ヴォルフ家について
「はい! 今から冒険者会議を始めたいと思います! 進行は紫月幸人が務めさせていただきます。よろしくお願いしまーす」
寝支度を済ませた冒険者たちは、得た情報を共有すべく、横並びで座る。
大規模な人数で声が届くか心配だが、そこはフィリアたちの魔法でカバーされているので、奥まで問題なく届く。
「ところで、ダイア君は寝たかな?」
「今、エルくんが寝かせてますので、私とベルさんで代役します!」
「了解。えーと最初はダイア君の家族について報告してもらおうかな、飛鷹君」
「殺されたのはアイビー・ヴォルフ。等級紅の冒険者だ。彼女はファング・ムーンってパーティの一人で、十年前まで活動していたそうだ。名前もそこそこ有名だったらしい。彼女のほかに、彼女の夫であるリアン・ヴォルフ、二人の友人であるルイス・クラークとロペス・ブライアントがメンバーだった。リアンは十年前に魔族との戦闘により死亡。ルイスとロペスも数年前に魔族との戦いで命を落としたそうだ」
「はいはい、質問です!」
アルスが手を挙げる。
「十年前まで活動されていたということは、リアンさんの死でパーティは解散ということですかね?」
「そうだな。それ以降はルイスとロペスは個々で、アイビーは夫の死後以降活動をしていない。無理もねぇ話だ、リアンは魔族に首を跳ねられて死亡している。それを間近に見ているのと、ダイアを身ごもっていたのと重なって活動を止めたと聞いている」
「彼女からすると相当のストレスだろうな……」
ベルナデッタが顔を伏せながらつぶやく。
今度は焔子が手を挙げる。
「では私が見つけたナイフと千羽矢様が調べた剣は、お二人の物と断定してよろしいのですね?」
「そうだな。ナイフはアイビー、剣はリアンのものだ。セプテット教会の受付嬢から確認が取れた」
「ってことはよ……」
頼斗が険しい顔をする。
「死んだ旦那の剣でアイビーは殺されたってことかよ……」
「……そういうことになるな」
「くそっ、あいつら絶対許さねぇ!」
拳を太腿に叩きつける頼斗とは対照的に、シレーネは冷静に挙手する。
「アーシからもひとつ。少年はお母さんが冒険者だってことを知らなかったし、ならないよう言い聞かせてた。これ何か理由があると思うんですけど」
「悪いが、その理由はわからねぇ。推測になるが母親としての忠告なのか、リアンを殺した魔族が実はまだ生きていて狙われる可能性を考えてなのか……今のところ、思いつくのはその二つだな」
(それにしても、狙われた理由が運命っていうのが、気にくわねぇな……)
飛鷹が表情を歪める中、幸人が話を進める。
「他にヴォルフ家についての質問はないかな?」
「ヴォルフ家とは関係ないのだが……」
ベルナデッタが口を開く。
「ルイスとロペスの家族はご健在なのだろうか? 話が聞けそうだと思うんだが」
「それがファング・ムーン全員が早くに親を亡くしているそうだ。ルイスとロペスは孤児で結婚もしていない」
「そうか……」
「他に質問ある人!」
しんとした空気に、幸人はないと肯定して次の話に移る。