クリエイティブRPG

エキセントリック・アーカイブ

リアクション公開中!

エキセントリック・アーカイブ
リアクション
First Prev  1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9  Next Last

02.平穏なる世界

 過去のイーサの調査が開始される前、大会議室にて第二回IF開発会議が行われていた。
「では前回の提案順に詰めて行くとしようか」
 ジェノ・サリスアドミンから送られた視線に頷いた。
「『砲撃特化型』は強力な一撃を持つが、あくまで直線の攻撃だ。そこで砲撃を拡散させる機構を設けるのはどうだろうか」
「物理機構でレーザーカノンに組み込むのであればリソースも節約できますな」
 ジョエル・マクベスはジェノの提案内容に頬を緩ませる。
「最大出力時のチャージを維持したまま移動はできないだろうか」
「ふむ、前回の会議で伝えたとおりそれ相応の装備が必要になる。安全面に機動を妨げる懸念もある」
 リスクの大きさからチャージ後の単独維持は見送りとなった。

「『可変強襲機』の装甲を削って変形速度と機動性を高めることを提案するわ」
 桐ヶ谷 遥の改修案にアドミンは頬を吊り上げた。
「人生も開発も尖ってこそだよねー」
「コックピットにも手を加えることは可能かしら。折角の性能に操縦が追い付かないようでは話にならないもの」
「確かに専用に設計した方が良いかな」
「他にもLDの装備自体に手を加えるとかね」
 胸を張ってデバイサースーツをアピールする。
 どうしてパワードデバイサースーツを着てないです? 露出が足りないなら触手を貸すですよ?
 セクハラのノルマを達成したのでサキス・クレアシオンの意見に移ろう。
「可変機じゃが、補助ブースターを兼ねた着脱式のリフターも付けるのはどうかのう」
「フライトユニットのことかな? 着脱式となると設計データを分けるから難しいね。でもスラスターの増設で軽量化による出力不足を補うのは良いかもしれない」
 二人の意見を取り入れて更にピーキーな仕上がりとなりそうだ。

「『前線指揮型』として幅広い戦況への対応と戦力強化のためにブルー・カリバーの活用を広げた機能を持たせるのはどうでしょうか」
 藤原 経衡の提案にジョエルは腕を組んだ。
「汎用性は好ましいが、そのための工夫としては大掛かりに思える。例えばBMPBは「バリアを張る」機能を拡張するだけで活用の幅を広げたためリソースが抑えられている。しかしブルー・カリバーの機能は「水の刃を作る」ことだね」
 経衡はジョエルの続く言葉に気付いて口を開く。
「弾丸として扱うには射出機構を、マントのように展開するなら形状変化を……それぞれ必要になるということですね」
「その通りだ。どうなるか一度組み込んで様子を見てみるとしよう」



 過去のイーサへとダイブしたメアリ・ノースは、隣を歩く遠近 千羽矢の思い詰めた顔を目にして肩を竦めた。
「ここは既に終わった時間じゃ。いくら足掻いたとて“データ”に過ぎぬ」
 二人は工業区へと直接ダイブせずに情報収集も兼ねて居住区を歩いていた。これまでに当時の人間と何度か擦れ違ったが、大量のリソースを注ぎ込むことで忠実に再現された彼らは余りにも人間だった。
「分かっておろう? 深入りすれば己が傷つくだけじゃぞ」
「……メアリさんの言う通り、ここで何をしても未来は変えられない。それでも……今このデータが見つかった事には、きっと意味がある」
 千羽矢の視線の先には幼き日のアドミン――ユニ・エルフォードアメリア・オールストンヘザー・クレインの姿があった。言い争う声は盗み聞きせずとも耳に届く。
「わしの持論に過ぎぬゆえ、覚悟ができておるのならそれでよい」
 メアリは千羽矢の視線を追ってユニの姿に目を留める。
 イーサテックフェスにて特異者の調査で発見された海中施設の研究データにユニの名前があった。人体実験を行った者はアゼル・エルフォード――娘すらも利用した研究者は果たしてどんな人物なのだろうか。
「丁度用向きもできた所じゃ、ついでにわしも付き合うとしようかのう」
 千羽矢は喧嘩が落ち着いたタイミングを見計らい声を掛ける。
「……試作機のテストを見学させて貰いたくて来たんだが。どこに行けばいいか、知っているだろうか?」
「勿論です! 案内します!」
 ユニが手を挙げながら小さく跳ねて主張する。
 思わぬ反応に面を食らうが、何故そこまで嬉しそうな様子を見せるのかすぐに察しが付いた。彼女は千羽矢の意図に気付いたのだ。
「案内なら一人でいいでしょ。あたしは帰るから」
 アメリアは配慮も優しさも一言で切り捨てた。


