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ラ・ベルメール ~再び出張出店の一日!~

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ラ・ベルメール ~再び出張出店の一日!~
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~魁 弾、禿山 拳、バレット・ファイアーの一日~

(テルスと違って、こちらは平和そのものだな)
景観や行き交う人々の服装や雰囲気、バザーで取り扱われている商品、奏でられる音楽――魁 弾は、そのすべてを興味深く感じていた。なにせ、普段は違う世界を主軸に活動している事が多い。彼にとってラクスの街は見るもの聴く物新鮮なのだ。
「そういえば禿山と出会ったのもアルテラだったか。どんな思い出があるんだ?」
「やれやれ……昔アルテラにおったというだけじゃよ」
弾に話を振られた禿山 拳は、ラクスの広場の石畳や、おおらかで陽気なムードを感じ、どこか懐かしそうに双眸を細めた。彼にとっては、戻りたくない過去である。が、同時に郷愁を抱かずに居られないのだった。一方、男二人が世間話をしている隣でバレット・ファイアーは静かに街の様子を観察していた。そして時折、ちらりと横目で弾の様子を眺めている。
(そういえば、魁さん。今日はどうしてこちらに来たんだろ? 微力ながら、お力になりたいよ)
すると、そんなバレットの気持ちを知ってか知らずか、弾がバレットのほうを振り返った。
「バレット、ちょっと剣と防具やアクセサリーみたいなのを一緒に探してくれや」
「うん、お手伝いするよ」
元々、バレットはアルテラ自体に興味も有るが、弾と行動を共にして彼と親睦を深めたいと考えていたのだ。
「禿山! ちょっとバレットと色々見てくるから後で合流しようぜ!」
「そういうことなら、ワシもバザーでもぶらぶら見に行くとするかの」
待ち合わせ場所を決めた三人は、それぞれ目的を果たすために別行動となった。



 露店には飲食物、骨董品、ガラス細工や小物、アクセサリーなどの装飾品がずらりと並べられていた。
どれも目移りする品ばかり。けれど、弾にとって一番重要なのは武具である。
二人はまず広場の向かい通りにある、武器や防具を扱う専門店へ足を運んだ。
アルテラの兜や鎧一式は、主にハードレザーが主流のテルスとは異なる。夢中になって装備を見ていると、バレットが高い位置の戸棚にある腕輪に気づき、ふと立ち止まった。どうやら装飾品のようだが、銀で出来ており繊細な細工が美しい。
「バレット、あれが見たいのか? どれ、肩に乗せてやる」
「えっ……!?」
バレットが返事をする前に、弾は小柄な彼女をひょいっと担ぎ上げてしまった。急に体が浮かびあがった上、弾の逞しい肩の上に乗せられたバレットは戸惑う。が、弾は気にした素振りはない。
「もう、私は子供じゃないよ! れっきとした20歳だよ。それに、無理に乗せないで、落ちちゃうって……!」
子ども扱いされたようで気恥ずかしい。バレットは頬を朱に染めて抵抗した。
だが、バレットを肩車をしたまま、弾は熱心に賞品を品定めしている。彼が余りに真剣な様子なので、バレットも暫くは身動きを止めるしかできなかった。


 
 やがて、存分に武具屋を見て回った弾とバレットは、広場へと戻ってきた。
「テルスか……。今日の夜にはワールドホライゾンに帰る予定がある。またテルス絡みだが、備えなきゃいけないしな」
弾はやはり、休暇中も緊張感は抜けきっていなかった。そんな彼にバレットは「娯楽の時間を持てない者は、遠からず病気に時間を費やすことになる」と伝えた。今はただ、楽しむ事が必要なのだ。
「あのお店で休憩していこうよ」
「ああ、そうだな。小腹も空いてきたところだし」
たまたまラ・ベルメールの出店の前に通りかかった二人は、そこで店主・レノの計らいにより、カップル席へと案内された。ステージからはやや距離があるが、寛ぐ分には良さそうである。シェアできるポテトフライやケーキを食べながら、二人は普段はしない和やかな会話を楽しんだ。
街を歩けば音楽が聴こえ、人々が微笑み、水上にはゴンドラが進む。穏やかな平穏に溢れた場所。
(弾さんとの、大切な思い出になったな)
バレットはコフィアのカップに口をつけ、正面の弾を見やった。すると弾も、同じようにカップを手に取ってニカッと笑う。
交わした笑みの数だけ、二人の親睦は深まっていくのだった。



 ――時間はあっという間に過ぎ、拳との待ち合わせの時間がやってきた。弾の目的のお土産は、レノがラ・ベルメールのてづくり洋菓子の詰め合わせを用意してくれた。その他には、武具店でバレットが見つけた銀の腕輪も含まれている。
 一方、目的が暇つぶし! と豪語した拳だったが、彼は彼なりにアルテラで充実した時間を過ごしていたようだ。両手に提げた紙袋の中には、胴着、櫛、歯ブラシ等の日常品のほか、天然ハーブ石鹸が大量に詰め込まれている。
「飲んだし食ったし、一年使い古した胴着の交換もできそうじゃ。満足いく買い物ができたわい。この石鹸も肌がすべすべになると売り子が言っておったしな」
……そのいい香りの石鹸で、少しは彼の変態臭も薄くなって欲しい。そんな事をバレットはこっそり思った。
「しかし、よくも悪くも、おおらかな世界じゃ。悪い事をしても逃げ切れる犯罪者も居れば、救われぬ子供達もおる。かといって、幸せに家庭を持つものもいれば、偉業を達成する者もいる。テルスとそう変わらんのかもしれんな」
 ラクスの外れにある小高い丘。心地よい風に吹かれ、三人は湖の街を一望しながら、次なる戦いへと想いを馳せる。
つかの間の休憩で得た記憶を、各々の胸に仕舞いこみながら。

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