【1】取り巻きのゴブリンを倒す
シーナ・ロンベルクは地面を這い、コントロールトラップLV5の力で罠を回収していた。
ゴブリンは自分たちの縄張りに数多く対人性の罠を仕掛けており、そのまま何も考えず進めば罠にかかる危険があった。
「ふぅ……こんなものでしょうか」
概ねの罠を解除して回収し、シーナは汗を拭いた。
そこへ一人の凛々しく美少年めいた人物が近づいてきた。
「罠解除、お疲れ様。ありがとう」
古城 偲はそう言って、シーナの隣に腰を下ろした。
「ゴブリンは低能なれどバカではありません。自らのテリトリーで徒党を組まれれば油断ならない存在になり得ましょう」
「その通りだね。敵を侮ればその分隙ができる。そこを突かれたら最悪だ」
シーナは頷き、立ち上がる。
「偲さん、奇襲を仕掛けるのでしたね」
「ああ、援護を頼むよ。僕はせいぜい派手に暴れて見せるさ」
偲も立ち上がり、開始の花火とばかりにサイケデリックLV5を放った。
集まっているゴブリンたちが混乱した様子で周囲を伺う。
見ている幻覚が何か……それはゴブリンたちにしか分からない。
「これだけじゃないよ!」
パラリティックポイズンLV5を霧のように広げ、偲自身には月光晶LV5を使った。
凛々しかった偲の口元が凶暴に歪み、全身の毛が逆立つ。
狂った獣――そうとしか言えない様相には、先ほどまでの偲の面影はない。
偲は蕩けるように甘い声音で叫んだ。
「ああ、気分が高揚してる……! 少し強気に出るけど許してくれ……!」
フラッシュLV1で激しい閃光を放ち、ゴブリンたちの視界が奪われる。
サンダーテールLV9を振るい、わけも分からぬままゴブリンたちは屠られる。
逃げようにも麻痺毒に侵された体は思うように動かない。
「そこもそこもそこも……! 全部僕の獲物だ……!」
絶叫して、偲はエイムウィークネスLV3で確実に敵の弱点をサンダーテールで強かに打っていく。
その周辺にいるゴブリンは掃討されようとしていた。
しかし、パラリティックポイズンが効きにくかった端の方のゴブリンから徐々に逃走を始める。
思うままに暴れている偲はそれに気づきつつも、あえて放置した。
なぜなら……。
「ウギャ! なんで毒矢がこんなところに!?」
「竹槍罠はここには仕掛けていないぞ!」
その周辺一周、シーナがコントロールトラップで罠を再設置し、逃げられなくしてあったのだから。
「自ら仕掛けた罠にかかる気分はどうですか? ……ああ、ほとんどは毒が塗ってありましたね。天国に行けるなら、そこで悔いてください。もっとも、あなたたちが行くのは地獄でしょうけど……」
中心に猛る獣の偲、周囲一帯にシーナが設置した罠。
ゴブリン地獄。
そう思わされる様相がそこにはあった。
「さあ、僕たちの地獄に」
「耐えられますでしょうか」
偲とシーナは口を揃えた。