三千界のアバター

ワールドホライゾン

Holiday in Worldhorizon 6

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ワールドホライゾンのクリスマス


 ワールドホライゾンでは、今年も広場を中心にクリスマスのイルミネーションが街を飾っていました。
 普段は昼夜の区別がないワールドホライゾンでも今日だけは特別です。朝と夜があり、所によっては雪のサービスまであります。
 今日はクリスマスイヴ。多くの人たちにとっては、特別な一日になるかもしれない日なのでした。
「さて、今年もこの季節、ミチルさんとのホライゾンでのクリスマスデートは今夜。お昼までにはアトリエの飾りつけをしておかないと……」
 ホライゾンヒルズにある楽器工房アトリエ細雪で忙しなく動き回りながら、ユキノ・北河はつぶやきました。
 クリスマスの準備は、プレゼントも含めてだいたいできています。後は、このアトリエの飾りつけだけでした。
 ワンダーランドの住人であるミチルには、お友達から始めましょうと言ってありますので、多分来てくれると思います。絶対でないのがちょっぴり不安ですが、そこは信じるとしましょう。
 今夜のためにも、さっさとアトリエ内の飾りつけをすまさなければなりません。
 まずは入り口の扉を大きく開けて換気をしつつの大掃除です。埃はすべて取り去るのです。多少ホライゾンヒルズの通路に埃が舞っても、それは不可抗力です。風の流れ的には、通路から入ってきた風によって、アトリエの埃は隣の部屋である事務室の窓から出ていくはずですから。
 何やら他の階からドリルが回転するような騒がしい音が聞こえてきますが、今は構っている暇はありません。
 普段アトリエにおいてある色々な作業機械などは、大きい物は備えつけのシュレディンガーボックスにいつも通り入れておきます。
 小さい物は整理して壁際においておきます。それらを見て楽器を作る工具に興味を持ってもらえたら、ミチルに説明するつもりです。
 中央テーブルは、普段ある凸凹をクラフトボードで蓋をして、白いシーツを被せました。食卓らしく見えるようにと、花瓶にピンクの薔薇を挿して飾ります。
 普段は少ない椅子も、パーティーにやってくる人数分並べました。まあ、デートと言っていますが、ミチル以外の人も来ますから、普通にクリスマスパーティーですね。でも、ユキノ・北河にとってはデートです。誰がなんと言ってもデートです。
 肝心のクリスマスツリーは、いつもは入り口外においている植木鉢に入った生木を、綺麗に飾りつけて室内においてあります。
 壁には、作業風景の写真を貼りつけたコルクボードも配しましょう。その下には、実際に作られた作品である楽器を並べてっと……これで完璧です♪
 おっと、肝心のケーキがまだです。急いで境屋でトルタ・ロアナーゼを買ってこないと。飾りつけに結構時間がかかりましたから、急ぎませんと、みんなが来てしまいます。
 急いでコートに袖を通すと、ユキノ・北河はアトリエを飛び出していきました。
 おおっと、戻ってきたようです。どうしたのでしょうか。
 扉にかかった下げ看板をひっくり返してクローズドにすると、ユキノ・北河は軽い足取りでケーキを買いにいきました。

