人は実に不思議な生き物で、繋がりある者の助けを不意に察知することがある。
嫌な予感として感じる者もいれば、体の奥から突き動かされる衝動を覚える者など感覚は様々だ。
エル・スワンはまさに今、胸騒ぎとしてその危機を感じ取っていた。
「エル、どうした?」
道の真ん中で突然立ち止まる彼に、
ベルナデッタ・シュテットが声をかける。
「ベルナデッタさん、オレちょっと行ってきます」
エルはトネールに声をかけ、跨がる。ベルナデッタは彼が何かを感じ取ったのだろうと察した。
「私たちは後から追う。早く行くといい」
「エ、エルくん、これをっ!」
状況を上手く捉えられていない
アルス・M・コルネーリは輝神オータスに祈りを捧げ、聖骸の裁杖を小さく振る。
「ありがとうございます。奔るよ、トネール!」
エルの合図にトネールは駆ける。
それに続くように、ベルナデッタも走り出した。
「あっ! ちょ、待ってくださーーーーーーーい!!」
アルスも一歩遅れて駆け出す。
(ベ、ベルさん、足早いです……!)
その間隔、露店一つ分だが、ベルナデッタはどんどんスピードを上げていく。
「ほらアルス、もっと速度を上げるぞ!」
「ベルさん、もうちょっとゆっくり……!」
「危機にゆっくりなんてない! 急げ!」
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