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ラ・ベルメール ~再び出張出店の一日!~

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第二章 再び出張出店の始まり! その2

~キョウ・イアハートとマリアベル・エーテルワイズの一日~

太陽が空の中心へ昇る。いよいよパフォーマンスショーも中盤に差し掛かろういていた、その頃。
「いらっしゃいませ! お待ちしておりましたー、キョウさん」
「ああ。ようやっとたどり着いたよ」
 ラ・ベルメールの出店にキョウ・イアハートが訪れた。レノはキョウを手招きし、笑顔で出迎える。キョウはレノに軽く会釈をした後、額の汗を拭って穏やかに微笑んだ。
「お会いできて嬉しいですー」
「こちらこそ。噂はかねがね。本当ならもっと早くに寄ってみるつもりだったんだがな」
「わたしも、お話はマリアベルさんからお伺いしておりましたー」
実は、本日キョウがラ・ベルメールに足を運んだ理由は、店を訪問する以外にもう一つある。妻であるマリアベル・エーテルワイズのステージを観賞する事だ。
「うちの奥さんが、世話になってるみたいだな」
「とんでもないです。マリアベルさんにはいつも素敵なステージを披露していただいて、感謝していますー」
「俺も今日のステージは楽しみにしているんだ。店主、オススメのケーキと、コフィアを注文したいんだが」
「かしこまりましたー」
レノはマリアベルとの思い出話をしながら、キョウの為にケーキを見繕う。
「へえ、どれも美味そうだな……。コイツの上に載ってるのは飴細工か?」
「はい、当店のオリジナルなんですよー」
落ち着いた大人の雰囲気が漂うキョウだが、実は甘い物へのこだわりが強い。レノとは菓子の話題だけでも充分に盛り上がった。
「お席はこちらですー」
飴細工の載ったティラミスとクッキー、砂糖漬けされたフルーツを盛った皿を受け取って、キョウは案内されたテーブルについた。
「こんな良い席を俺に? まさか用意していたのか?」
「勿論ですよー」
キョウは、中央ステージを良く見通せる特等席へと案内された。レノはテーブルにコフィアのマグカップを置いて、にっこり微笑む。
マリアベルは、これまでもラ・ベルメールの為に力を貸してくれていた。レノにとっても、彼女は恩人であり大切な存在である。
レノはマリアベルの夫であるキョウにも、感謝の気持ちを伝えたかったのだ。



「レノさん」
「マリアベルさーん」
 もうすぐ、パフォーマンス本番が始まる。身支度を整えたマリアベルが、ステージ脇にいたレノの元へ駆け寄ってきた。
「お店が忙しい中、様子を見に来てくれたんだ?」
「はいー。マリアベルさんも、会いに来て下さってありがとうございますー。ステージの前なのに……」
「ううん、こちらこそ。どうしてもお礼が言いたかったんだ。レノさんに頂いたフルーツタルト、とても美味しかったから」
「わぁ、良かったですー。喜んでいただけてホッとしました!」
マリアベルは以前、友人を通してレノからフルーツタルトを受け取っていた。だが、味の感想は伝えられなかったのである。
「今日のステージも、ここから観ていますねー」
「うん、行ってくるよ」
名残は尽きないが、観客を待たせる事は出来ない。
沢山の人の前で。そして大切な人の前で、マリアベルはパフォーマーとしての輝きを魅せるのだから。
 マリアベルが舞台に上がると、観客達から自然と拍手が湧き起こる。抑え目で大人しいメイクだが、それが返ってマリアベルの凛とした表情を引き立てている。彼女の胸元には、キョウからの贈り物の【ネックレス】が揺れていた。マリアベルにとって、どんなアクセサリよりも大切で、かけがえのない宝物。
(緊張しちゃう……けれど、それ以上にとっても嬉しいし、楽しみだな)
陽光の下、純白のドレスを纏った奏者は、静かにヴィオラの弓を弾いた。
「わぁ!」
「綺麗ね……」
 牧歌のように優しく。明るく軽やかなメロディーが広場に響き渡る。マリアベルの【上弦の月】の音色は、暖かい雰囲気に溶け込みながら、華々しいステージの幕開けを知らせた。
アルテラではポピュラーな民謡や、歌曲として知られる流行の曲など、聴く者の耳を飽きさせない演目が続く。
集まった聴衆は大人も子供も、性別も関係なく、マリアベルの奏でる音に夢中になっていった。
(……キョウさん)
 やがて、マリアベルのステージは最高のクライマックスを迎える。
ゆったりとしたリズムで奏でる、ロマンティックなジャズワルツの旋律。そこにマリアベルの甘く清らかな【魅惑の美声】が載せられて、聴衆へ行き渡る。
(ああ、ステージに立つ彼女は、いつもより輝いて見える――)
マリアベルは、正面からじっと自分を見つめるキョウの瞳を見つめていた。
 否。実際は、視線は交わっていなかったのかもしれない。けれど二人は確かにお互いだけを見て、お互いの心の声を聴いていた。
ありったけの想いを込めてラスト・ソングを唄ったマリアベルを、満開の拍手が包み込んでいる。
(甘いもんに舌鼓しながら、演奏を楽しむ。こんな贅沢な休みはそうそう取れはせんわな? マリアベル。――ありがとう)
 キョウは喝采の中央に立つ美しい妻の姿を誇らしく思い、また心から愛おしく感じていたのだった。

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