プロローグ
「グェッヘッヘッッヘ! 北王国の姫、お前は金の卵を産むガチョウだ! せいぜい金蔓になってもらうぞ!」
ダーティ・マネーは黄金の鎧を揺らしながら笑った。
一方、北王国の姫と呼ばれた娘、
アスターシャはダーティをキッと睨みつける。
「私は北王国の姫なんかじゃないわ! あんたが何を企もうとも、私を助けに来る人なんていないわよ!」
ダーティはベロリと舌なめずりをして、後ろ手に鎖で縛られている豪華な服装のアスターシャに指を振って見せた。
「バカな娘だな、お前が本当に北王国の姫かどうかなんて問題じゃねぇんだよ」
北王国の紋章が刻まれたペンダントをその指に引っ掛け、クルクルと回す。
「大事なのは『王国の姫がオークに囚われている』という情報が世間に流れること。そのために今本物の北王国の姫の一人が行方不明という情報を掴んである。そこでオークに囚われた姫のニュースを王国各地の報道機関に売る。王国は醜聞に晒されることになる。そこでニュースの元になってる俺の元に話がくるはずだ。ここで金を引っ張りに引っ張る。それで最後はお前を売り渡しでもして終わりだ」
「なっ……! そんなの、うまくいくわけないわ!」
アスターシャが言い返すも、ダーティは計画に自信があるようだ。
「いいや、うまくいくね。これは王国城下町で売っていたパチモンのペンダントだが……これが話に信憑性を持たせる」
「そういえばあんた私の首にいつのまにペンダントなんかつけたのよ」
「それはちょちょいっとな?」
ダーティはアスターシャに顔を近づけて、下卑た笑みを浮かべた。
「しっかし、犯すにもつまんなそうなほどヒョロヒョロのガキだな。ま、金にするのに傷物にするわけにもいくまい。俺の好みはボンキュッボンのグラマラスボディだしな!」
ガッハッハッハ! と高笑いを一つして、ダーティはゴブリンたちと囲んでいる焚き火の元へ戻っていった。
アスターシャはなんとか抜け出せないか体を捻ってみたが、鎖は強固に巻かれていてどうしようもなさそうだ。
空を見上げる。
「神様なんて、信じてないわ……」
ぽつりつぶやいた。
声の端が震えていた。