三千界のアバター

ラ・ベルメール ~再び出張出店の一日!~

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~山内 リンドウのステージ~

 ラクスの広場に集った人々の中には、パフォーマンスショーを心待ちにしている観客も多い。広場の中心に簡易ステージが設置されており、この舞台上で有志が自慢の歌唱や演奏を披露するのである。
山内 リンドウは、今回のステージのトップバッターを飾る事になっていた。
(緊張もありますけれど、せっかくの機会ですもの。ステージに立ちますわ!)
華々しいイベントを彩るオープニングステージだけあって、リンドウも気合い充分だ。
清楚な【聖唄隊の制服】を身にまとい、【麗しき青姫のスカーフ】を首元に結ぶ。蒼く上品なフリルとしつらえが、リンドウの凛とした美貌をより惹き立てていた。身だしなみを整えるのも、舞台に立つ者の当然の嗜みである。
観客達がステージ前へと集まってくると、リンドウは、【令嬢の嗜み】により丁寧な態度を心がけた。
「皆様、ようこそお越しくださいました。どうぞ、わたくしのステージを心ゆくまでお楽しみ下さいませ」
上品な微笑みを浮べ、カーテシーで礼儀正しい挨拶をする。
舞台から投げられた【Mignon Violet】の花びらがはらはら舞い落ちると、観客は拍手と歓迎の指笛でリンドウを出迎えたのだった。
 まずは、リンドウ得意のリュート演奏だ。バックで楽を奏でる楽隊とともに、リンドウが【惑いのリュート】を弾く。細い指先が軽やかに柔らかく、一音一音を紡いでいった。
リュートはそれ程大きな楽器では無いので、華奢な女性でも扱いやすい。音色も繊細で控えめだ。しかしそれが周囲の演奏と調和して、聴衆を包み込む心地よさを生み出している。
「綺麗……」
広場の隅々を満たすリュートの調べに、観客はうっとりと聴き入っていた。
一曲演奏が終わった所で、いよいよリンドウの真骨頂である。
「わあっ」
「見て、上……!」
観客の視線を一身に浴び、リンドウは【空中戦闘】の技術を活かしてステージ上空へ飛び上がった。
「皆様を、つかの間の夢のひとときへご案内いたしますわ」
雲ひとつない蒼空に、灰色の両翼がはためく。リンドウは楽隊のメロディーに体をゆるやかに揺らして、【静かなる円舞】を舞い踊った。
パフォーマンスは舞台上だけのモノではない。空の上でも大地の上でも。踊り子が舞う場所こそ、ステージに違いないのだから。
観客達の歓声や熱気に応えようと、リンドウは【愛の唄】を唄う。
「温かい声……」
「ええ……。胸に沁み込んでいくみたい」
洗練された円舞と、伸びやかで優しい唄声――リンドウのパフォーマンスは、観客の目と耳を捉えて離さなかった。
飛翔しつつ舞い唄うのは、気力と体力を消耗するもの。けれど、リンドウはすべてのパフォーマンスに妥協はしなかった。
 彼女が舞台へ再び下り立つと、観客からは感嘆の入り混じった溜息が零れる。
「……舞台の幕引きに、わたくしからのささやかな贈り物ですわ。よければ飾ってくださいませね」
夢の終わりに【Mignon Violet】の花束を放り、舞台の幕を降ろしたリンドウ。
色鮮やかな花束を抱きかかえた一人の少女は、いつまでもステージの上のリンドウへ、羨望の眼差しを送っていたのだった。

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