【プロローグ】
囚われたソフィーは牢の隅で震えていた。
ゴブリンを愛したとはいえ、全てのゴブリンを、ではない。
特にあのダンバというゴブリンは、明らかに危険だと分かる。
(助けて……! グエル……!)
自分が牢の中にいるということを忘れるため、グエルとの思い出で頭をいっぱいにしようとする。
初めて出会った時。
ソフィーは薬草を取りに森へ入っていた。
そんな中、グエルに出会って、最初は怖かった。
「祖母の腰痛に効く薬草を取りにきただけなんです! 許してください!」
それを聞いたグエルは森の奥へ戻っていき、次現れた時には薬草を手にしていた。
「この森はゴブリンのテリトリーだ。若いお嬢さんは近づかない方がいい」
驚いた。
こんな紳士的なゴブリンがいるなんて。
ソフィーは去っていこうとしたグエルを呼び止め、名前を聞いたのだった。
何度か隠れて会っているうちに、ソフィーはグエルに心惹かれていることに気づいた。
気づいた最初は戸惑った。グエルはゴブリンである。
人間である自分が好きになったと告白したところで、どうなるだろう。
もう会ってくれなくなるかもしれない。
そんな中での、グエルの告白――というより、プロポーズ。
嬉しかった。
何も考えずにOKしてから、グエルが色々と問題点を言ってくれて、でも、それでもグエルと一緒にいたくて、即答していた。
「全部、グエルと一緒にいられるなら耐えられるわ」
言ってから、それが本心だと気づいた。
「グエル……」
名を呼んで、小さく微笑む。
愛しい人の名前。
「絶対に助けに来てくれるわ」
ソフィーは自分を鼓舞するように言った。