魔族たちについて
「それじゃあ、次は魔族についてかな。これは俺から話すね。まず白フードの人物はエルフだったんけど、あれは幻術。シン君によると、普通に話したり、殴ったりしていたからかなり強力なものだと推察。フィリアちゃんによると、リインって名前までついていたそうだよ」
「少し確認なんですが」
境弥が手を挙げる。
「白蛇は転送魔法から送られてきていました。送り主は幻術のエルフということでよろしいです?」
「白蛇の魔物が出てきたときの術の特徴みたいなの、覚えてる?」
境弥の代わりにシンシアが答える。
「円で縁に術のようなものが書かれていて……中は黒かったです……」
「だったらそうだね。熊の魔物が出たときもそんな感じの術式だったから。垂ちゃん、魔物倒したあと、他に仲間がいる痕跡は?」
「この一帯探してみたけど、全くないな。俺は貴族風の魔族一人でこの事件を起こしたと思ってるぜ」
「となると、貴族風の魔族は幻術のエルフを作り、それを経由して、魔物を出現させていた。ってことになるのかな? 憶測はあんまりよくないけど……」
「幻術のエルフの話は、ここまでにしようぜ。本題は貴族風の魔族だろ?」
話題を変える垂に、幸人は頷く。
「そうだね。で、その魔族なんだけどイルファン君が名前を聞いたんだよね?」
「あぁ、確か同族殺しのクルーアルと名乗っていた。クルーアルのことはフィルが知っている」
「クルーアルは一時期ちょっとした有名人だったんだ。クルーアルの一族は魔貴族で、自発的に人界に行き、人族への搾取を行なっていた。だが、冒険者たちとの戦闘で、一族は解体し、クルーアルだけが生き残った。そんなある日、やつは他の魔族から声をかけられて冒険者討伐に出向いた。そしたらその出向いた先で、急にクルーアルが仲間全員に手をかけたそうだ。それ以降、同族殺しのクルーアルと異名がついた。目が合うと殺されるって噂まで流れてたな」
「そうそう思い出した思い出した! 魔界にいる魔族にまで届いてたらしいから、相当やばい魔族だと思ってもらってもいいよ!」
フィリアがフィルの説明に補足する。
フィルの説明にイルファンが疑問を呈す。
「その二つの出来事、人族が知っていてもおかしくないと思うのだが」
「あぁ、オレもそう思う。でも聞いたのはかなり前だったからな……話聞くとなると人捜しに時間取られると思うぞ」
「大体でいい。何年前のことかわかるか?」
「それが……忘れちまってよ。ごめんな」
「気にするな」
「ねぇ、ちょっといいかしら?」
アリーチェが手を挙げ、フィルが反応を示す。
「クルーアルは女性なのかしら?」
「女? 何でそう思った?」
「指輪を調べようと取ったら、手が男性の手から女性の手になったのよね……」
「いや、クルーアルは男だ」
「えっ、じゃあこの腕は誰のものなのよ?」
「それについては飛鷹君が一番詳しいんじゃない?」
幸人が飛鷹に視線を向ける。
「話してよ。君が魔族に連れて行かれた経緯と出会った魔族について」