●巨大な狼型ラクシャスを撃破せよ
オーストラリアにも、人々が暮らすドーム地区があった。
現地のメディエーターたちが防衛しているとは言え、ラクシャスがドーム地区に攻めてきたら、人々を脅かすのは目に見えていた。
そう察したのは、
小白 紫炎……現地のメディエーターたちと協力して、巨大な狼の姿をしたラクシャス退治に参戦してくれていた。
「おじ様たちが援護してくれるなら、わたしは攻撃を優先するね」
扶翼の衣を装備した紫炎は、低く飛びながら、ラクシャスに接近していくと、敵の足元に狙いを定めて、パーフォレイトショットを放った。そのエネルギー弾が迸り、ラクシャスの脚に貫通して、多大なダメージを与え、その一撃でラクシャスを撃破していった。
「まだまだ、ラクシャスがいるね」
紫炎はニュートリエントサプリを飲み込み、MDDの接続が整うと、シャイニングアラウンドを展開していく。
「獣は光に飲み込まれちゃえー」
扶翼の衣で飛行していた紫炎を中心に光の波動が広がるように円形の光のエネルギーが放たれていった。範囲内にいたラクシャスたちは、光のエネルギーに飲み込まれていき、その攻撃によって巨大なラクシャス三体が倒されていく。
なんとも頼もしいと、現地のメディエーターたちは驚きを隠せなかった。まるで、光を放つ蝶のようにも見えたという者もいた。
「魔法の消費は激しいけど……それには変えられないものもあるんだから」
そう……紫炎にとって、オーストラリアに住む人々も、守るべき存在なのだ。
自分の力で、人々を守ることができるならば、存分に自らの力を使おう。
その想いがある限り、紫炎のメディエーターとしての力が発揮されていくのだ。
「おじ様たち、遠くにいるラクシャスも、わたしに任せてね」
ブリッツブレットのレンジは長い。
紫炎が術式を唱えると、凄まじい雷撃が直線状に解き放たれ、巨大なラクシャスを一撃で倒していく。
「……もう一回ね」
ブリッツブレットを放つ紫炎。
その雷撃が直線に走り、またもや巨大なラクシャスを撃破していった。
「ふぅ、そろそろ、サプリの効果も切れそうかな?」
どっと疲れが来たのか、飛行していた紫炎は、ゆっくりと地上へと降りた。
気だるさはあったが、紫炎は安堵していた。
ドーム地区の周辺にいたラクシャスたちは、現地のメディエーターとの協力もあり、ほぼ倒すことができた。
「これで、しばらくは、攻めてくることはなくなるかな?」
その後、紫炎は、現地のメディエーターたちに案内されて、ドーム地区にある休憩室にて休むことになった。
「個室もあるんだね」
おかげで、ゆっくりと身体を休めることができた。
紫炎は、体力と魔法が回復するまで、休憩室のベッドで仮眠を取ることにした。
数時間後。
「んー、二時間くらい寝ちゃったけど……大分、落ち着いたかな」
紫炎は、ベッドで休憩したこともあり、倦怠感は無くなっていた。
しばらくすると、ドアをノックしてから、女性のメディエーターが個室に入ってきた。
「今回は、ありがとう。助かりました。まずは、身体を温めて下さいね」
オーストラリアは、日本とは季節が、ほぼ反対であった。
温かいスープが注がれたコップを手渡された紫炎は、そっと両手で受け取った。
「ありがとうございます」
手に持つコップは、適度な温もりがあった。
ゆっくりとスープを飲む紫炎は、今後の行方を、朧気ながら考えていた。