演奏したいのもあった。
 提琴の心地よい音色に耳を傾けながら、境弥に目を向ければ早速街の人に話を聞いていた。
 音色を小さくし、邪魔にならないようにする。

「すみません、数日前に黒と赤の髪色が混じった貴族みたいな人見ませんでした?」

「いやぁ、見てないねー」

「同族殺しのクルーアルってご存知です?」

「聞いたことないな」

「買い占められた装備についてなんですけどー」

 エステルのおかげで、街の人から警戒心は持たれずスムーズに話してくれるが、決め手となる情報は得られない。
 嘘感知で嘘をついてないかも探っているが、全て真実である。
 また、森人の視聴覚で怪しい物がないか見てみたり、怪しそうな会話を盗み聞いたりするが、喧嘩を売られるなど時間が経つにつれて散々になっていた。

「エステル……おかしいです。情報が集まりません……! もうノー・キラー本人を捜すしか……!」

「もっと難しい方にいってどうするのよ」

 絶望するかのごとく言う境弥に、エステルは軽く溜息をつく。

「人を選んで、具体的に質問したらどう? そうしたら少しは得られるんじゃない?」

「そうですね……具体的に……」

 腕を組んで考える境弥。
 すると、何かを思いついたようにエステルの腕を掴んだ。

「藤白?」

「お腹空きました。お昼にしましょう。テラス席のあるカフェで情報を持ってそうな人を探します」

(結局そうなるのね……)

 エステルは境弥の後ろをついていく。
 もちろん、提琴の演奏は続けながら。

◆ ◆ ◆


 一方シンシアは街の中でも植物が多く生えていそうな場所や花屋を探す。
 妖精の眼を頼りに歩くが、アリーチェやルージュが言っていた真っ黒で淀んでいる感じや息をするのも辛くなるような感覚はない。

(この辺を通った形跡はなさそう……でも)

 痕跡がすでに消えている可能性もある。
 シンシアは慎重に人の流れや、怪しい人物に目を配る。
 人が少ないところに出れば、翼を広げて上空へ。

(あ……)

 しばらくすると花の匂いが風に乗って、シンシアの鼻をくすぐる。
 下を見れば、色とりどりの花たちが店の外に出されていた。
 人が近くにいないのを確認し、着地する。

「ふぉあ! びっくりしたっ!」

 声がした方を向けば、お団子頭の女性がバケツを持ったまま肩を縮こませていた。

「あ……ごめんなさい」

「だめ、気にしないで。いい? 私がぼぉっとしてただけよ」

「はい……」

 シンシアは店の外の花たちを眺める。

(誰に聞いた方がいいかな……)

 見た感じ、どれも新しいような気がして、魔族に関する話を聞けるか不安なところである。

(さっきの人に聞いてみよう……)

 シンシアはさっきの女性に話しかけてみる。

「すみません……外の花の中で一番古い子はどれですか……?」

「古い子? 新しい子じゃなくて?」

 こくりとシンシアは頷く。

「古い子はね~。この子ね」

 店員が紹介したのは小さな鉢植えに入った鮮やかな青い花、ブルーデージー。
 他の花と比べて少し小さいが、一番古い子とは思えないほど美しい青を放っている。

「よかったら買っていってくれない? このまま売れないとなると処分するしかなくて」

 花屋の前でずっと立ち止まっていると迷惑になるかもしれない。
 それに処分される花を買うだけで救えるのなら、買おう。
 シンシアはそう思って、ブルーデージーを貰うことにした。
 鉢を持ったまま、どこか落ち着けるような場所を探していると、時計がお昼を指していた。

(ご飯、食べておかないと……)

 情報収集にどれくらい時間がかかるか検討がつかない。
 シンシアは試しにブルーデージーに美味しい店を知っているか聞いてみる。

「ご飯が美味しい店、知ってる?」

――はい。

「この近くにある?」

――はい。

 シンシアは辺りを見渡す。
 この辺にはいくつかレストランやカフェがある。
 シンシアは店の名前を一つずつ言っていき、やっと美味しい店を知ることができた。
 花に紹介されたのは、野菜スープとパンが売りのカフェ。
 お店のおすすめを注文し、席に座る。
 料理が来るまでの間、シンシアはブルーデージーに魔貴族風の男について話を聞いてみる。
 しかし、答えは「いいえ」のみで有益な情報は得られなかった。

(他の植物にも聞いた方がいいのかな……? でも植物自体、魔族がわからないってこともありそう……)

 どう動こうか考えていると、料理が運ばれてくる。
 シンシアは湯気の立つ野菜スープを一口。
 コンソメの優しい味に、顔がほころぶ。
 ブルーデージーの情報は確かなようだ。

(他の子にも聞いてみよう……)

 スープの味で、シンシアは引き続き植物メインで情報を集めようと決めた。

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