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04.待ち人来たりて

「トワイライトがわざわざやって来るってことは、ただの贖罪の箱庭ってわけじゃなさそうね」
 今井 亜莉沙は過去のイーサを再現するシステムの制作者はアゼルであり、翡翠の黄昏に繋がる大きな秘密が隠されていると考えていた。
「まあそう簡単に暴けるわけもないわね」
 管理区の研究室を幾つか巡り、当時の研究や開発計画を覗いて見たが引っ掛かるようなものはない。
「あれはアドミンさん? この時代だとユニさんだったかしら」
 見覚えのある少女が廊下の突き当たりを歩いて行く。
 追い掛けて研究室に入ると、扉に背を向ける形で少女は端末を操作していた。
「もしかして……」
 先程は一瞬だったため見逃していたが背格好はユニよりも大きい。服装が異なり気付くのが遅れたが彼女の正体を亜莉沙はよく知っていた。

あたしの この想いを 恋の形にしてアクティベート


 歌声に反応して少女が振り返った。
「連合軍所属の今井亜莉沙よ。もう一つの顔としてアイドルもやってるけどね」
「軍人でアイドルです?」
「私の歌は聞いたことなさそうね。それなら『いつか必ずこの続きを歌ってあげるから、楽しみに待ってて』――フェスタさん」
 名乗っていない正体を言い当てて主導権を握ろうとしたが、少女は首を傾げるだけだった。
 亜莉沙は白を切る少女にユニが映る工業区の監視映像を突き付けた。
「ふっふっふ……!」
 少女は勢い良く後方宙返りを行う。その過程で白黒反転の修道服に衣装が再構築された。
「我が名はセイムなのです!」
「……セイムさん?」
「現場を押さえられてしまったからには一時撤退するですよ!」
 駆け足で横を抜けていくが、逃げられるよりも早く主任権限で扉をロックすると共に研究室のネットワークを隔離した。
「逃げなくても大丈夫よ。誰かの命を脅かすようなものでなければ悪戯も大目に見るわ」
「おお、ユニとは大違いです」
「ユニさんとは仲が悪いの?」
「友達ですよ!」
 構ってもらうためにちょっかいを出す面倒臭いタイプだった。
「これでも遠慮してるです」
「そういえば誰もセイムさんのことを知らないようね」
「イーサから追い出されないようにユニが隠してくれてるです」
 亜莉沙は素直になんでも答えるセイムに気になることを訊いた。
「シスターみたいな恰好をしてるのは趣味?」
「一番しっくり来るです。意味なんてないですよ」
「ユニさんとそっくりなのも同じ理由なのね」
「逆なのですよ! セイムはユニの母親に似てるらしいです」
 現代ではアドミン/ユニの成長できた場合の姿に似せていたが、今目の前に居る姿こそがフェスタ/セイムのオリジナルなのだろう。よく見れば瞳の色が黒くなっていたり全体的に柔らかい印象を受ける。
「ついに開いたのです!」
 亜莉沙が手に入れた情報について考えていると、セイムがロックを破壊して研究室から脱出していた。
「最後に聞かせて! 『翡翠』って言ったら、あなたは何を想像する?」
「翡翠です? よく分からないです。あっ、亜莉沙は共犯なのでユニにバレた時は覚悟するですよ!」
 好き勝手に言葉を残してセイムは量子の海へと帰って行った



「ニコレット、充分に気を付けてね……触手とかスライムとか三角木馬とか」
「良く聞こえなかったわ。何に気を付けろって?」
「ぇ……別に何でもございませんよ!」
 暁月 弥恵が慌てて首を振る様子をニコレット・スタイネムはスルーした。時間がないので弄り倒すのは後回しだ。
 二人はトワイライトの襲撃からデータを守るため海中施設を訪れていた。
 ニコレットは研究室の一つに入り主任権限を利用してデータを吸い出す。作業はPC任せのため、待ち時間に紙の資料を机に並べて次々とスキャニングで取り込んでいく。
 この時点では被検体になっていないようでユニのデータは見当たらなかった。
「これって私達が今居る場所の雛型?」
 メインシステムに蓄積された記録を元にイーサを再現するシミュレータと、それに組み込まれるイーサ関係者の記憶データがある。ロックで詳しい中身までは見れなかったが、記憶にはプライベートの時間も含まれており恐らく無断に回収されたものだ。
「回収作業で手一杯だからちゃんと守ってちょうだいね」
 弥恵は頷き返して複数の足音が近付いて来る方向に目を向けた。
「あっさりと仕事を終えられるとは思ってなかったが、手強そうな奴が出てきたな」
 ネリー・フリッツは弥恵に気付いて煙草の煙を天井に向けて吐き出す。態度は面倒臭そうだったが、左手のハンドサインで手早く部下に指示を出していた。
「一人でよろしいのですか?」
「相手も一人なんだ、そっちは頼んだよアキウサくん」
アキ・ウサです」
 副隊長のアキは四人の部下を連れて別の通路を進んでいく。
 弥恵にそれを止める余裕はなかった。目の前に立つ女は隙だらけに見えるが、緊迫した状況で自然体を維持するのは異常だ。
「そこを通してもらうよ、お嬢さん」
「いいえ、ここから先は通しません」
 弥恵はジェットウィングによる加速で両手剣を勢い良く振り抜くが手応えは無し。
「悪手だよ、それは」
「ああっ……!」
 ジェットエンジンは急に止まれない。
 ネリーは屈み込んで弥恵が頭上を通るのをやり過ごすと走り去ってしまう。
 弥恵は急ブレーキで速度を緩めると壁を蹴って方向転換、すぐにネリーの背中を追った。


