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語れぬ指:罪課さねの烙印

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語れぬ指:罪課さねの烙印
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…※…※…※…




そこは魔障壁に程近い砦。

魔族との争いが続く季節、ある日、女が女を産んだ。

それはそれは力の在る人の子を産んだ。

赤子が娘へと成長し、彼女が十六を迎えた年、魔族との争いに終止符が打たれた。

そして砦で産まれた娘は眠りに落ちる。


いつしか、


砦は城に成った。

城へと続く道に家が並び、村ができた。

まもなく城に通う者が現れた。


そして、


誰の記憶からも忘れ去られてしまった。




…※…※…※…




 魔障壁に隣接する辺境に位置する集落ポルク村。
 教会から冒険者に向けた依頼はこの村を調査すること。
 ただ、
「城、ですよね」
 “それ”は書かれてはいなかった。
 眺めて囁いた優・コーデュロイルージュ・コーデュロイレジェヴァロニーエ・レクラムのふたりも肯定するように頷いた。
 依頼書に記載されていない建物の存在感を誰が無視できただろう。
 一際目を引く建造物は現地に来なければ想像できることもない。
 これだけ目立つなら依頼書に村の特徴のひとつといて書かれていておかしくないのに不思議なことだ。依頼を出した人物はこの村に訪れたことがないのだろうか?
 考えればそれだけに疑問は留まらず、“探る”という人々の生活に踏み込めという内容はこの村に問題があるのだと言わんばかりで、依頼自体も妙と言えば妙なのだ。
 その最たるものが、
「僻地の城にひとりだけで住む女性ですか」
 このつい先程手に入れたばかりの最新情報だろう。
 道行くひとに尋ねれば確かにその建物は城で、娘がひとり住んでいるという。
 自分達は“調査”を請け負った。なら“依頼書に従う”べきだろう。
「私達はこのお城の中を調査させていただきましょう」
 優の提案にルージュが頷く。
「前線の城がある村としてはおかしな所よね」
 辺境の集落らしく相応の人数で、貧しさもそれに比例している。ただ、村人達の表情はこの遠い距離でもわかるほど明るくて、何より走り回る子供達の歓声が冒険者を向かえる喜びがここまで響き渡って届き、人々の幸福度は相当に高そうだった。
 余所者という冒険者に対して皆が皆、警戒もせず無邪気に接してくる。
 魔障壁の成り立ちから周囲にもたらす環境について思い込みの偏見があるのかもしれないが、天高く聳え立つ物々しい背景と比べるとどうしても珍妙で、ちぐはぐ感が拭えない。
「何かありそうよね」
 他に理由があるとしか思えないほど、この村は平和そのものと赤い目に映る。
「ふむ。人間達の村にしては妙な事が多いようだな」
 優とルージュが隣り合いに互いに自身の意見を出し合うのを眺めレジェヴァロニーエが、
「ならば心してかかろう」とふたりに早速城に赴こうと促す。



