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語れぬ指:罪課さねの烙印

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語れぬ指:罪課さねの烙印
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 部屋に荷物を預け柊 恭也は小さく唸る。
「城に住む女ねぇ」
 辺境の地に城があるだけで目立つ為、話題性には事欠かずそれを世間話と持ち出せば村人達は快く「娘がひとりで住んでいる」のだと答えてくれた。見方を変えれば一様にしてそれしか返答されないという異様さもある。もう一歩踏み込んだ質問もできるのだが恭也は早々に聞き込みを切り上げたのだった。
「何がどうしてそうなってんのか気になるし、風呂入ったら見に行ってみるかね」
 が、数時間程前の事である。
「少なくとも戦闘になるような可能性は低いし、お行儀良く行くとしようぜ」
 というのが、恭也が受けた印象と見解なのだ。
 彼は今は遥か上空より城を見下ろしていた。村から直行する難しいので、ある程度までは徒歩で近づき、正面より来訪を告げる代わりにエヴィアンの翼を羽ばたかせ、持てる手段を尽くした最高度からの忍込みを決行している最中である。
 暁に塗れゆく城は程よい終末感が漂っていた。
 一体何を想定して備えているのか城壁に沿って隙間なく並べられている篝火は城外どころか城壁内までびっしりと設置されている。
 燃え盛る炎に煌々と照らされて城はバカみたいに明るい。し、
「なんだ? 植物か?」
 陽光めく明るさの中に新緑と深緑がちらちらと見え隠れしていた。
 見回りの人間の姿は上からでは確認できず、適当な場所に恭也は降下し着地する。
「さて、噂の娘は存在するのか、面白い物は眠ってるのか。色々調べてみるとしよう」
 屋内に入ってみれば、外観こそ当時の流行りか浮き彫り細工は丁寧であったが、城内部は恐ろしいほど簡素な造りをしている。極端な話、通路しかなかった。柱も壁もおうとつは少なくのっぺりとしていて、窓さえ見渡す範囲では片手で足りる。部屋数も想定より多くはないだろうと思えるし、通路と広間を仕切る扉は無い。流石に建物内部までは篝火は置かれていないが、塞がれる空間にしては妙に明るかった。城を飾る調度品も置かれておらずとにかく足音の響きやすい環境に視線と呼吸さえ潜めてしまいそうになる。物影となる部分が少なく、咄嗟に身を隠せそうにないが、ただ、慌てて駆け込むほど守衛の存在も感じられず、数人だけ通っているという城勤めの人間がいるのかと首を傾げた。
 本当に娘が居るのか?
 疑問が持ち上がる。
 が、
「探しものですか?」
 聞こえてきたひとの問いかけに恭也は振り返りながら口を開き、
「おーっと失礼――」
 旅の途中に立派な城があったんで、立ち寄らせて貰っただけさ。敵意は無いぜ。
 と侵入したことは認めながら不審者ではないことを強調しつつ、声を掛けてきた村人は誰だと見ようとした恭也は、後頭部と殴打された衝撃に転倒するまいと踏ん張り、
「ぐっ」
 力が籠もる腹にも一撃を喰らい堪らずに両膝を折った。
「おい、手加減しろよ」
「したさ。殺したら城主様に怒られらぁ」
 石の床しか映さない視界に男達の声が遠くに聞こえる。
 せっかちな冒険者も居るな。と。
 明日になれば城主様に会えるのにな。と。
 運ぶか。と。
 運ぶしか無いだろ。と。
 自分の体が持ち上げられたと彼が悟ったところで世界は暗転した。



…※…※…※…




 次に目を開けると、そこは薄闇だった。



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「森が変に開拓されているという形跡はありません」
 貴重な資源を守るためか、単純に危険だからか、村を面する森の様子は上空から見下ろしても別におかしいと感じる部分はなかったと納屋 タヱ子は、信道 正義エル・スワンアルス・M・コルネーリベルナデッタ・シュテットら、それぞれの顔を眺め報告する。
「むしろ、あの森の中に道があるようには見えなかったくらいで……」
 よりよく茂った瑞々しさがないだけ自分達が通ってきた道も――途中で分岐していたのかもしれず――上空から簡単に確認できるかと思われたが、それが確認できなかった。獣道さえ埋もれるほど、侵入を拒むように森に入(い)る術がない。
「そっか。だけど、空と地上じゃ見え方は違うしな。明日もう一度見に行こう」
 正義がそれでも道を通って自分達は村に来訪できたのだから、それを踏まえて何故を解明すべきと返す。
「魔獣や魔物はいなかったけど大型動物は生息しているらしいんだ」
 それは空からは見えなかったかとエルが提案する。
 各自調達してきた調査内容を突き合わせ繋いでいこう。不審な点があれば検分に乗り出して、提出するに耐うる情報の根拠を探そう。
 宿屋で合流を果たし、客室でそういう話し合いをして用心にベアハウンドに扉の見張り役を頼んだというのに、状況は一転していて、皆が皆の体の一部に触れて一同の正気を確認し合う。



