【住人救出作戦】
集落の住居地区には2人の特異者がやってきている。
「こっちだ」
「了解!」
島田中 圭二が先行をしつつ、その後ろを
小白 紫炎がついてくる形で進んでいく。
この場所にも敵は多いため、全てを相手をしていたらキリがなくなってしまう。そのため、可能であれば戦闘を避けつつ進んでいく事にしていた。
「あの辺りのはずだが――」
圭二が目的の場所を見付けると、そこにはラクシャスとヤクシャの姿が目視で見ることが出来た。それ以外の敵は見えないので、排除しなければ救助者を見付けられないだろう。
「出来るだけ周りに影響がないように戦いたいんだけど……ダメかな?」
紫炎が圭二に提案する。
この場所は救助される人達からすれば思い出の場所である事に違いはない。だからこそ、建物などを出来るだけ壊さないようにして戦いたいと彼女は思っている。
「分かった、そうしよう。それなら確実に削っていった方が良いだろうな」
紫炎の提案に頷いた圭二はこの辺りの地形を思い出しながら、誘導出来るような場所がないかを考える。しかし、隠密行動をする事が出来ないので距離を大きく開けたまま攻撃する必要があった。
「わたしがこれで狙うから大丈夫だよ」
機械弓「サマエル」を見せて紫炎が言うと、その目標をヤクシャへと狙いをつけた。
「今だ!」
圭二の合図で射程距離ギリギリから撃たれたエネルギー弾は追尾することで確実にヤクシャの胴体へと直撃。それによって、ヤクシャとラクシャスの2体はこちらの存在に気付いた。
「ここから少し下がった場所に開けた場所がある。そこで戦うぞ」
「うん!」
ラクシャスの身体はヤクシャよりも大きく、暴れられたら周囲が破壊される可能性が非常に高い。それを避けるためにこの場所へとやってきた2人は振りむくと同時に武器を向ける。
前衛は圭二。ソードオフパニッシャー25CAを構えて敵へと接近していく。
シックナースからはエマージェンシートリートを投与してもらっているので、ある程度のダメージを受けても回復する事が可能だ。
まずは体が小さいヤクシャから倒すために、後方から飛んでくる矢を敵が回避する敵の動き合わせてトリガーを引く。
ハイアリングタクトが事前に銃の性能を上げてくれていたお陰か、威力が上がっており敵の腕に当たると内部からはじけ飛んだ。
「上からも気をつけな」
囮は紫炎の矢ではなく、圭二自身であった。
扶翼の衣で飛び上がる事が出来る彼女は空中からホーミングショットで追撃を行う。最初の攻撃のダメージ加えて連携でのダメージでヤクシャを撃破。
すぐさま圭二はラクシャスへと接近していき、続けて攻撃を仕掛けていく。
迅速に倒すことで被害を少なくさせる作戦であり、出し惜しみをしている状況ではない。
敵は体が大きいのでそれほど小回りは聞かない。空中からの紫炎の攻撃から圭二は後ろに回り込んで、回避をしつつ銃弾を確実に当てていく。
内部からの破壊でダメージが蓄積されていく中で、紫炎はラクシャスを狙う。
「これで終わりだよ!」
彼女が放った一撃はラクシャスを円形の光で包み込む。その光で苦しむ敵はそのまま倒れ込み、撃破する。
すぐに元の場所へと戻った2人は圭二が調べていたところへと行く。
「あ、あなた方は……?」
「救助にきた」
「もう大丈夫だよ!」
そこには5人の救助者を見付ける事が出来た。そして、この場所にまだいるのかどうかを話を聞きつつ、救助者を再度探し始める。
倉庫地区ではドローンが4機空中へと飛んでおり、それによって救助者を探していた。
「――こっちだね。向こうに反応があるよ」
「分かったわ、そちらへ行きましょう」
黒枝 ソラがフェザードローン3機を使いながら、周囲を探索しつつ、周囲の危険がないかを
ヒルデガルド・ガードナーのクラウン・ポッドが警戒をしている。
周囲の偵察をしながら救助者がどこに隠れているのかを見付けていた2人は慎重に進んでいく。ここまでに敵も確認しているため、住居地区へと向かった2人と同じく必要な戦い以外は避ける方針にしていた。
「しぇんちゃん達大丈夫かな」
「大丈夫よ、2人だって強いんだからね」
紫炎と知り合いであるソラが圭二と彼女の心配をするが、ヒルデガルドは彼らが戦い慣れている事が分かる。だからこそ、信じて2手に別れることにしたのだ。
「止まって」
ヒルデガルドが空の前に手を出して止める。その先には救助対象がいるが少し離れた場所にはラクシャスの姿を確認する事が出来た。
倉庫内なので物で姿を隠しながら進むことは可能だが、隠密を可能とする物などを持ってきていないので最悪の場合は戦う事になるだろう。
それでも、この距離であれば敵からも見付からないと考え、ソラのドローンで見張っててもらい、2人で住人の所へと急ぐ。
「助けに来たわよ」
「ほ、本当ですか……!?」
ここには女性が1人、子供が2人いた。
話を聞くに住居地区に資材を取りに来ていた女性が、集落が襲撃された際にその場にいた子供達を見付けてこうして隠れていたらしい。
「後この倉庫には何人いるか分かる?」
ドローンを使って周辺の捜索や地形を把握しているソラでも、どこかに隠れていれば見付ける事が難しくなる。彼女達の話から分かる事があれば聞いておきたい。
「まだここにいるよ」
「うん、あたしたち3人で遊んでたの!」
子供達が言うにはもう1人友達がいたようだ。そうなると確実にその子はどこかに隠れている事が分かる。
「何人か姿を見たので、大人もまだいるんじゃないかなと思います」
「ありがとう、すぐに戻るからここにいて」
情報から2人はすぐに周囲を調べ始め、どの辺りに隠れているかの当たりをつける。しかし、そこには敵が3体いるのが見えた。
「ヤクシャが3体」
「援護はボクがするから、安心して前に行って」
ソラの言葉に頷いたヒルデガルドは狂凍晴を構えて一気に敵との間合いを縮めていく。地面から倉庫の壁、そして天井を蹴ってそのまま着地をして虚をつく。
「残りもこっちに今気付いたよ、今なら確実にやれる!」
ソラの指示で目の前にいるヤクシャを横に払い、そのまま縦に斬りつける裏霞・十文字を放つ。大きなダメージを受けたヤクシャは動く事が出来なくなり、それを確認してヒルデガルドは立体的な動きをしつつ残りの2体も強襲。ソラの指示をもらいながら撃破をしていった。
そして、その先には先に救助をしていた3人の言っていた通りに大人が3人、子供が1人いるのを見付ける。すぐに移動を開始して、先の3人と合流し一先ず集落を出ることにしたのだった。
4人の救助で見付ける事が出来たのは全員で17人。その中で子供が5人と大人が12人だった。
集落の中にはすでに死んでいる人も何人もいたのを見ると、この集落には思っていたよりも多くの人が住んでいたのかもしれない。
しかし、ここからまだシェルターまで送らなくてはいけない。敵が多い中でそれを行うために、救助部隊は集落の入口付近で待機をして、敵が向かわせないようにするのであった。