三千界のアバター

<スカイドレイク>地上教団の脅威

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<スカイドレイク>地上教団の脅威
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- 農地にて -

 大空を、船が舞う。
 船の帆を大きく膨らませ、交易船を大空へと飛びたたせる気流の下では、薄い大気に合わせて品種改良された麦たちが穂を揺らす。随分と季節外れな光景のようにも思えるが……これがニュートラファルガーの誇る麦栽培ギアの賜物だった。100年前と比べれば3倍とも5倍とも言われる現在の島内人口は、このギアなくしては決して成り立ちはすまい。

 そんな畑の傍で男が手を上げたなら、畑の中からは収穫作業用のギアを背負って仕事をする老人は、麦わら帽を上げて挨拶を返してくれた。
「この辺では、麦だけをお作りに?」
 男――ジェノ・サリスが老人に訊いたなら、戻ってくるのはこんな声。
「いんや、野菜類も作っとるよ。ほうれ、あすこに見えるじゃろ」
 なるほど老人の言葉のとおり、麦畑の先には葉を失った枝が天を指す木々の姿が見てとれた。オーク材はあるか、と尋ねるジェノ。
「悪ぃが、ここじゃ浮遊樹ばっかりじゃてな」
 ぶっきら棒に答えた老人の話によれば、大昔ならともかく現在島内で育てられている木材は、ほとんど飛空船素材である浮遊樹ばかりになってしまったようだ。飛空船製造のためには浮力を失う前に加工しなければならない浮遊樹と、主に家具などに使われるというオーク材。どちらが植民島任せにできない木かは、あえて説明するまでもない。
「じゃあ、」
 ジェノは訊く。
「オークの入手先について心当たりがあれば嬉しいんだが。俺は、異人の技を心得ていてね……植物を急成長させることができるんだ。耳寄りな情報を貰えれば、謝礼として使わせてほしい」
「こりゃあ大したもんだ……」
 ジェノが収穫を終えた畝の土に手を当てて、落穂からひと束の麦を育ててみせたなら、老人はぎょっと目を丸くして彼をまじまじと見つめるばかりだった。けれども、それからじっとジェノの目を見つめて。
「……けどな、そんなワケのわからん術、何が起こるかわかりゃせん。使わせるワケにゃいかん。……ま、オークの心当たりくれぇなら、幾らでもタダで聞かせちゃるわい」

 老人の瞳はどこか遠く、懐かしそうに彼方を見つめていた。
「俺にゃ、6人の兄弟がおってなぁ……」
 3人は若いうちに死に、残りの2人も老いてから死んだ。
「けど、5つ下の弟が、野良仕事なんてやってられん言うて、ドラゴンシーカーになっちもうた。偶に帰ってきたときにゃ、どこに冒険に行ったとかなんとか目を輝かして言うてくれとったが……ある時、そいつがお仲間さんと一緒に島を見つけたって言っとってのう。今はどうしちょるか俺ゃあ知らんが、そこでオークの木ぃ育てちょる言うとった。ま、ケビンの弟のピーター、ちゅうてギルドで調べりゃあ、きっとすぐに判るじゃろうて」

 老人の昔話に根気よく付きあい終えると、ジェノは市街地のほうを向く。
(なるほど、確かにギルドなら情報が集まりそうだ)
 丁寧に老人の下を辞し、歩みを進めることにしたジェノ。
 そんな彼がふと見ると……空港にほど近い市街地の一角が、何やら唐突に煙を上げはじめたようだった。
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