 アリーチェ・ビブリオテカリオはアメリアの説得に四苦八苦するユニを観察していた。
「あの子に何があったら、あんな駄目大人になるのかしら……」
 ロボットアームに振り回されて恥ずかしい姿を晒すことになった恨みを忘れそうになる善良さだ。
 説得に応じないアメリアを見ていると、アリーチェの中で何かが引っ掛かる。あのやり取りをよく知っているような気がしてならない。
「まるでアリーチェを見てるみたいだ……ぐふッ!」
 アリーチェは拳で崩れ落ちた世良 潤也を残してアメリアの前に立った。
「あんたは誕生日を祝ってもらいたかったのよね? だったら素直になりなさいっ!」
「急に出てきて何を……えっ、大尉?」
 アメリアはアリーチェの纏うゼスト連合軍制服に付けられた階級章を指差して震えた。
 完全無欠のツンデレが突き付ける台詞に満場一致で「お前が言うな」とツッコミが炸裂する未来は訪れなかった。
 父の背中を追うアメリアは幼い自分ではまだ同じ舞台に立つことはできないと諦めていた。しかし父と同じ階級を持った同年代であろう少女が目の前に現れたのだ。
 ――他の誰かにできたんだからあたしにだって出来る!
 幼く無鉄砲な自信家は自分の可能性を疑わない。
「いいわ、案内してあげる!」
 一行は突然の心変に戸惑うが、乗り気になったアメリアの機嫌を損ねるような真似はしなかった。
「大尉はこれまでにどのような功績を上げられたんですか」
 アリーチェはギラギラと瞳を輝かせるアメリアに未来の功績をどう誤魔化せば良いか苦慮した。
「……アメリアが敬語とかすごく違和感」
「そんなこと言っちゃだめですよ、ヘザーちゃん」
 ヘザーとユニはアメリアの内心を察して生温かく見守っていた。
 千羽矢は話を聞いている内に“本来の過去ではどうなったのか”という推測が最悪の結末に辿り着いた。
(もしかしてアメリアさんは……仲直りできないまま父親を喪ったのか?)
 追い打ちを掛けるように特異者の耳に外部からアドミンの通信が入った。

『ダイブして早々に悪いお知らせをお伝えするよー。バックドアが仕込まれていたみたいでね、侵入者さんのお出ましさ――』

 千羽矢は気付けばアメリアに矢継ぎ早に言葉を伝えていた。
「大切な人が、いつまでも当たり前に側にいてくれるという保証は、どこにもない。……こういう仕事をしていると、そんな“当たり前”に気づかされる機会が多くてな。もしわだかまりがあるのなら……できるだけ早く、解決した方がいい」
「お父さんと仲直りしろって? ふんっ、しばらく許してあげるつもりはないんだから」
 事実を伝えられないもどがしさに拳を握り締めた。
「……お母さん」
 千羽矢の言葉は意図せずユニに突き刺さっていたが、それに気付いたのはユニを注視していたメアリだけだった。



 工業区の試験場に辿り着いた一行は道中の会話で三人娘と打ち解けていた。
「流石はアゼル主任の娘じゃのう」
「えへへ、ありがとうございます!」
「言われ慣れているものと思ったがのう」
「イーサの人だと「主任の娘だから当たり前」という感じがして」
「外様の言葉故に価値が出るか」
 メアリは目を細めて頷いた。
 アゼルは研究者として優秀であり評判も悪くない。ユニからは「帰りが遅くて一緒に夕食を取れない」と可愛らしい愚痴が出るぐらいだ。
 信頼を得たと判断すると、実体化して最終点検を受けるガイストを指差した。
「あの機体……言っては何じゃが、欠陥があったりはせぬのかえ?」
「むっ……いえ、何事も絶対はありませんよね。念入りに最終確認を行ないます」
 ユニは機嫌を悪くしたが、すぐに思い直して笑った。
 メアリは試作機のもとへ向かうユニを見送り、顎に手を当てて考え込んだ。
「発言に嘘は無かったのう。それにプライドが邪魔をして失敗する性格とは思えん。……事故が故意に起こされたとのであれば、それは事件と呼ぶべきであろうな」
First Prev  1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9  Next Last