「さすがですわ、ネヴュラ様」
 羅那魅 静姫は予測通りに動く敵部隊を監視カメラで確認して声を上げると、ネヴュラ・シェーレは功績を誇るでもなく頷いた。
「こちらは任せておけ、竜一殿、静姫」
「ああ、そちらは任せた」
 青井 竜一はすれ違い様に言葉を交わして、静姫と共に研究室を後にする。
 長い一本道の突き当たりで、竜一はレールガン形態に切り替えたトライアルライフルを構える。
 ひりつくような緊張感の中で遂に敵が姿を現した。
「先手は頂きますわ!」
 静姫は曲がり角から顔を出したBHをロックオンして空間歪曲を発生させる。
 待ち伏せを予期していたらしく巻き込めたのは斥候の一人だけだった。更に重力場から素早く抜け出して前進してくる。
「来たな!」
 ブルズアイ――竜一の正確無比の狙撃が膝を撃ち抜いた。
「これ以上の戦闘は無理ですね。撤退しなさい」
 先手を取り一人倒すことはできたが、アキは斥候を囮に部隊の展開を完了していた。
 ここからは真っ正面からの戦闘であり人数差は倍となる。敵は予想以上に手練れで動きから正規の訓練を受けていることも窺える。
「ブルー・スフィア、展開。ここは通しませんわ!」
 静姫は不退転の決意で立ちはだかる。身に纏う装備はネヴュラの手で万全に最適化されており、背後には頼れるお兄様の援護が付いている。何も恐れる必要などないのだ。
 アキは一歩下がり指揮に集中して、残りの三人が静姫に襲い掛かった。
 静姫は空中を利用して三次元的な戦闘を繰り広げるが、狭い室内では天井すらも足場に使う熟練のBH相手には有利に立ち回れない。



 白野 直也は聞き耳を立てて敵との遭遇を避ける。彼の目的は海中施設の防衛ではなく人探しだった。
「ここだな」
 主任研究室の扉の前に立つ。フェスタの招待で特異者が調査した時には扉を破壊されていたが、この時点ではまだ無事のようだ。
「……見付けた」
 部屋の真ん中に設置された手術台にアイ・メイスンが眠っていた。まだ6歳頃で知っている姿よりも幼い。負荷の大きい実験は行われていないのか髪は黒く健康体だ。
「動くな」
 直也はアイの状態を確認していたため、背後から近付く男に気付かなかった。
 背中に突き付けられた銃口の感触に大人しく両手を上げた。
 手術台の金属部品の反射で男の顔を確認する。直接の面識は無かったがイーサの記録に残っている人物だ。
ジェラルド……とかいう名前だったか」
「お前はこの時代の人間じゃないな。何が目的でアイに接触した」
 ジェラルドの断定に直也は疑問を抱きつつ手を上げたまま肩を竦めた。
「外に連れ出そうと思ってね」
「何故そんな無意味なことをする――おい、動くな」
 警告は無視して振り返る。
「あなたも無意味と分かってるのに何を?」
 二人は沈黙したまま睨み合う。やがて根負けしたジェラルドは拳銃を仕舞いアイの傍に歩み寄った。
「いつも肝心な時にお前を置いてきぼりにしてきた……ごめんな」
 ジェラルドはアイの頭を撫でて優しげに微笑んだ。
「お兄ちゃん……?」
「ああ、迎えに来たんだ」
「お兄ちゃん、なんだか大人みたい」
「そうか、そうだな」
 直也は二人の再会を邪魔しないために部屋の外に出ると白衣の女性が近付いて来た。
「おやおや、こんなところまで侵入者かい?」
 侵入者という口振りからこの時代の人間で、海中施設に入れるということは恐らく現代ではトワイライトのメンバーだ。
 一触即発の空気の中でジェラルドがアイを連れて部屋から出てきた。
「おい、アイを頼んだ」
「……分かりました。ここはお任せします」
 直也が手を差し出すと、言い含められていたのかアイはすぐに手を繋いだ。
 その場を走り去る直前に背後から二人の会話が聞こえてきた。
「悪いが八つ当たりさせてもらうぞ、レナータ・ソコニコヴァ
「はー? 誰だよきみ?」
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