■時を超えるモノ
快晴の昼、現代のザイト、ネーヴィアのジュロッス、喫茶店『シュザリス』の店内。
「……美味しいですね……あれですね。間違いなく過去で私が描いた絵は」
馴染み客として訪れた
邑垣 舞花は、『気品』が滲む所作で紅茶を飲みつつ周囲を探して見つけた20年前に訪れ進呈した絵画との再会に喜び、口元が綻ぶ。
そんな舞花の耳に客達のお喋りが入って来る。
「この後、ラーメン食べに行こうよ!」
「20年前に、貧民区域で出会ったラーメンに感動して試行錯誤した末に開いたとかいう店だね」
この世界には不似合いな料理の名前。
「……ラーメン……ですか」
過去改変に遭遇しても舞花に動揺はなく、慣れたものだ。
「そろそろ星霊石粉被害者の会『笑顔の空』に行かなきゃ」
「20年前の交流会をきっかけに被害者関係者で作った団体だっけ」
交流会がきっかけになったらしい会話。
「20年前の交流会の後、襲撃者は捕まった翌日に自由になってどっかの警察の署長はクビになったけ」
「あの女優のフィリーサ、交流会の後も色々大変で、今では被害者の支援がメインで女優は副業だっけ」
交流会の主宰の一人の行く末。
「あの交流会を記事にして記者達への妨害が酷くなって、交流会から3年後には妖人の記者は集めた情報を保管している妖人だけの村に引っ込んで、人間の記者は被害者の会で忙しくて、今では新聞社はやめてはいないけど同然の状態で……」
記者達の現在の状況。
「ご馳走様」
紅茶を飲み終わってから絵画の前に立った。
「……この絵にほんの少しだけ触れさせて貰えないでしょうか。可能であればで構いませんので」
店長に訊ねて許可を貰った後、
「この絵はどんな歴史を見てきたのでしょう?」
舞花は絵画に手を触れ、『サイコメトリー』を発動させた。
見えて来たのは、
「……これは(絵画を渡した後でしょうか……お客様と一緒に盛り上がっていますね……額縁まで作って頂いて……)」
職人が作った額縁に絵画を収める店長夫妻、見入る周りの客達、ほっこりした風景であった。
「……この喫茶店の雰囲気は変わりませんね(でも、過去改変が可能な以上、ザイトの『正史』は書換えられ続けます。例え消失した歴史があっても、それを知る住人の方々がいらっしゃらないのは寂しく感じますね……せめて私の記憶には留めておきましょう)」
舞花はそっと胸に手を当て、今日のひとときを記憶に刻んだ。
現代や過去での調査などを終えた特異者達は、得た情報を参加した皆やホライゾン庁に全て報告をした。