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ラ・ベルメール ~再び出張出店の一日!~

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ラ・ベルメール ~再び出張出店の一日!~
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~猫宮 織羽、猫宮 ミルク、遠近 千羽矢、ディセンバー・ノースの一日~

「レーノーさーん! お疲れさま! 今日は遊びにきたよーっ」
聞き覚えのある明るい挨拶を聞き、飲食スペースのテーブルの上を片付けていたレノは、ぱっと後ろを振り返った。
「織羽さんー。皆さん、お久しぶりですー。……またお会いできるなんて……!」
レノをわざわざ訪ねてきたのは、猫宮 織羽リルテ・リリィ・レイネッセ猫宮 ミルク遠近 千羽矢ディセンバー・ノースの五名だ。
「お久しぶりですわ、レノ様。お元気そうで何よりです」
「リルテさんも……! はい、おかげ様で元気ですよー」
「暑さでばてないように気をつけてね。こまめに水分補給だよー」
「わっ、おいしそうですー! ありがとうございますー。休憩時間にいただきますねー」
レノにとっては、織羽、リルテ、千羽矢、ディセンバーは最早知り合いの枠を越え、親しい友人のような感覚だ(ミルクとは初対面だが)。出張店舗での手伝いに、店のステージの応援、店舗に遊びに来てもらった思い出もある。レノもまた、彼女達に再会できる日を楽しみにしていたのだ。
織羽から【トライアルパイ】を、リルテからはマルムの果実のジュースを受け取ったレノは、額の汗を拭い頬に喜色を浮べた。
忙しい時分に、二人のさり気ない気配りは有難い。

 本日の目的はみんなでバザーを見て回ることだが、折角馴染みの店に来たということで、まずは食事をすることになった。
「んっと、わたしバザー見たい! 猫用グッズが買いたいのー。あと贈り物も」
「バザー楽しみですぅ。でも、まずはごはんを食べるのですねぇ。とくいしゃになったから、いろんなものが食べられてうれしいですぅ」
レノは、気軽に食べられる軽食のサンドイッチ、コフィア、ココアを用意して五人を手厚くもてなした。ミルクはその愛くるしい容姿どおりに、両手でサンドイッチをきゅっと握り、もぐもぐと夢中で頬張っている。
「バザーか。……アルテラは。小物も、お洒落なものが……多いから。……見ているだけで、楽しそうだ」
千羽矢は、以前この店で出店を手伝った日の事を懐かしく思い浮かべながら食事を摂っていた。彼もバザーを見て回るのに依存は無いようだ。
「あの……」
そんな中、リルテは正面に座っているディセンバーに一度目線を送ったが、ディセンバーはどこか気が乗らなそうな素振りである。
「……ッたく、俺ぁ買いモンなんざ興味ねェってのに……」
口では不平を漏らすものの、ディセンバーは恋人の望みを無碍にするような男性ではない。彼女が口に出さなくても、できるだけ願いを叶えたい気持ちはある。
「へーへー。わぁったわぁった、付き合ってやンよ、マイレディ」
 こうして、食事を終えたメンバーはそれぞれバザーで買い物を済ませる事に決まったのだった。



「ここがアルテラだよ。わたしが一番最初に来た異世界。大好きで……大切な人たちがいる世界」
 ミルクとピッタリ寄り添って、織羽はアクセサリー露店をめぐっていた。話すのは、織羽の大好きなアルテラのことだ。
このラクスを含めて。ここであった様々な出来事、出会った人たちとのこれまでを振り返りながら。そして、恋慕う人の顔を想い浮べながら……。
「織羽ちゃん、大好きな人がいるんですねぇ。……想いが叶うといいですねぇ」
「ふふっ、ありがとう、ミルクちゃん。ね、聞きたかったんだけど、わたしのパパとママは元気にしてる? わたしがいなくて、さみしかった? わたしはすごくさみしかった。ずっとミルクちゃんに会いたかったよ」
初めてのバザーにはしゃぐミルクだったが、織羽の話には真剣に耳を傾けた。そして、大切な織羽のために懸命に言葉を紡ぐ。
「パパもママも、元気にしていますよぉ。織羽ちゃんがいないことは、なぜか家族みんなそのまま受け入れていました。ミルクは、いつもみたいにリビングでポカポカお昼寝ばかりしていましたぁ。でも、なんだかずっとさみしかったのは……織羽ちゃんがいなかったからだったんですねぇ……」
でもこれからは、寂しさも喜びも、二人で共有することができる。
ミルクが嬉しそうに体をすりよせ甘えた素振りを見せると、織羽も喜びと愛しさを込め、ミルクをぎゅっと抱きしめたのだった。



