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雲龍世界探訪

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雲龍世界探訪
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- ニュートラファルガーは遠く -

 飛竜たちが原因で生まれた騒ぎも落ちついて、船内は再び談笑で満ちる。
 神楽のティータイムも同じく再開となり、カップを口に運びつつ周囲の会話に聞き耳を立てるが……あんな空戦があった後だからであろうか、やはり乗客たちの話題も、誰もが飛竜の話で持ちきりだった。

「しかしおかしな話だね。去年くらいに乗ったときには、飛竜の説明なんて受けなかったのに」
「おや、ご存知ないのですか? この辺りに飛竜が出るようになったのは、1ヶ月ほど前からなんだそうですよ」
「そんなに最近のことなのかい。近頃は人類滅亡の噂のせいで労働者たちは仕事が手につかないし、地上教団なんて輩も出てくるし、いったい世界はどうなってしまったのか」
「どれもこれも、ニビル彗星が見つかってからおかしくなってきましたね。案外、噂は本当だったりして……」
「はは、彗星に何ができると言うんだい。彗星が楕円軌道で太陽を回る天体のひとつに過ぎないなんてこと、現代では科学の常識というものじゃないか……」

(へぇ、なるほどね)
 神楽がずっと優雅な船旅を続けていたのは、まさしくこの会話を聞くためだった。
 世界が滅亡に向かっているのなら、そのきっかけはすでにどこかに現れていてもおかしくない。その参考になりそうな情報を、誰かが自分から語ってくれるだなんて。
 休憩タイムは一旦終了。神楽は淑女の皮を被って、彼らの元に話かけにゆく。
「興味深いお話ですわね。是非、詳しくお聞かせ願えるかしら?」



 そんな人々の談笑は、突如、大きなざわめきによって中断させられた。
 騒ぎの起こった中心を見れば、自分よりずっと大きな飛竜を引きずる、小さなカーバンクルの姿。
「異人じゃないか……」
「あの小さな体で飛竜を仕留めたのか……?」
 そんな人々に風の使霊の姿を見せて自分がやった証拠としながら、彼女は淡々と野次馬たちへと語りかける。
「初めまして、ルキナ・クレマティスと申します。皆さんの中に、生物学に詳しい方はいらっしゃいませんか?」
 すると、俺でよければ、という声とともに人垣をかき分けて、無精髭のだらしのない男が現れた。
「シテ大学歴史学部博物学科所属、ジョルジュ・ラマルク生物学博士たぁ俺のことだ。……って言っても誰も知らねぇか」
「おや、歴史学部、ですか?」
 ジョルジュが自嘲的に語った内容をルキナが他世界とも比べつつ解釈したところによれば、大沈降後に生物相を著しく欠いたこの世界では、生物学は『人類史に登場する厄介な隣人を知る学問』程度の非主流学問であるらしかった。もちろん病原生物等は医学部の管轄になるし、畜産は育成用のギアとセットで工学部で扱われるが、そういった花形とは無縁の世界だ。
 だとすれば……それはルキナにとってはまたとないチャンスであろう。何故なら未開拓な学術分野であるということは、この世界に詳しくないルキナにも入りこむ余地があるということなのだから。
「よろしければ……この飛竜を、ともに研究させてはいただけないでしょうか?」
「随分と物好きもいたもんだ」
 ジョルジュの顔は心なしか明るい。自分の研究が必要とされるだなんて、生涯、今まであっただろうか?
「つきましては……」
 言葉を続けるルキナの先手を取って、彼は慣れないウィンクをルキナに向けて格好つけた。
「入学したい、だろ? 推薦状を書くくらいなら安いもんさ」



 飛空船団の前方に、小さな点が見えてくる。それは次第に大きくなって、亀を思わせるずんぐりとした石龍島の姿を露にする。
『お客様にご案内を申しあげます。前方に、シテ・ヌーヴェル島が見えて参りました。長らくお付きあいいただいた旅路も、終わりの時が近づいております』
 伝声管を通じた船長の声が、ギアを通じて船内に響く。
 一時はどうなることかと思った空の旅。船内の各所で拍手と歓声が上がり、船団は次第に高度を下げてゆく……。
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