…※…




 城へと続く道を歩きながら優は口を開いた。
「依頼内容も妙ではありますが、仮にあのお城が女性ひとりで維持と管理を行っているとしたら物凄いことです」
 何よりも先に城主である娘と挨拶を交わし、来訪の理由と調査の許可が欲しい。城内は拒否されたなら城外だけでもと願いたい。
「“火の竜騎士”の二つ名と“グランヴィル功労勲章”は、身分の証明になりますでしょうか」
 まずはどうしたら城に入れるかを考えよう。身元を保証するのが確実だと優が自らの名乗りをと持ち出せば、
「山と森を超えて来たからね、文化は違ってるかもしれないよ」
 ルージュが忘れないでと指摘した。いかにルージュやレジェヴァロニーエ、彼女らの活躍と献身を目撃する者達が、優が信用できる人物と知っていても、僻地に住む人々はそれを知らないし、肩書と勲章が正しく威光を発揮できるか予想できないと添えた。心強い人達が来訪したと有難がってくれるなら気恥ずかしいだけで済むけれど、最悪、不審がられて曲者扱いされて投獄になればたまったはものではない。
「でもお城ですし。住んでいる方ははそれこそ相応の身分の方では?」
 勲章を翳しこれはなんだと聞かれる可能性は無いと断言できないが、勲章ひとつでその信頼を保証にある程度の行動を許してもらえる可能性だって皆無ではない。
「だが、城の娘はそこに住んでいるのだろう? ならば村にとってはそれなりの立場ではないか? ゆえに、私達は向こうがどう考えようとも、娘に対して人としての礼儀で対応せねば」
 それが誠意であり、現状示せる驕らず飾らずの自分達の精一杯だ。心を開いて欲しい相手に、先に自らが両腕を広げるようなもの。
 強行する気は一切と無い。欲しいのは協力なのだから。
 竜族であるレジェヴァロニーエは己の本性が人々に知られれば騒ぎになると三人の中で強く自分の振る舞いについて気を使っていた。姿を完全にヒューマンに似せて行動することで余計な騒ぎを起こさないようにと配慮を怠らない。
 必要であれば力仕事は任せられよと存分に自らの特性を使いはするも、人の力では打開できない難しい局面と直面すれば遠慮気もない。しかし、物を退かしたりなどの些細なことから、最悪、竜化に手腕などで破壊活動を行うことも視野に入れながらも、それらは全て願わくば必要とされず、また、人目につかないように祈りたいと思っている。それだけ正体を隠し通しておきたいと、平穏な村と印象を受けた村のこと、刺激は与えず平素なまま物事が終わって欲しいというのが本音だ。
 遠く眺めている限りでは、村の家屋よりも大きいという印象が強く、外観のシルエットを捉えるも建築様式に突出しあ特徴は見当たらない。
「あの城が――村か城かどちらが先かはわからないし、村がどの時代に出来て、城がどの年代に建造されたのかもわからないけど――所謂古城に分類されるとして、内部がどうなっているのか、迷子にならない為にも見取り図は必須ね」
 荷物の中に冒険者向けの探索セットが入っていたはずとルージュは内容を思い出す。羊皮紙にコンパスも使う形で地図記憶にマッピング作業を行えば効率がいいだろうか。城の内外の関係をひと目で確認できれば長々とした説明の手間も省ける。
「ここからでも相当に大きなお城だと伺えますし、場所的にも人類と魔族の戦争の最前線だったのではと推測できます。
 そうなると隠し通路はある前提で考えるのがいいでしょう」
 籠城しながら伝令を安全に走らせたり等くらいはしていそうだと、優はチェックすべき点としてリストアップしていく。
「なら灯りが要るわね」
 当然そういう場所は暗所なはず。光源の確保なら私が担当するわとルージュが優に答える。
 優の耳元で飾るピアスのその動きは村を通り抜ける道中はずっと彼女に合わせた自然なものだ。城内部との比較がしやすい。
「お城と聞くと、本棚の本や暖炉上の置物に触れたり等で動き出す仕掛けがありそうですよね」
 エイジオブアクエリアスによる予知で可能性を拾い上げて、城内の隠し通路などの関係者しか関知されていない秘密や、最悪の考えとして城の自爆的な破壊を目的にした細工の恐れを危惧に含む。些細なことでも察知できるようにするのは第一に自信の身の安全を優先するが為。争いの譲れぬ最終防衛線に建っているのなら捨て身の手段とて戦略の一つとして備えられているだろう。形振り構わない戦争なら尚更だ。
 仕掛けに凝るのは平和な時代に産まれた余裕だけとは限らない。手管手腕が緻密であればあるほどそれはリアルを騙り誰をも惑わせる罠とできあがる。
 探索はそれらに惑わされず微かな違和感さえ取り残さず攫って正体を暴かなければ。
「おかしな事があれば解き明かしましょう」
 暗号があっても怖くはない。冷静に分析すれば自ずと答えは出せる。
 何事もしっかりと見抜いてみせるわとルージュは、そうね、と優とレジェヴァロニーエにこれは必ず調べるものだと説明をし、三人分の目や耳や経験があるのだから必ず一つや二つくらいは探知なり感知なりできるはず。
 それに例え城の中を調べられなくとも探せる場所は外にもある。城周辺に巧みに隠された小屋や井戸、城へと繋がる道が新たに現われるかもしれないのだから。
 妙なものがあれば鑑定もできるし、城ひとつ調べ上げるに足りないのは、時間だろうか?
 やがて見えてくる城。
  魔障壁を背景にした古い時代の造形。


 城門は開かれて、そして、優達の記憶はそこでぶつりと途切れた。

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