…※…




 ほんのりと周りが明るい。
 朝霧 垂が伸ばした指先は、うっすらとだがはっきりと輪郭線を描いている。
 視界は完全なる闇ではない。
 土よりも岩の匂いが強い。砂混じりの風よりも湿り気がある。空気が、流れている。
 ひとつひとつ丹念に状況を改めていく作業は、何故だろう昼間もやっていたのと似ていた。



…※…




 アルヤァーガ・アベリアは思索に沈黙を保っている。
 木製と言えど檻に入れられているのもそうだし、共にと連れてきたベアハウンドが居ないのもそうだし、そもそも現在地がわからない。
 否、なんとなくだが予想はついた。
 地下、か?
 と音もなく唇が予感を綴る。しかもかなりの広さをもっている。地下室ではない。地下道とも違う。反響し合う話し声に耳を澄ましながら、地下空洞かと類推するのだった。



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「ここはどこだってーの」
 可愛子ちゃん、結局指で数えるくらいでしかお話できなかったのに。
 気づいたらこんな暗闇にクソガキと坊主の三人閉所に突っ込まれるなんて、理不尽!
 フェルディク・ルブリザードの不満に思う点については聞くだけ耳に入れるクラン・イノセンテ星・カグラのふたりは自分達が閉じ込めれていることをようやく認める。
 互いの姿の輪郭ほどしか見えないけれど、拘束されていない自由さが、“木製の檻に自分達が詰め込まれている”現実を教えてくれたので。



…※…




 子供達の歓迎から開放されてからの記憶があやふやだ。一旦、休憩を取ろうと宿か、民家に寄ったような気がするが、定かではなくシン・カイファ・ラウベンタールは小さく唸る。
 そんな彼に、檻の扉を閉ざすウォード錠を触るマルチェロ・グラッペリは鍵は誰が持っているのだろうと話題を投げかけた。



…※…




「アリーチェ」
 世良 潤也の呼びかけにアリーチェ・ビブリオテカリオは小さく頷く。
 座り込む彼女の横に、格子を組んだ檻の一辺から手を離した潤也は移動すると、寄り添うように一緒に座り込んだ。



…※…




「完全に真っ暗じゃないってのが笑えてしまうな」
 ジェノ・サリスフィーリアス・ロードアルゼリアの無事を確かめてからその場に座り、格子に背中を預けて座り、これからどうなるのか、これからどうするのか、行く末を見守るようにただ闇の向こうを睨み据えて、見えぬ時を探る。



…※…




 飯をくれと宿屋の食堂で料理を頼み、それから先が思い出せない。
「なんだ?」
 思い出そうとする藤白 境弥は、その前後の記憶があやふやな事にむっと眉間に皺を寄せた。
 記憶障害かと疑うも、自分はそれらしい持病は持っていないし、トラブルはなかった。まして、魔獣やら魔物やらとの取っ組み合いもしていない。
 村人から伴されたものを飲食したのかも実は定かではない。
 面白いくらい記憶がぶつ切れていて、その要因が薬か術か何かなど即断できなかった。



…※…




「誰かは……居ますねー」
 そこここと聞こえてくる話し声に桜・アライラーは何度確認するものでもないと肩を竦めた。
 距離はあるものの、同じ空間に“檻に入れられた状態で捕まっている”ようである。
「怪我はしていませんか? 気分は悪くないですか?」
 エルレンド・ガムラ・ウプサラの問う内容に、イリーゼ・ユークレースはひとつひとつに頷いて答えている。
 つまり、平常運転だ。
 イリーゼの声が一段と硬質さを帯びて、
「そうね、エルレンド。これは『おはよう』を伝える朝ではないのは確かね」
 時間感覚さえ狂いかけていたのを自覚する。
 現在は何時だろうか。それを考えるのは今はよそう。



…※…




「僕らふたりだけってことはなさそうだよ」
 落ち着いた声で語りかけるアンサラー・トリス・メギストス遠近 千羽矢は無言で頷く。
「身包み全部剥がされなかっただけマシかな」
 お約束と言わんばかりに武装は取り上げられていた。楽器も手元にはない。



