【神社の修繕を手伝う(1)】
火鎧府熊襲の北の方にある山の麓にある、とある神社の元に宮大工の職人と御魂闘士たちは集まっていた。
その神社は、いつ頃から手入れもされずに放置されているのかすっかり荒れ果てており、修繕工事をするにもかなり手間が掛かりそうだった。
修繕に使用する資材は、背負子で持ってこれる大きさの物は運び込んでいたが、大きな資材は別で動いている部隊が筏を用いて輸送する手はずになっていた。
「よしっ!さっそく作業に取り掛かるか」
宮大工の親方は腕まくりをして、どこから取り掛かろうか周囲を見渡す。
「その前に、少し良いかな。安全を祈願してお清めをしたいのだけど…」
すると、
壬生 杏樹が親方に向かって声をかけた。
「おうっ、そうだな。お願いするよ、お嬢さん」
「うん、それでは…」
杏樹は、神社の前に立つと楠木の弓を弦楽器のように鳴らして、神聖な雰囲気の音色を奏で始める。
そして、最後に袂から錫の金剛鈴を取り出すと、シャンっと澄んだ音色を鳴らして一礼をした。
「これで大丈夫だよ!」
「ありがとよ!ボチボチやっていくか」
杏樹のお清めの儀式が終わると、親方は周囲の職人たちにあれこれと指示を出し始めた。
「私たちは、職人さんが作業しやすいように周囲の草木を刈っていきましょう」
「そうですね、それにしても伸び放題ですね…」
職人たちが作業の段取りについて確認している間に、
砂原 秋良と
永見 玲央の二人は、草刈り鎌を手に神社の周辺の伸び放題の草木を刈っていく。
一時間ほど休まずに草木を刈っていると、神社の周辺が見違えるように綺麗に整えられた。
「ふぅ、さすがに少し腰が痛くなってきました」
玲央は立ち上がって腰を伸ばしながら拳で叩いていると、
永見 博人が近くに寄って来た。
「腰痛なら僕に任せて!」
博人は、神楽笛を取り出すと癒しの音色を吹き始める。
玲央と近くにいた秋良や宮大工の職人たちは、目を閉じて美しい音色に耳を澄ませる。
その音色を聞いていると、次第に体が軽くなっていくのを感じた。
「ありがとうございます、博人くん。疲れがすっかり吹き飛びました」
秋良は肩を回しながら、笑顔で博人に話しかける。
「それは良かった。そうだ、向こうのお爺ちゃ・・・宮大工の皆さんにも聴かせてあげよう!」
博人は嬉しそうな表情で、今度は遠くで作業をしている宮大工の職人たちの元に駆け寄っていった。
「さあ、私たちも今度は資材運びでも手伝いに行きましょうか」
「ええ、行きましょう」
すっかり元気になった秋良と玲央は、本格的に修繕作業を始めた宮大工の職人たちの元に行って力仕事を手伝い始めた。