一方、【浅緋】を肩に乗せて、雑貨を見て回っていた千羽矢は、織羽と猫の肉球談義で盛り上がっていた。
ぬいぐるみやポストカード等、猫好きにはたまらない出店もある。その度に微笑み合い、購入するグッズの相談をした。
買い物途中でミルクが「うにゃー!」と主張したので、織羽が『羽のねこじゃらし』を購入した。千羽矢はそんな二人の微笑ましいやり取りを眺めつつ、どこか機嫌の悪そうなディセンバーの様子が気になっていた。
 ディセンバーはリルテと手を繋ぎ、出店を見て回っている。だが、その様子が少し刺々しいように千羽矢には感じたのだ。怒っているワケではなく、何処となく沈んでいる様にも見える。
「ディス様。織羽が呼んでいるので、少し離れても宜しいでしょうか? 後、少し買いたい物があって」
「いいンじゃねェの。欲しいなら買ってこい」
「はい……」
傍にいるのにも関わらず、リルテは彼が不機嫌そうなのが引っかかってしまった。
無理につき合わせてしまったかも……自分を反省しつつも、直接ディセンバーに訊ねる事ができなかった。
(チッ……)
ディセンバーはしょんぼりと離れていったリルテを見送り、そっけない素振りを取った自分に対して舌打ちをする。
そして、偶々傍の露天に並んでいた指輪に吸い寄せられるように眺めていた。その様子に気づいた千羽矢が、声をかけてみる。
「……ディスは。リルテさんと……結婚、しないのか?」
「……あァ?」
「……あ、いや……深い意味は、なくて。……さっきから。ずっと、指輪を見ているから」
 千羽矢にとってはごく当たり前の疑問だったが、何気ない一言にディセンバーの表情にが強張る。ディセンバーは今にも掴みかかる勢いで千羽矢に詰め寄り、睨みつけた。
「……俺ぁお前らみてェに『好きだから結婚する』とか思えるほど、脳内お花畑じゃねぇンだよ」
そこからは、抱え込んできた胸の靄を払おうとするかのように、ディセンバーが想いを吐露し始める。
(大体何だ、どいつもこいつも結婚結婚って)
「結婚して何が変わる。変わらねェなら結婚しねェでいいだろ。孤児の俺にまともな家庭なんざ作れるワケがねぇンだからよ」
「……そうやって。悩む、という事は……嫌じゃないんだな。……結婚」
「……ッ」
千羽矢は、眼光に追い詰められてもその場からは逃げず、ディセンバーに向き直ってはっきりと意見を述べた。
「君は……本当に嫌な事なら。悩まず、切り捨てるだろう? ……妥協しない。折れたり、しない」
ディセンバーはきっと、リルテとの結婚を避けている訳では無い。ただ、自分の心を納得させるだけの理由が欲しいのだ。
「……チッ、クソガキの分際で偉そうな口利いてンじゃねェ!」
声を荒げ、投げやりな態度で千羽矢の足を蹴ったディセンバーは、再び指輪を置いてある露天へ戻っていった。
「……すみません。この、桜の模様の……オルゴール。……いくらですか?」
 ディセンバーと別れた千羽矢は、大切な妻への贈り物に相応しい一品をお土産として購入していくことにした。



 その頃、リルテと織羽は二人で仲良く相談し合いながら買い物をしていた。織羽が片思いする大切な人への贈り物を選ぶと言うので、リルテがアドバイスをしたのである。
「えへへ……」
美しい青の刺繍糸の入った袋を抱きしめ、織羽は頬を薔薇色に染めて微笑んでいた。
一方、リルテは織羽に付き合いつつ、自分用にと夏にぴったりの純白のリボンを購入していた。リルテの艶やかな髪に良く似合う品だ。
 それぞれ買い物を果し、五人の休日は充実したひとときとなったのだが、リルテはどうしても、ディセンバーのことが気がかりでならなかった。
(……ディス様、チハヤ様と何か言い争っているようでした……。少し様子がおかしかったのが心配です……)
リルテが時折ディセンバーを気にしていたように、ディセンバーもまた、リルテの様子をじっと見つめていた。それは彼の上着ポケットに押し込められた、紙袋が原因である。
(……あぁ本当、らしくねェ。何してやがる、俺は……)
 只一人、この世界でもっとも大切な女性の為に選ばれた、青冷石のシルバーリング。それは未だ、ディセンバーの心の内側に仕舞いこまれている。

 しかし、この指輪を選ぶ際、彼が思い描いたリルテへの笑顔は本物だ。いつか二人の幸福な未来は、現実になる日が来るに違いない。

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