■プロローグ■
「さあ! 温泉里として久しぶりの仕事だ! みんな、頑張ろうな!」
イサミが威勢よく言う。
その相手は里の老人たちだ。
イサミひとりきりで里を切り盛りするつもりは毛頭なかった。
もちろん里のただひとりの若者として積極的に動くつもりではあるが、老人たちの手も借りていく。
「お土産ものの人形、できてるよ!」
「温泉饅頭も蒸しあがってる!」
「前にイサミが作れないか聞いてきたカラクリ箱、試作してみたんだけどどうかね?」
老人たちも若返ったかのように生き生きしていた。
老人にはイサミのような体力はないかもしれない。
しかし、その過去に振るった手腕を駆使して里のために貢献してくれている。
例えば、土産物や食べ物、案内図を作ったり、店番をしたり。
「みんなで温泉里としてのこの里を取り戻そう!」
えい、えい、おー! と老人たちが意気込んで笑う。
さあ、ヒノキの香り漂う、古くて新しい温泉里、秋桜の里の再出発である。