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理想の未来に死にゆく絆

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理想の未来に死にゆく絆
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僅かな手がかり


 交易都市、セプテット。
 すっかり暗くなった都市を照らすのは、酒場の明かりたち。
 外でも飲める酒場では、酒がほどよく入った男たちが木製のジョッキを交わし、大声で話をする。
 賑やかな光景があちこち見られる中、境弥たちの足は教会を目指していた。
 その目的は仮眠。
 白蛇討伐終了後、「昼寝がしたい」と境弥が唐突に言い出したのだ。
 突拍子もないことを言うのはいつものことだと理解している、シンシアとエステルは彼の後ろを静かについていく。

(あ、ここですかね……)

 賑やかな場所から少し離れたところに、教会がひっそり佇む。
 ちょっと煤けた外壁が印象的で、使われていなさそうに見えた。
 境弥はそんなことなど気にせず、ドアを開ける。
 中は明かりがついていて、柔らかい黄色の長髪と車椅子が視界に飛び込んできた。
 その人は車椅子ごと、境弥たちの方に向く。

「何かご用ですか?」

 空をそのまま映したような瞳と穏やかな声が、境弥たちを出迎える。白いローブと木の杖からして、クレリックのようだ。

「仮眠取りたいんですけど、もしかしてこれから使ったりします?」

「いいえ。どうぞ好きにお使いください。この時間、人はほとんど来ませんし」

「では遠慮なく。二人とも、ある程度の時間になったら起こしてください」

 境弥は近くにあった長椅子に横になる。

「シンシア、子守唄歌ってください」

「教会だから賛美歌320番を……」

「私は提琴を奏でるわね」

 エステルは弦を撫で、柔らかく暖かい音色を奏でる。
 シンシアの伸びたソプラノが教会に響く。
 優しく包み込む歌声に、琴が調和して心を落ち着かせてくれる。
 境弥は静かに目を閉じる。
 誰かが毛布をかけてくれている。
 それでも瞼そのままに、賛美歌に耳を傾けた。

◆ ◆ ◆


 飛鷹 シン示翠 風は、遥たちが戦った場所から離れた森にいた。
 この時間帯ともなると月明かりと、風の視聴覚とマギアビジョン、ナイトホークが頼りだ。
 他の冒険者たちが魔族たちと戦っている間、飛鷹たちは敵の撤退経路を探っていた。
 しかし、あの黒円に飲み込まれていく姿を見て、生存の有無を確認しなければと咄嗟に判断。
 範囲を広げて探ってみるも、魔力の痕跡や血の跡など見当たらない。
 頼りのナイトホークも反応も示さず、完全に行き詰まっていた。

「風、あの魔族どうなったと思う?」

「私は逃げたか、襲撃を指示した魔族に始末されてしまったと思うのですよ」

「まぁ、あれ見たらそう考えるのが妥当だよなぁ」

 そのとき、風が飛鷹のジャケットを掴み、無理やり伏せさせる。

「おい、どうした」

「しっ! 何か来ます」

 木に囲われた世界の中で、唯一の平地。
 その中心に黒円が出現する。
 中から手が現れ、地面を掴む。紫に金の刺繍の衣服に、飛鷹たちは生存を確信した。
 黒円から出てきたクルーアルは、失った右腕を押さえ、ふらつきながら足重そうに歩いている。

(だいぶ重傷だな。この状態なら)

 飛鷹は短剣を抜く。

(仕留めさせてもらおう)

 飛鷹は草むらを飛び出し、木々の間を駆け回る。
 クルーアルは飛鷹の存在に気付き、威圧的な視線を向けた。

(もう気付かれたか。けどそんな視線じゃ、脅しにもなんねぇな)

 短剣で右半身の刺突を狙う。だが腕を掴まれ、その場に倒された。
 体を起こそうとした矢先、腹にクルーアルが跨がる。

「動くな。そこにいる女も同じだ」

 クロスボウを構えていた風は、照準を維持する。

「動いたらどうなるか、教えてやろう」

 ナイトホークがクルーアルめがけて急降下する。

(だめだ! 来るんじゃねぇ!)

 心で叫んだ瞬間、ナイトホークの胸にレイピアが刺さる。
 ナイトホークは飛鷹の隣に落下した。
 相棒に目を向けたとき、草だった地面がいつの間にか黒くなっている。
 もうすでに身体の半分が、黒円に飲み込まれていた。

「シンさん!」

 飛鷹は風の声に応えることなく、クルーアルとともに闇に消えていった。

◆ ◆ ◆


 垂、ジャスティン、シンはクルーアルの痕跡がないか探すべく、森を駆けていた。

「それにしても何にもないな」

 垂は辺りを見渡しながらつぶやく。

「大勢でやってきたような足跡もないし、一人であの家を襲撃したということになるな」

「家の中なら痕跡が残っているかもしれない。戻るか?」

 ジャスティンが二人に問う。

「そうだな。ここにいてもしょうがない」

 シンがそう答えると、ガサガサと草をかきわける音が近づいてくる。
 三人が武器を構えると、風が現れた。
 風は彼らを見てすぐ、泣きそうな顔で近づく。

「た、助けてください! シンさんが、シンさんがっ」

「落ち着いて。ゆっくりでいいから話を聞かせてくれないかい?」

 三人は風から飛鷹がクルーアルに連れ去られたのを聞き、険しい表情を浮かべる。

「面倒なことになったな。俺はここに残る。お前たちはどうする?」

「オレたちはダイアの家に戻って、協力要請する。街にいる可能性だってあるしな」

「よし、お前。俺と一緒に来い。魔力感知できるだろ」

「もちろんです」

 風と垂が山を、シンとジャスティンがダイアの家へ。
 飛鷹を見つけるべく動き出す。

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