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【エトワール】第二幕“プレシャス・ビースト”

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【エトワール】第二幕“プレシャス・ビースト”
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ACT0:オーバーチュア

 二次元都市ナゴヤの一角……夜のとばりとふしぎな緞帳に包まれた動物園。
 ブザーが高らかに開演を告げ、それを見守るペンギンは期待に満ちた表情で舞台へ拍手を送った。
 舞台に巻き込まれてしまった人々と、動物……そしてアイドルたちに。

「幕開きだね! わかるとも――ショウ・マスト・ゴー・オン!」

 そして舞台と客席、役者と観客を隔てるプロセニアム・アーチが、ゆっくりと口を開いてその向こう側をあらわにした。
 薄暗い舞台の中に立つセットは子供部屋のそれであり――そこにいたのは、小鈴木 あえか演じる小さな女の子である。
 シーリングライトひとつがぼんやりと照らす舞台で、あえかは猫を抱いて遠くを見上げている。

 エキストラを申し出たのは、動物園で飼育されていた目つきの悪いヤマネコだ。
 不機嫌な顔を作ったあえかを、説得じみた視線でじっと見つめるヤマネコ。名演技に応えて、あえかは猫をぎゅっと抱きしめた。

 薄く開かれたドアからのぞき、おやすみを言う母親と、それを見つめる娘。
 オープニングを飾るのは、そんな場面から始まる一人芝居である。

「ほら、その子ももう寝ようって言ってるわ」
「……うん」

 そしてあえかは寝床に就き、猫もまた自分の寝床であるバスケットにくるりと丸くなる。
 あえかの出番はここまでだが――しかし、その舞台演出は、むしろここから始まるのだ。

 暗くなった舞台でごく絞られたピンスポットが、小さなバスケットを照らす。
 君臨のスター・グノーシス。舞台を動かし彼女が注目を促したのは、寝たふりをした猫のほうであった。

 人々が寝静まったのを見計らい、猫はのそり起き出して窓を見やる。
 すると静かだった劇伴が、だんだんと華やかになっていき――窓の向こうに、鳥、クマ、キリンと種々雑多な動物たちのシルエットが通り抜けていくではないか!

「にゃおう」

 と一鳴きした猫は、あえかのことを繰り返しかえりみながら、しかし軽やかに、窓の外へと身を躍らせた。

―― 今宵 今晩 この夜は 動物たちの神秘の夜 ――
―― 願いを叶える星をめぐる プレシャス・ナイトが開かれる ――

 ひそやかに、しかし力強く歌われる、プレシャス・ナイトのメインテーマに合わせて、ヤマネコはしなやかに舞いながらはけていく。
 ベッドに入ったあえかも、暗闇に紛れてセットとともに舞台の上からしめやかに降りた。

 動物たちによる、素敵な秘密の夜会。
 エトワール第二幕、『プレシャス・ナイト』の幕開きである――。


■目次■


1ページ ACT0:オーバーチュア

2ページ ACT1:プレシャス・ナイト

3ページ ACT2:闇にほえる獣たち

4ページ ACT3:悪の黒猫トゥブリン

5ページ ACT4:光をのぞむ獣たち

6ページ ACT5:悪は燃え尽きたり

7ページ ACT6:エピローグ 名誉と栄光と

8ページ ACT7:エンド・クレジット

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