クリエイティブRPG

雲龍世界探訪

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雲龍世界探訪
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- 騒々しき憩い(1) -

 中央広場より左翼側に伸びたチャールズ・オールコック通り。
 いつでも人々の姿でごった返すこの街を最も特徴づけているものは、なんと言ってもドラゴンシーカーたちであったろう。
 良く言えば活気のいい、悪く言えば荒々しい彼らの活動時間は他の市民のように定まってはおらず、ゆえにこの街は昼夜を問わず、賑やかな喧騒に包まれるのだ。特に――ドラゴンシーカー・ギルド向かいの酒場、『フライヤーズ』は。



 工場街でひと悶着が起こっていた、その頃――。

「俺は今日付けでドラゴンシーカーになったジェイクだ。よろしくな!」
 互いに前回の冒険の戦果を大げさに自慢しあっていた男らが、武勇伝勝負を邪魔されたしかめっ面で声の主をふり向いた。にやりと不敵な笑みを浮かべてみせた新人、ジェイク・ギデスは、憎々しげな彼らの視線に怖気づくどころか、指先で意気揚々とレンチを回しながら彼らのテーブルに近づいてゆく。
「見てのとおりのアーティフィサーで、ギアの扱いに長けている。ギアの修理はお手の物、ギアの点検整備やちょっとした故障ならこの場で直せるぜ? 騙されたと思ってギアを見せてくれねえかい先輩がた?」
「ぶわっはっはっは! いきなり先輩の道具整備を買って出るとは、デキた新人もいたもんだ!」
「おう、だったら今すぐやってみな! ただし……オレの愛銃に1つでも傷つけたらタダじゃおかねぇ」
 望むところだ。一触即発の事態を予期した他の客たちが固唾を呑んで見守る中で、ジェイクの道具だけが小気味よくカチャカチャと音を鳴らす。手際のいい仕事をしやがって――ジェイクを甘く見ていた銃の持ち主も、次第に身をのり出して作業の終わりを心待ちにしはじめる。
「どうだい? 初めて扱うタイプの銃だったが、悪い整備はしてないはずだぜ」
「……みてぇだな。新人にしちゃぁ中々やるじゃねぇか」

 酒場内に、再び喧騒がよみがえった。気分を良くした先輩たち2人のジョッキに、ひとりの女性がエールをお酌して回る。
「はじめまして~、私も今日ギルドに入ったばかりの、葛葉 祓です~。お近づきの一杯をどうぞ~」
「なんだと?」
 男たちは互いに顔を見あわせた。それから注がれた酒と祓の顔を交互に見つめて、豆鉄砲でも食らったかのような表情を作る。
「おめぇさんみてぇな嬢ちゃんが?」
 東洋人の風貌が西洋人にとって幼く見えるのは、どうやらこのスカイドレイク世界でも同じであるようだった。むっと拗ねたような祓の顔をしばらく堪能した後で、ジェイクが2人と祓の間に割りこんでゆく。
「おいおい先輩がた。俺の嫁さんをそう苛めないでやってくれよ」
 え……人妻? 半信半疑の男たちを尻目に、祓も酒場のウェイターを呼んだ。そして何やら耳うちして注文したのは……男たちが飲んでいたのと同じ、エールの大ジョッキ。
「では、証拠をお見せしましょうか~? でも、それだけじゃ面白くありませんよね~?
 ところで僕、未踏の石龍島の情報を集めてるんです~。だから僕と賭けをして、僕が勝てたら情報くれませんか~?」
「どちらが多く飲めるか勝負、ってことか。なら……俺がやろう」
 男の片方が胸を叩いた。
「で……賭けってことは、嬢ちゃんが負けたら俺らに何かしてくれるんだろうな?」
「そうですね~……それでは、今日のお2人の食事代を全部おごる、でどうですか~?」
「だったら、俺らが出せるのは詳細不明のあやふやな情報までだ。それくらいなら飯代とつり合うが……それでどうだ?」

 そして……男は3杯めの途中でギブアップした。いかに男が屈強であろうとも、ジェイクが来る前から飲んでいた上に祓のお酌まで受けとった身だ。ただでさえうわばみな上に焦らすように一定のペースで飲みつづけた祓に敵うわけがない。
「それじゃ……約束どおり、耳よりな話をしてやろう。別に隠されてるワケじゃねぇんだが……新人は耳に入れる機会のねぇ話のはずだ」
 酔いつぶれた男の相棒はかく語る。
「ニュートラファルガーの南東にシテ・ヌーヴェル。シテの北東にノイエスアイゼン。
 けど……そのノイエスアイゼンのはるか北東に、『ノヴォルーシ』って島があるのは知ってるか? マナ技術もろくに発展してねぇ……だから、住んでるのは異人ばっかりだって話だ」
「俺たちで辿りつけると思うかい?」
 ジェイクが訊けば、男は肩を竦めて。
「やめとけ。大型交易船や軍艦ならともかく、新人用のオンボロ船じゃ途中で野垂れ死ぬのが落ちだ」


 ジェイクと祓が男たちとそんな話をしていると……にわかに『フライヤーズ』前の通りが騒がしくなるのだった。
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