…※…




 手を伸ばすと冷たい木の感触が返ってきた。
 空気の流れに乗って、ふわりと漂う昼間に行った調薬指導の残り香が、叉沙羅儀 ユウの鼻孔をくすぐる。
 ここはどこだろう。その疑問の答えを求めても良いのだろうか。
 状況を把握すれば次の行動に移れるとわかっていて、からかい半分に先生と呼ばれていた時間を思い出す。



…※…



「おい、大丈夫か?」
 十朱 トオノの声に、エレミヤ・エーケロートは頷いて、
「兄さん?」
 顔の見えない相手に首を傾げる。ガチャガチャと妙な音がするのだ。
「エレは平気か?」
 唯一の左腕が手枷によって格子と繋がれ拘束に行動制限を受けるトオノは、エレミヤが自分と同じ状態でないことを知って、とりあえず安堵の息を吐いた。



…※…※…※…




 村の平穏を祈願する意図もあり、これは正当な自己鍛錬。だから、よしんば余所者の焔生 たま 自身が格好の囮に見えて、意図的に奇襲されようがされまいが、成り行き上どんな無駄も生まれない。し、それこそたまが反撃に打って出る口実になろう。
 そういう意味でも覚悟は固まっていて何が起ころうとも対処できる心構えはできていた。
 ただ。
 陽が落ちて、村の教会を道を挟んで反対側より正対し、腰を落とした片膝付きに両掌を合わせた祈りを捧げてから記憶がぶつりと切れたのだ。
 次より記憶が繋がれた場面はここ――木枠の檻に入れられているという自分の状況だった。
「高額報酬にはそれなりに裏がある。そんなことは冒険者ならば勘繰って然るべきです……よね」
 そう気を張って油断した覚えもないのに、現状はよろしくない。
「私は裁きを行う者。さて、異端はどこでしょうかね?」
 “異端”と断言してしまう切り替えの早さと声音より滲み出る容赦の無さが、裁定者と称号賜る所以だろうか。



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「おう、お目覚めか?」
 投げて寄越される柊 恭也の声に、上体を起こし忙しなく周囲を確認していた猫宮 織羽は、さっとそちらに顔を向ける。
「牢屋?」
 なんで、どうして。その言葉を飲み込んで、代わりに戸惑いを吐き出す織羽に恭也は「みりゃわかんだろ」と両肩を竦めてみせる。
「しかも個室だぜ?」
 独房の鉄格子越しに状況を説明されても薄闇の中で織羽は自分の体を交差する自分の腕でただ抱きしめる。


「不思議なものね。光源はどこかしら?」
 ルージュ・コーデュロイは騒いでも仕方ないと割り切って、独房に優・コーデュロイレジェヴァロニーエ・レクラムと三人共入れられたことは不幸中の幸いと頷く。
 城内部であるのは牢屋というシチュエーションにて連想したせいではあるが、多分それは間違っていないだろう。
 伸ばした手指の輪郭がわかる程度には真っ暗でないのが不思議に思うものの、確保できる視界に、優はそっと鉄格子に近づき、掴み、通路を、路の先を、眺め見やる。
 出入り口は真っ暗闇だ。


「確か城の門が開いて……そこまでだな」
 ハニージュースを子供達に配り終えて、手を振って別れ、そして城へと進み、それからの記憶がぶつっと切れたように無い。
 アレクス・エメロードは状況を確認しようと呟きながら記憶を攫う。
 ただ、
「ねえねえホークちゃんがいないよ!」
 すぐさま気づいたシャーロット・フルールの声に、アレクスはシェリル・スカーレットとふたり、互いの顔は見えないながらも同じ表情をしているだろうのを見越し頷きあって、団長の名をそれぞれと呼びあった。

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担当マスターより

▼担当マスター:保坂紫子

マスターコメント

 皆様初めまして、またおひさしぶりです。保坂紫子です。
 今回のシナリオはいかがでしたでしょうか。皆様の素敵なアクションに、少しでもお返しできていれば幸いです。

 サンプルアクションコメントに無いアクションについては難易度が変動する保坂です。全てはリアクションの通りとなっておりますので、ご了承ください。
 また、ご参加いただいた皆様には次回シナリオ「語れぬ指:積み重ねの落胤」への招待を贈らせていただいております。ご確認くださいませ。

 また、推敲を重ねておりますが、誤字脱字等がございましたらどうかご容赦願います。
 では、ご縁がございましたらまた会いましょう。