≪1≫『襲撃役』(難易度5))
ファイバーカイトを背負った
青井 竜一が地面を蹴る。彼は襲撃者であることがわかりやすいように幻獣の一角と傾奇隠形を見に纏っている。
「上の階ならまだ大丈夫。そういう油断が危うい……なんてな」
校舎の屋上に到達した青井は、施錠されていた扉に妖鍵千変万化をカギ穴に差し込んだ。
◇◆◇
どう攻めたものかと考えていると、一番近くにあった三年四組の教室から物音がする。筆箱か何かが落ちたような軽い音だ。
青井は足音を潜めてその教室に近付く。
とはいえ相手は一般生徒だ。多少のハンデは必要だろう。青井は扉をノックして来訪を伝える。。
「ひっ」
青井は胸の中で三十秒のカウントダウンを始める。中の態勢を立て直す猶予を与えたのだ。
(3、2、1……)
ガラリ、と勢いよく扉が開いた。
大粒の涙をためた女子生徒が、震える手で銃を構えている。
女子生徒は目をつぶって引き金を絞ろうとする。だが、銃弾はいつまでたっても発砲されない。
それもそのはずだ。セーフティーが外れていないのである。
青井は女子生徒に勝算がないと判断した。ディシプリナ・マナーで彼女の後ろに回り込み射程範囲内から外れる。
「や、あ、嘘……っ」
インクを塗布したアラドヴァルを背後から振るう。
「今、君は死亡した」
青井の宣言に腰が抜けたようで、女子学生はへなへなとその場にしゃがみ込んだ。
「勇気と無謀は違うぞ」
青井がぽつりと漏らした言葉に、生徒の一部が耳打ちで何かを囁き合う。少しして、長いスカートをはいた女子生徒がナイフを手に立ちあがった。
「次は私の番です!」
身体を大きく振るってナイフを振り回す。
その軌道は井からすればスローモーションだが、一般の女子学生としては見所がある。そんな彼女の攻撃をいなしながら、青井は小さな違和感に気がついていた。
もし彼女がクラスメイトを守ろうとして……危険な侵入者をクラスメイトから遠ざけようとしているのであれば、
青井が教室内から逃げ出すように動くはずだ。
だが現在の彼女はその反対……
教室の中に青井を誘導するような動きをしていた。
「まさか……」
青井は野生的な勘で窓の外を見やる。
校庭を挟んで反対側、同じく校舎の三階のとある窓に光が反射するのが見えた。
青井は教室内にいる女子生徒の攻撃にも気を配りながら狙撃手の攻撃を回避する。
「しっかり考えたな。良かったぞ」
青井から距離をとるようにして固まっている生徒たちにアクアルーラーを発動する。
間髪入れずにインクボールを投擲すると、赤い飛沫が瞬く間に教室の中に広がりクラス三十人がまとめて大量死となった。
「考えて動いたこのクラスの生徒たちは褒めるべきだが……」
青井はアラドヴァルを抜刀し廊下へと飛び出す。
襲撃者を一目見よう。その好奇心だけで教室から顔を出した生徒たちがいた。青井はミカズチ流・ビャクライで立ち回る。
「……下の二人はうまくやってるかな」
襲撃者らしく眼光を光らせて青井は次の教室へと飛び込んでいく。