三千界のアバター

ユグドラシル

【シグトゥーナ】世界喰い 第三話

リアクション公開中!

【シグトゥーナ】世界喰い 第三話
リアクション
1 | 2 | 3 | 4 | 5  Next Last

 
 第10話 その国に伝わる話
 
 
「グローア、ぬしはネルトゥスのところへ行きやれ。何ぞ厄介ごとのようよ」
「ええ? いいけどゲヴンは?」
「竜達が呼ぶゆえ、行ってまいる」

 そんなやりとりの後でグローアは、ゲヴンの指示に従ったことを死ぬ程後悔した。
「……って洒落じゃないっつーの……」
 全身から流れ出る大量の血を見て、グローアは溜息を吐く。傾ぐ体が支えられた。
「てめ、何でこんな所に来てやがる!」
「はあ? 何言ってんのよこのボンクラ……。いいからさっさと、何とかしなさい…………」
 その手の主が無傷で生きていることを確認して、とりあえずグローアは良しとした。
 自分の死も、無駄にはならなかったようだ――





◇ ◇ ◇





 リズ・ロビィはギヴタを訪ねた後、桜・アライラーらと共に樹海に向かうことをせず、そのまま王都に留まった。
 前回の会話だけでは不明瞭なことが多かったからだ。
 そこで更に情報を得る為に再びギヴタを訪ねた。

「そもそも『勇ましき方々』って何さ?」
 根本的なところを訊ねる。
 ギヴタはリズがヘルヴェルに会ったということでその辺の話は知っているのだろうと思っていたのだが、問われて改めて、神と神に造られた者達の、この世界のあらましをざっくりと説明した。
「『勇ましき方々』というのは我々人間があの方々を指して呼んだものですので、当人は違う呼び名だったかもしれませんね」
「じゃあガムラ・ウプサラっていうのは……」
「それはこの都の名に始まり、この国の名のことであり、王家の方々を指す呼称です。
 この国の祖となったフェルニルは戦いの中、戦場となったヴァニルの街より、ひとつの輝力柱と共にこの地に弾き飛ばされたのだといいます。
 この城は輝力柱を軸として造られ、それを中心にこの都は作られました。
 この都は、この世界で今確認されている、最も強い輝力柱に守護されているのです」
「つまりこの王家って『勇ましき方々』との混血なんさ?」
「その通りです」
 リズは考え込む。
「……それで『猛き方々』の方はその後どうなったんさ? それに、竜は……」
『勇ましき方々』は戦いの中で死に絶えたようだが、『猛き方々』と呼ばれる者は違うようだ。
 訊ねるとギヴタの表情は沈んだ。
「彼等はその後、人間と相容れることはできませんでした。
 元々の気性の激しさと、人が彼等を恐れたが故でしょう。功勲(いさおし)を伝え残さなかったせいで、彼等の功績を人々は忘れてしまった……。
 勿論私達は彼等を迫害するような真似はしませんし、この都では彼等の存在も普通に受け入れられています。
 けれど、全ての地で、というのは難しいですね……」
 リズは首を傾げた。
 今も当たり前に存在し、けれど多くの場所で迫害されている――
「ウルヴヘズナルのことさ?」
「はい」
 勿論、とギヴタは頷く。
「じゃあ竜は」
「全ての竜は、世界の崩壊を食い止める為の礎になったといいます。詳細はわかりません」
 つまり、今この世界を崩壊しようとしているあの“蝕”を塞ぐには、同程度の力を必要とする、ということなのだろうか。リズは思案にくれる。
「竜についての伝承が残ってたりはしないさ?」
「この国の記録にはありません。
 ……後のフェルニル王は、『勇ましき方々』と比べては力劣りながらも、竜と共に戦い、それを後々まで誇りとしました。
 この国では今も、龍騎士という称号が最高の栄誉とされています。竜が存在しない今、中身の無いただの名誉称号ですが。
 ヘルヴェル様は祖先が竜と共に戦う伝説を特に気に入っておられ、ずっと龍騎士の称号を得ることを夢見ておられました。
 王がヘルヴェル様の剣の師ブロウズより一本取ることができたら、と条件を与えましたところ、その日の内に一本取りまして」
 え、とリズはその話に目を丸くした。
「……それって、もしかしてわざと……」
「そうなのでしょうね。ブロウズは沈黙していましたが」
 ギヴタは微笑む。
「ともあれ条件は満たしましたので王は龍騎士の称号を与えましたが、流石にヘルヴェル様も解ったようで、勝った内には入れていないようですよ」
「……」
 もしも今に遺る竜の伝承があるのなら、と思っていたリズの当ては外れた。それを参考にすれば、何かこの世界を救う手掛かりを得られかもしれないと踏んでいたのだが。
 けれどそれとはまた別に、話を聞きながら、リズの心は重くなっていった。
『勇ましき方々』も竜も、今は彼方の存在だ。死に絶え、今やこの世界には居ない。けれど今、無理矢理掘り起こしてまでそれらに頼るしか策が無いのがもどかしかった。
 何とか、今を生きる自分達にできることは無いのだろうか、と。
 
 
1 | 2 | 3 | 4 | 5  Next Last