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【八賢士伝】世界を知れ【第1話/全6話】

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【八賢士伝】世界を知れ【第1話/全6話】
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〈プロローグ〉


 最上駒子の案内によって亜羽和瑳長安寺を訪れた特異者たちの前に現れた住職の淳泰は、穏やかな表情で合掌した。
「私はこれより久留里城へ向かいます。よろしければ、皆様もご一緒にいかがですか?」
 すると、駒子は右手を挙げ快活に答える。
「住職様、お城で領主様にご挨拶もしたいですが、皆さんを城下町にもご案内したいんですっ」
「ああ、それは名案ですね。国を知るには、その礎を知るのが最良ですから。では、二手に分かれましょうか。お城に上がる方々と、城下を見物される方々と……」
 そこまで言って、淳泰ははっとして言葉を止めた。
 彼の視線の先には、境内でのびのびと遊ぶ子供たちの姿がある。
「久々の登城で客人を連れてとなると、今日は長居になるかもしれませんね……あの子たちの留守をどうしたものか……」
 顎先に手を添え思案する淳泰に、世良 潤也が声を上げた。
「だったら俺たちに任せてくれ! 子供たちだけになったら心配だからな、淳泰さんが出掛けてる間、俺は子供たちとその辺の農村を散策してるぜ」
 すると、潤也の隣にいたアリーチェ・ビブリオテカリオも、小さく溜め息を吐きながら
「まったく、しょうがないわね……あんたたちだけじゃ心配だから、あたしもついて行ってあげるわよ」
 と言う。
(聞いた話だと、厄介な呪幻死獣や呪幻死兵がいつ現れるか分からないって言うじゃない……あの子たちを守ってあげないと)
 潤也とアリーチェの優しさは、力無い子供たちを守りたいというその一択に向けられていた。
「何と……異国の英傑があの子たちの傍にいて下さるなら心強い。どうぞよろしくお願いします」
 淳泰は潤也とアリーチェに深々とお辞儀をする。
「それじゃ皆さん、住職様の憂いも晴れた事ですし、早速それぞれの目的地に向かいましょうっ!」
 独りで先行調査をしていたせいで同じ特異者が恋しかったのか、駒子はえらく上機嫌だ。
 彼女の勢いに半ば押し出されるような格好で、特異者たちはそれぞれの目指す場所につま先を向ける……。

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