三千界のアバター

ラ・ベルメール ~再び出張出店の一日!~

リアクション公開中!

ラ・ベルメール ~再び出張出店の一日!~
リアクション
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11  Next Last


第一章 再び出張出店の始まり! その1

~西村 瑠莉と京・ハワードの一日~

 ――木漏れ日が降り注ぐアルテラ・ラクスの広場。本日は、ラ・ベルメールの出張出店日だ。
「しがない唯のメイドですが、お手伝いをさせていただきますね」
「いいえ、そんな。こうして瑠莉さんに再会できて、お手伝いまでしていただけるなんて……嬉しいですー」
「こちらこそ。こちらの品は、私からの贈り物です。受け取って下さいませ」
「……素敵……。ありがとうございますー!」
西村 瑠莉に【高級ティーセット】のお土産を差し出されたレノは、パッと顔を輝かせた。
 レノと瑠莉はステージを通じて知り合って以来、交流を深めている。瑠莉の楽器演奏や舞には、洗練された美が宿っていた。
ステージを華々しく飾るのもメイドの嗜み。しかし、元来瑠莉の十八番といえば給仕なのだ。また、今回レノの助っ人を務めるのは瑠莉だけではない。
「少しでも笑顔で楽しい一日をみんなが過ごせるように頑張ります。お二人とも、本日はよろしくお願いします」
温かい奉仕の心を持つ京・ハワードもその一人だ。
「京さん、本日はよろしくお願いしますー」
「ええ、任せて下さい。お店を盛り上げる為に、精一杯お手伝いしますね」
「はいー。お二人が居て下さって、とても心強いですー」
京は、持ち前のおおらかさと優しい笑顔でレノに親しみを与えている。
優れた給仕能力を持つ瑠莉と、ボランティア精神旺盛で働き者の京。頼もしい二人に支えられ、レノの出張出店の一日が始まった。



「すみませーん、注文お願いします」
「かしこまりました」
「お姉さん、こっちも!」
「はい、少々お待ち下さいませ」
【紫煌天衣】の和風メイド装束を纏った瑠莉は、【雨斬】で軽やか且つ優雅に移動する。ラ・ベルメール専用の飲食スペースで待つ客への対応を迅速にこなしていった。
 これだけ大規模なイベントだ。客の中には苛立っていたり、気が昂ぶっている者もいる。やや不機嫌な客に対しても、瑠莉は【令嬢の嗜み】により礼儀正しく、丁寧な態度を崩さなかった。
顔には常に微笑を浮べ、メイドとしてそつのない完璧な接客を心がける。これこそ、メイドとしての瑠莉の心得えだ。
「チッ、何処にもないじゃないか……」
「お客様、宜しければこちらで処分させていただきます」
「お、そうか、それじゃあ頼む」
また、瑠莉は【コールドリーディング】により常にラ・ベルメール周囲の客に細かな目配りをした。
ゴミ箱を探している男性に声をかけ、代わりに処分品を回収したり、道に迷っている女性には【癒し系ナビゲート】で親切に道案内をしたり。とにかく一秒の無駄も無く、てきぱきと働く。
どんな些細なことでも、相手が誰でも。
この場の来客すべてに楽しめる癒しの時間を提供することを念頭に入れ、メイドとしての手腕を遺憾なく発揮していた。

 瑠莉が来客に寄り添い、親身な接客をしている頃。
「だいじょうぶ? 怪我したの?」
「う、うん……」
京は店先で涙ぐむ幼い少女を見つけ、優しく声をかけていた。
「ちょっとすりむいただけですから」
少女の父親の話によると、ラ・ベルメールの出店に寄ろうとした矢先、人にぶつかって転んでしまったのだという。
「でも、念のために救護テントの方へ行きましょう。ご案内します」
「ありがとうございます」
少女の膝は薄っすら血が滲んでいたものの、幸いにも軽傷のようだ。京は少女の膝に濡らしたハンカチをあて、彼女の父親と共に救護テントへ向かう事にした。
「ラ・ベルメールにお立ち寄りになる予定だったんですか?」
「はい、噂には聞いていたんですが、まだ足を運んだ事がないもので……」
「是非、お嬢さんの手当てが終わったらいらしてください。お待ちしていますね」
京は二人とテントへ向かう道中も気さくに会話を続けた。勿論、ラ・ベルメールの話題も織り交ぜながら。
(レノさんの為に、お店の評判も上げていきましょう)
けれど、押し付けがましい宣伝はしない。逆に悪い印象を与えかねないからだ。持ち前の明るさと笑顔で、気持ちの良い会話を心がける。
救護テントへ案内された父と娘は京に礼を述べ、必ず店に寄ることを約束してくれたのである。

 瑠璃と京、二人の働きでレノの出店は盛況となった。
「はい、どうぞ」
「わぁ、お花だぁ。おねーちゃん、ありがとー」
「ふふっ、どういたしまして。私が育てたお花なんだよ」
「だからこんなに綺麗なんだね!」
京は、出店で売り子をしつつ、買い物や飲食終わりの客に【陽だまりの花束】を贈った。
(この一輪のお花さんを贈る事で、少しでも世の中に争いがなくなればいいですね)
京の祈りがこもった花を受け取った人々は、老若男女問わず皆笑顔になり、満足そうに店を後にしていった。彼女の優しさが届いた証拠に違いない。
(良かったです。みんな笑顔で過ごしてくれて♪)
 京にとっての喜びは、ラ・ベルメールの手伝いができた事だけではない。多くの人達を幸福な微笑みで満たせたことだ。胸が温まるような誰かの笑顔が、京にとって何よりの幸せに違いないのだから。

「追加の食材は、どちらにお運びすればよいでしょうか?」
「はい。店主が手を離せない為、代わりにご対応させていただきます」
 京が表に立っている間は、瑠莉が裏方としての役目をこなす。彼女には【行商人の交渉術】が備わっているので、商いに関する知識や対応力も身についているのだ。
「貴方は、あちらのテーブルのお客様に配膳をお願いします」
「はっ、はい、わかりました!」
また、ラ・ベルメールの臨時アルバイト数名に対しても、瑠莉がレノの代役として指示出しを行った。
(皆様の安らかな静寂に寄り添う一輪の華として――)
 給仕は店の顔のひとつ。つまり、給仕の二人が最高のパフォーマンスをしてくれる事こそが、ラ・ベルメールの評判上昇に繋がっていくのである。

1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11  Next Last