★    ★    ★

「チェーンジ、スイーツメーカー!」
 フィア・ヒーターがATDにスイーツメーカーのアバターカードをセットしました。
 フィア・ヒーターの全身をつつみ込んだ光がクロスワンピースに変わり、空中に現れた白いエプロンが舞い降りてくると、身体に巻きついてクルクルと背中でリボンを結びました。ポンと踵をあわせた足にブーツが星と共に現れ、頭を三角巾がつつみ込みます。
 変身完了です。
「さあ、巨大ケーキ作りの始まりだよ♪」
「おー!」
 フィア・ヒーターのかけ声に、ホライゾンヒルズのケーキ作り教室に集まった者たちが声を揃えてあげます。
 今日は、巨大ケーキのサイズ記録に挑戦です。
 しかし、クリスマスなのに、この人たちは何をしているのでしょう。いや、ケーキ作りですから、クリスマスならではと言えなくもありませんが。
「それでは、レディー! スイーツ! ルセット!!」
 ホイップエプロンを身につけたフィア・ヒーターが、調理開始のかけ声をかけます。
 いよいよ、巨大ケーキ作りの開始です。
「えーい、エッグ♪」
 人が入れるほどに巨大な寸胴鍋の中に、集まった者たちが次々に卵を投げ込んでいきます。いや、ちゃんと殻は取っているんでしょうねえ。それ以前に、卵白と卵黄が一緒くたです。こんな調子でいいのでしょうか。
 そんなことにはお構いなしに、フィア・ヒーターが巨大なバトルホイッパーsuiを寸胴鍋の中にツッコミました。とたんに、凄まじい勢いでバトルホイッパーsuiが回転していきます。
 泡だちます。理不尽なほどに泡だちます。
「さっさと、砂糖♪」
 フィア・ヒーターのかけ声にあわせて、みんなが次々に寸胴鍋の中に白糖黒糖三温糖麦芽糖氷砂糖ブラウンシュガーグラニュー糖キシリトールを投げ込んでいきました。それを、どんどんフィア・ヒーターがガガガっとかき回して混ぜていきます。力業です。
「ばっと、バター♪」
 今度はバターの塊が投げ入れられていきます。ちょっと待て、無塩だよね、無塩なのかあ!?
「ここで、粉♪」
 今度は、粉が投げ入れられました。粉塵爆発が起きそうな勢いです。しかし、なんの粉だ? 小麦粉か、片栗粉か、米粉か、ベーキングパウダーか?
「焼くよー♪」
 分厚い鉄板を組み合わせて角柱を作ると、フィア・ヒーターはその中でランタンバーストを起こしました。爆発して飛び散った熱々のカボチャが、鉄板にこびりつきます。
「それえ♪」
 そこへ、フィア・ヒーターがケーキの種を流し込みました。いや、そんなんじゃ焼けないでしょ、これ。
 しばらくして、フィア・ヒーターが鉄板を外させました。ケーキの生地が……いや、黒焦げになったカボチャの破片とスポンジらしき物がまだらに見えます。はたして、中まで火が通っているのかは謎です。
「くりくり、クリーム♪」
 まるで、まだら模様を隠すかのように、一同がクリームを投げつけていきました。中には、ほとんど泡だっていない物もあります。
「くっくっくっ、クッキー。あっ、飴ー!」
 フィア・ヒーターが、シューティング☆クッキーを投げつけます。トストストスと、ケーキらしき物に星形のクッキーが突き刺さっていきます。
 そして、最後の仕上げはキャンディミストです。ケーキらしき物が、ベトベトになっていきます。
「できたあ♪」
 いったい、何ができたのでしょうか……。
 巨大ケーキのはずが、何か得体のしれない物体ができあがりました。
 しかし、できてしまった物は仕方ありません。
 食べ物(?)を粗末にしてはいけないのです。この後、スタッフで美味しくいただくまでがワンセットです。避けては通れません。
 ……その後、彼らの姿を見た者はいないという噂です。

★    ★    ★

「トルタ・ロアナーゼくださーい!!」
「まともなケーキくださーい!!」
「みんな! ブッシュドノエルは持ったかあ!」
 大声が飛び交う境屋の店内で、弥久 佳宵蓬・マーグヌムはやや気押され気味です。
「うーん、予想以上に混んでますね」
 そうです、年末の買い物は戦いなのです。負けてはいられません。
「予約していたシャンパンとスノーレインケーキとテンパウンドケーキをくださーい!!」
 弥久佳宵が叫びますが、なかなかレジの境屋の所まで届きません。
「佳宵さん、任せてください!」
 そう言うと、蓬・マーグヌムが宙に舞いあがり、人々の頭の上を通りすぎて境屋の所まで飛んでいきました。
「これでください!!」
 ずいと、チケットを差し出します。
「ダメダメ。これは半券じゃないか。本券に交換してから持ってきてくれ。はい、次の人!」
ええっ……
 速攻で境屋に拒絶されました。蓬・マーグヌム、ぼーぜんです。というか、これ、予約券じゃありません。
「はい、予約していた物ください!!」
 そこへ、人波を強硬に泳いできた弥久佳宵がようやく辿り着きます。
「ほいよ、予約の弥久さんね。この4472の袋だ。お買い上げありがとうさん!!」
「確かに。さあ、蓬さん、帰りますよ!」
「は、はい……」
 しっかりと品物を確保した弥久佳宵を、蓬・マーグヌムがひしめく人々の中から拾いあげて、境屋を脱出していきました。
 その他の買い物も、手早く済ませていきます。
「迷宮肉も買ったし。さあ、急いで帰りましょう!」
「はい。いっぱい買ったので、今夜が楽しみですね」
 弥久佳宵と蓬・マーグヌムは、急いで家路へとつきました。

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