■序・蒼天の命運■
政商
ボーンベニン・セルハバードとエリノス王家の内親王
マハル・エリノスが結構した反憂国士官会クーデターは成功し、ブレダ太陽系の支配権は、クーデター有志が設立した臨時軍事評議会に掌握された。
臨時軍事評議会はケセルリア太陽系を支配するラスドア派、カイラーサ太陽系を支配するブレドム連合派に対し、和平交渉の提案を行った。ラスドア派に対しては、貴族の権利の完全なる復活と、列公会議裁判により、前憂国士官会総帥・ラジェンドラ大将を裁く権利を保障するとし、ブレドム連合派にはカイラーサ自治領の承認と王政社会主義政党の認可という、それぞれ破格の条件を提示してである。
これに対し、ラスドア派、ブレドム連合派はともに快い態度を見せ、和平の機運は急激に高まりつつあった。
しかし、この機運を妨害し、ブレドムを破局に追い落とそうとするものもいた。
特殊部隊「オリョール」――アレイダ自由圏から見てライアーの後背にあり、過酷な環境とライアーの脅威に対抗するため。強く硬い政治体制として社会主義体制を選択したファントップ星系の最精鋭部隊である。彼らは小惑星落下テロにより、ブレドム和平――いやブレドム内戦そのものの構図を根本から変えようとしていた。
――果たして、蒼天は墜ちるのか?
この問いに、人々はそれぞれに答えを出そうとしていた。