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07.最終防衛線

「彼らは攻める意識が強く、己は守る意識が強い。本来想いに優劣はない。が、我が意志を超えられるものならやってみるが良い」
 藤原経衡は迫り来るトワイライトのIF部隊をメーヴェASPに乗って迎え撃つ。
 敵は対IDD戦を終えるまで正規の軍人だった部隊だ。更に長年の研究開発からトワイライトは独自の技術を有しており、敵機の見た目はバルドイーグルに近いが中身は最新鋭である。同一の赤黒いカラーリングから『ブラッドイーグル』と呼称された。
「行かせはしない」
 敵機にブレードで切り裂いた、と思い込ませる鮮やかな雲散霧消。死角に潜り込んだ経衡はプラズマブレードで敵機を両断した。
 目まぐるしい機動の中で空間知覚によって敵機の位置を把握して、背後からの攻撃にもクロニカバンドから生成される魔力シールドで応じた。
 それでもすべての攻撃を回避、防御するのは難しく軽微な損傷が積み重なっていく。
「力を温存する余裕はない、か」
 リンカーのリミッター解除と直接脳内への情報伝達によって著しく戦闘能力が向上した。
 細やかな制御と射線予測で擦り抜けるように弾丸を躱す。間合いを詰めた相手を一機ずつ確実に撃墜した。
 ただどれだけ強くとも守り通せるのは剣の間合い。イーサを優先する敵を追撃する機動性はなく、多数に囲まれない術はあっても多数を足止めする術はなかった。
 それでも一人で戦っているわけではない――経衡の守りを抜けた敵部隊に対艦プラズマ砲が撃ち込まれた。
「一機撃墜。やはり手数が足らんか」
 狙撃の結果を見届けたサキス・クレアシオンはすぐに後退を開始する。隠れる場所の無い海の上、バスタースナイパーライフルを両手に抱えたラヴィアンネージュはよく目立つ。
「どこまで足止めできるか、せめて調査の時間稼ぎぐらいはやれると良いが」
 クールタイムを終えるまで距離を取り再び狙撃。丁寧に確実に敵部隊の戦力を削る。リンクデバイサーの第一人者と称されるサキスだからこそ単純作業のように見えるが、極限の集中力と冷静さを求められる高度な戦術だった。
「引き付けられるのもここまでか」
 サキスは装備をアサルトライフルに持ち替える。
 イーサとの距離が詰まっており、これ以上はセンサーに探知されて“本来は平常”だったこの日のイーサを“非常時”に塗り替えてしまう。
 戦場で優れた狙撃手に背中を晒すなど想像するだけで恐ろしい。イーサへの進軍が大目的であってもサキスは捨て置けず、小隊の一つが連携して襲い掛かった。
「何も狙撃だけが能ではない」
 アサルトライフルの弾丸が吸い込まれるように装甲の薄い箇所やセンサー類に着弾する。
「白兵戦に付き合う用意はしておらんのでな――」
 敵機の擦れ違い様に振るわれたブレードを残像を残して回避する。実体と量子の間で漂う機体の手には再びバスタースナイパーライフルが構えられていた。
「――これで我慢してもらうとしようかのう」
 背中を晒した敵機を零距離射撃で撃ち抜いた。
 

 イーサから借り受けた調査用の小型船の甲板で、ライオネル・バンダービルトは煙草を片手に戦場を見渡していた。
「俺も焼きが回ったかね」
 深く吸い込んだ煙を気怠けに吐き出す。
 超遠距離から最大範囲のディメンションブレイクで先制攻撃を仕掛けて多くの機体を巻き込んだまでは良かった。その後、小型船を囮にして距離を取ろうとしたところで、海上で戦うというのに肝心の反重力制御を行う準備を忘れていたことに気付いた。
「これじゃあ人様をロートル呼びなんざできねぇな」
 再び視線は戦場に向けられた。陸地一つ見当たらない雄大な青が視界を占めている。
『へいへい、そこの不良QTくん、乗っていくですか?』
 聞き覚えのある声を小型船の無線機が受信する。海中から水飛沫を上げながら旧式――この時代にとって最新のIFが現れた。
「仲間割れかい?」
フェスタは好きなことを好きにやるだけです』
「まぁ事情はどうでもいいが、俺に協力するのはどういう風の吹き回しだ」
『遊び相手を務めた礼はちゃんとするですよ』
 ライオネルは記憶を振り返りオサレバトルのことを思い出して、柄でもないことをした甲斐があったと頬を釣り上げる。
「だったら戦場までひとっ走りしてもらおうかね」
 フェスタのマシンリモートによって操られたIFの手の平に飛び乗った。
『落ちても拾ってあげないですよ』
「安全運転なんて贅沢は言わねぇさ」
 移動する足場を得たライオネルは三種類の武装を詰め込んだ十字架型複合重火器ユニット『As:[黒十字]』を実体化すると、レーザーキャノンで敵機の射程外から攻め立てた。最小限の機動で避ける賢い奴にはミサイルランチャーを撃ち込んでペースを崩させる。今回は防衛側で爆導索を活用する機会には恵まれなかったが、レーザーとミサイルの二種類だけであっても、広大な空を狭めて追い込む様は『手持ち要塞』の面目躍如である。
「二束三文の契約金を握りしめて殺して、殺されようじゃねえか。傭兵っつー同類のよしみだ、とことん付き合ってやる。遊ぼうぜ、戦争狂い」


