あの戦闘からずっと寝ていた
アキラ・セイルーンは、フィリアが持ってきてくれたサンドイッチをがつがつ食べ、ジュースを一気に飲み干す。
「ごちそうさまでした! よし行くぞルーシェ! あの魔族を今度こそぶっ飛ばしてやる!」
「場所の目安はついておるのか?」
「場所? 知らん! なんか適当に歩いてたら見つかるだろ! よしあっちだ! 俺の勘が向こうだと囁いている!」
アキラは街の方を指さし、ずかずか歩き出す。
ルシェイメア・フローズンはその背についていきながら、溜息をついた。
(昨日のことをうだうだと引きずられるよりは喧しいほうが幾分マシかの。じゃが……)
今のアキラではあの魔族に勝てない。
ルシェイメアは彼の戦い方を見てそう感じていた。感情的に挑み、周りや自分の身を深く考えず突っ込んでいく。
今後の戦いにおいて、間違いなく仲間の足を引っ張ってしまうだろう。
ルシェイメアはアキラの服の襟を掴み、強引に尻をつかせる。
「うおっ、どうしたんだ、ルーシェ!」
無言のルシェイメア。
彼女が殴らず静かに怒るときは本気と知っているアキラは、そおっと座る姿勢を正座にした。
「貴様のクラスはなんじゃ?」
「クレリックだ!」
「そう、クレリックじゃな。では貴様にできることはなんじゃ?」
「……」
「あの場にはワシもいた。他の者もいた。貴様の聖浄の銀鎖ならあの魔族を捕らえたうえで、魔力を封じることもできたじゃろう。自分と相手の力量を正しく認識すること。状況を冷静に分析すること。誰かと協力しあうこと。それらはすべて強さじゃ。クレリックが殴りかかろうが、別に構わん。じゃが、己を貫きたいのであれば強くなることじゃ。弱ければ何をされても文句は言えんのじゃ。それが筋を通す、ということじゃ。……でなければフィリアは死んでしまうぞ」
「っ……!」
アキラは息を呑み、ごくりと喉を鳴らす。
「というわけで、早速鍛えるぞ。さあキリキリと準備するんじゃ!」
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