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ラ・ベルメール ~再び出張出店の一日!~

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~信道 正義の一日~

 正午も過ぎ、午後も半ばに近づく広場は、ショー観覧目的の客で賑わいを見せる。勿論、飲食系の屋台は稼ぎ時でもあるが、ショーが始まった頃には既に買い物を終えた観客達がステージ周辺に集結し始めていた。
ラ・ベルメールの飲食スペースには、ちらほらと空席が出来始めた。食事を購入するには丁度良い時間帯と言える。
レノも少し手が空いたので、屋台で仕込みの確認をしたり、予備の紙皿の数を数えているところだった。そこへ、
「よぉ、席は空いてるか?」
「いらっしゃいませー! あっ、正義さん……ですねー?」
レノの元に信道 正義が訪ねてきた。彼は出張店の噂を聞き、忙しい合間を縫ってラ・ベルメールへやって来たのである。
「俺のこと、覚えてくれてたのか?」
「もちろんですー。ふふ、素敵な後輩さんのお話とか、わたしの知らない世界のことも沢山聞かせていただきましたからー。またお会いしたいと思っていたんですよー」
「そうか、それなら俺も足を運んだかいがあったよ。今日もレノのオススメをお願いしたい。頼めるだろうか?」
「はい、是非ー。お席にご案内しますねー♪」
レノに満面の笑顔で出迎えられ、正義も爽やかな微笑を浮かべる。
 正義は普段、世界を忙しく飛び回っている身だ。頭と心を空にし、ゆったり過ごせる場所は限られる。レノの店で過ごす時間を気に入った彼は、休暇を満喫したいと思っていたのだ。
そしてそれは、レノも同じこと。ラクスから出たことが無い彼女にとって、正義が話す冒険談はとても興味深いお土産なのだった。



 正義と会話する為に、レノも短い休憩を取ってテーブルについた。
「では、また正義さんは忙しくなるんですねー?」
「ああ、実はあれからも、アルテラのあちこちで小さな仕事は幾つか受けてたんだが……もしかしたら、また大きな話が舞い込んでくるかも知れなくて」
正義は紅茶を一口啜り、ポテトフライをつまみながら近況をレノに話した。
正義も、別件の為アルテラを訪れていた。けれど、状況が立て込んでくれば、次はいつ羽を伸ばせるか分からない。
「わあ、お疲れ様ですー。そんなお忙しい中、会いに来て下さったのは嬉しい事ですよー」
「ははっ、喜んで貰えて良かった。なにせ、今度は海を越えるのか、それとも山を越えるのかすらわからんくらいの話なもんで」
「やっぱりスケールが大きいですねえー。海や山……わくわくしてしまいますー」
レノは、正義の話にうっとり想いを馳せた。アルテラ内部とはいえ、ラクスから出ない彼女からすれば物珍しい話なのだ。
「俺はレノとは逆で、色んなところを回るせいで一つの場所に長くは留まらなくてさ。今日はレノの話も聞きたいと思って」
「わたしの話、ですかー?」
レノは、思いがけない申し出にぱちぱち瞬きした。まさか、自分の話を求められるとは思わなかったらしい。しかし、正義も冒険者といえ、ラクスの細部まで知り尽くしている訳ではない。現地に暮らす者の方が、街の特色や名所に詳しいだろうと思ったのだ。
「世界を救うため動くには、ちゃんとこの目で世界を見て回ろうかと……なんてな」
「それは素敵なお考えですー。わたしの話でよければー!」
レノは、正義に自分が好むスポットを話して聞かせた。
良く散歩に行く公園や好きな楽団がパレードをする大通りのこと、町外れの林にある、小さな湖のこと。綺麗な花が咲いている野原。
どれも日常の中にあるような、小さくて見落としがちな場所だ。
だが、正義はありふれた日常こそ、大切にしたいと思っていた。こんな平和な世界を守る為に、ずっと活動を続けているのだから。
「教えてくれてありがとな。今度はレノの好きな場所にも行ってみるつもりだ」
「はい。わたしも今日はとっても楽しかったですー」
他愛も無いおしゃべりに花が咲き、気がつけばテーブルの料理は空になり、ステージも終わっていた。

 正義とレノの間には、また新しい約束が生まれた。
きっとその約束が、次の再会の道しるべとなってくれることだろう。

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