「何かしら最新鋭の武器でも借りれねぇかな」
『これを使うです!』
 シンの漏らした愚痴に思わぬところが返答があった。
 片手にライオネルを乗せたフェスタのIFが近くを通り抜ける時に装備を一つ投げ渡してきたのだ。
「これでどうやって戦えと?」
 最初それを鞭だと思ったが、卑猥なヌルテカ具合にイーサ名物の触手だと気付く。
 フェスタによって魔改造された『ドコデモヌルヌル』はQIの力を応用してブルー粒子の結合を解除する粘液を持つ。更に敵味方の登録で自分の服や武装を溶かす心配をせずに敵だけを脱が――攻撃できる初心者にも優しい設計である。今日からきみもこれで触手デビューだ!
 シンは試しに触手を高速で振り回しながら敵に近付く。IFなのにドン引きしているのが分かる挙動で後退された。
「くらいやがれ!」
 伸縮性を備えた触手は間合いを読み難い。敵機の胴体に巻き付くと粘液を分泌して装甲を溶かしていく。じわじわと迫る触手に恐怖した操縦者が離脱した。勝てたのに何故か居た堪れない気持ちになった。



「エクスターミネーションに移る準備はできている?」
 艦橋に到達したアリアの宣言にワイアット・オルキンスは笑った。
「我慢を覚えたか、それとも腑抜けたか“猟犬”」
「アタシの変化が腑抜けたってことなら、それも悪くないわ。生憎だけど戦争も貴方にも、興味はもうない」
 軍人時代の自分を知っているらしい口振りだが、もはやどうでもよいことだ。
「この私を言葉だけで止められると?」
「いいえ、喰らいつくわ、その喉元に――」
 食いちぎりはしないけどね、という不殺の決意を口には出さず、アリアは槍形態の『ACT:false scyt』を携えて駆け出した。
 ワイアットが旧式拳銃を取り出すが、引き金を引く前に時を加速させる。
「あれは……!」
 加速時間に攻撃ではなく回避行動を取った。ゆっくりと流れる時の中で艦橋に向けてIFの腕が突っ込んで来たのだ。
 時の流れが戻り潮風がアリアの長い髪を巻き上げる。砕けたガラス片で頬から血を流したワイアットはIFの腕に飛び乗って剛毅に笑った。
 破壊された艦橋から甲板に飛び降りて、ワイアットと副官の操るIFと対峙する。
「さあ、我々の戦争を始めよう」
「始まらないですよーう」
 輸送艦が爆発を起こして甲板が大きく揺れた。一仕事を終えた風がアリアの隣に出現する。ホットリミットやアクティクラッシュを駆使して輸送艦の機関部を破壊したのだ。
「よく戦った。だがお前達は悠長に過ぎた」
 ワイアットは遠くに見えるイーサに部隊が到達するのを指差した。
「我々は目的を果たした」
「そこまでして翡翠の黄昏というものが欲しいですか?」
「掲げるお題目など我々の戦争に関係ない」
 より多くの敵と戦える立場だから協力する生粋の戦争屋、それがワイアットだった。
 副官のIFが二人にブレードを振るう。アリアは空中に回避するとコアを目掛けて槍で突撃した。しかし穂先が突き立った瞬間、ワイアットの射撃でブースターを破壊されてしまう。海へと落ちていくアリアに副官はアサルトライフルを向けるが、空から降って来たフェスタが割り込んだ。
「フェスタを恩知らずにする気ですか」
 風はアリアが落ちる先にトランスファーで先回りしてクオンタム浮き輪を広げていた。
 移動手段を失い敵部隊を見送ることしかできない二人の前にフェスタが再び姿を現す。
「どうしてアタシを?」
「遊びに付き合ってくれたお返しですよ」
 アリアはトワイライトと戦いながらフェスタの存在が引っ掛かっていた。二度の戦い(お遊び)で人となりを知ったアリアは、フェスタが好き勝手な振る舞いをして他人に迷惑は掛けても悪に加担するようには思えなかった。
「……翡翠の黄昏のために協力しているの?」
「教えてあげないです。それともお遊びではなく殺し合いしたいですか?」
 いつもの笑顔で、いつもとは違う問い掛けを残して、フェスタは去って行った
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