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盗まれたクリスマスプレゼント

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盗まれたクリスマスプレゼント
【!】このシナリオは同世界以外の装備が制限されたシナリオです。
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【2】プレゼントを奪還する




 川上 一夫は戦闘が嫌いだった。
 相手を痛めつけるのも嫌だし、自分が痛い目に遭うのも嫌だった。
 しかし、人々の役に立ちたいという思いは強くあった。
 だから今回はプレゼントの奪還に参加したのだ。

 一夫の作戦は、モンスター知識LV2を使って、ハーピーの好むエサを巣の周辺に撒くというものだ。

 エサは肉類だ。
 天高くまで運ぶのはかなり大変だったが、10キログラムほどの肉を準備した。
 
 巣から離れた場所に、肉類を置いていく。
 新鮮な肉に、ハーピーが集まってくる。
 一夫は身を隠した。

 三太がソロソロとプレゼントに近づいていくのを確認した一夫は、事前に魔力活性薬LV2を飲み干した。
 備えあれば憂いなしである。

 肉を食べて満腹になったらしい一体のハーピーが巣の方へ戻ろうとしていく。
 そこへ、フィルマバイブルLV10が投げつけられた。
 ハーピーの頭に当たったそれを投げたのは師走 ふわりである。

「こっちですよー!」

 走りながら、ふわりは両手を上げて叫ぶ。
 肉に夢中だった他のハーピーも何事かとふわりを視線で追う。

 「こっち! こっちです!!」
 
 フィルマバイブルを投げつけられたハーピーが飛び立ち、ふわりに襲いかかる。
 その刹那、豪雷が響き渡った。

 一夫が唱えたサンダーストームLV10である。
 先ほど飲んだ魔力活性薬と、身につけていたリングオブマジックLV1の効果で強化されたサンダーストームは、稲妻でハーピーを貫いた。

 一体が落ちると、他のハーピーたちがエサどころではないとふわりに襲いかかる。

(狙い通り! 好都合ですね)

 ふわりはシルバーファンLV7を開く。
 ハーピーは翼を大きく広げ、ふわりに襲いかかった。
 ハーピーの放った風魔法は、ふわりのシルバーファンで受け流され、ただのそよ風になっていく。
 
 右から。左から。
 ふわりはハーピーの攻撃をシルバーファンで受け流し、ハーピーの注目を集めた。

 *****

「大丈夫……だよな?」

 恐る恐る、三太はプレゼントに近づいていく。
 ハーピーは今、巣の近くにはいない。
 ふわりが善戦しているからだ。

 三太は弱い。それは自覚していた。来訪者が勇者候補なんて嘘だと思っていた。
 少なくとも、自分が勇者になるとは全く思っていなかった。

(でも……)

 サンタクロースは、三太にとっての勇者である。

 もちろん、クリスマスの朝に枕元に置いてあったプレゼントは、両親が用意した物だと知っていた。
 それでも、世界中の子供に夢を見させる存在のサンタクロースは、そこら辺のお伽話よりずっと、子供にとっての現実で。

「絶対に、俺もなるって決めたんだ! サンタクロースに!」
「そうですわね。三太様ならなれると思いますわ」

 三太の絶叫は、アリーセ・クライトの手によって塞がれた。
 アリーセはディスアピアLV6で完全に気配を消し、ワイヤードプレイLV7によってチェーンウィップLV5を駆使して高所を移動してきたのだ。

「しっ、ハーピーが気づいてしまいますわ」
「いやっ、いきなり現れてなんなんだ!?」
「だからしーっ!」

 アリーセは三太の口を塞ぎながら辺りを警戒する。
 幸い、ハーピーは気づいていない。

「よくって? プレゼントを回収しましたら、私が脱出まで警戒いたしますわ。だから静かにプレゼントを持ってこの場から逃げてくださいまし」
「お、おう……」

 アリーセはたおやかに微笑む。

「大丈夫ですわ。サンタクロースになるという三太様の熱意、しかと受け止めましてよ」

 三太はプレゼントに近づいていく。
 巨大な鳥の巣のようなそこは、鳥なら小枝で作るところを、普通の木一本を丸ごと使ったような作りだった。
 巣の中心には、ハーピーの卵がある。
 それには絶対に触れないようにしながら、三太はプレゼントを奪還した。

「さ、行ってくださいまし」

 三太はプレゼントを担いでその場を逃げようとする。
 アリーセはその背中を見送りながらポケットピストルLV4を構えた。

 その時。

「うわああぁぁぁ!」

 古くなって腐った木を踏み抜いた三太が、落下していく。

 アリーセは即座に天技ヘルシャデアツァイトLV1を使った。

 時が巻き戻り……。

 時間は三太がプレゼントを奪還した瞬間に戻る。

「三太様、足元には十分注意してくださいませ」
「え? あ、ああ……」
「間違っても古い木は踏まないように」

 念を押した結果、三太は落下しないで大木の枝にたどり着いた。

「メリークリスマスですわ」

 アリーセはふと微笑み、そうつぶやいた。
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