■夏祭りに全力参加!
「あら、もう夏祭りの時期でしたか……」
貰ったチラシをまじまじと見ながら、夏の訪れを感じる
早乙女 綾乃。
「夏祭りといえば盆踊りとか花火とか連想するけど、やっぱり屋台で普段はあまり見ないようなものを探すのも楽しいわよね!」
チラシを覗き込む
白波 桃葉は、脳裏に夏祭り定番の風景を思い描き、ワクワクから笑みがこぼれてしまう。
「どんなお店があるのか楽しみですね。私もご一緒します」
同じ気持ちである綾乃は、夏祭り参加前と言うのに声が弾んでいる。
「お店と言えば、ピノが一番行きたそうね」
桃葉は留守番をしている
ピノ・クリスの事が思い浮かび、口元をくすりと歪めた。
「そうだ、最近ピノに留守番ばかりさせてたからなぁ。今日は皆でピノを楽しませてあげよう。僕たちも屋台を見るのは楽しいし、たまにはいいんじゃないかな」
藤崎 圭がとんでもなく素敵な案を思いつき、
「そうですね」
「きっと、喜ぶわね」
綾乃と桃葉は即賛成した。
という事で、ピノに夏祭りの事を伝え、四人でワールドホライゾンの夏祭りに参加した。
晴れた夜を演出されたワールドホライゾンの夏祭り会場に到着するやいなや、
「わーい♪ わーい♪ 夏祭り! 夏祭り!」
桃葉達三人に連れられて来たピノが、軒を連ねる屋台と祭囃子にはしゃぎまくる。
「どんなお店があるのかなぁ?」
好奇心に爛々とする目で並ぶ屋台を見つめるピノ。
「ふふふ、楽しそうですね」
「誘って大正解だね」
綾乃と桃葉は、無邪気にはしゃぐピノの反応に微笑まし気な視線を注ぐ。
「今日はなるべくピノに合わせるよ。さぁ、ピノは何処に行きたい?」
圭は、可愛い妹分に視線を合わせて優しく声を掛けた。
「んーと、あのお店! キラキラできれい!」
ピノはきょろきょろ屋台を見回した後、びしっと心惹かれた屋台を指し示した。
「りんご飴の屋台ね。まさに屋台でしか買わない食べ物の代表よね」
桃葉がピノのチョイスセンスに感心していると、
「りんごアメ? キレイでおいしそ~♪」
ピノは可愛らしくトタトタと屋台に近寄り、
「わぁあ♪」
並ぶ林檎飴に目をキラキラ。
「どう? りんご飴は気に入った?」
隣に並んだ綾乃が訊ねると、
「うん! ピノ、食べたーい!」
ピノはぴょこんと弾み、祭りの熱気と好奇心にやられてか興奮気味な声は大きい。
「じゃぁ、買ってあげるわ☆」
綾乃ははしゃぐ妹を見るかのような優しい眼差しをピノに投げた後、林檎飴を買って渡した。
「わーいっ、ありがと桃葉ちゃん♪」
ピノは礼を言って林檎飴を嬉しそうに頬張り、
「キレー、あまーい」
口内に広がる甘々に虜になってしまう。
「ついでにお留守番の仲間の分も買っとこうかしら。お土産に割と良さそうじゃない?」
「確かに見た目が綺麗でお土産に良いですね」
桃葉と綾乃は、脳裏に浮かんだ本日留守番の仲間への土産をウキウキと購入する。
「折角だから、僕達も食べよう」
圭の言葉もあり、ついでに自分達の分も購入する事も忘れなかった。
購入を終えて林檎飴の屋台を離れて食べ歩きをする中、
「ピノ、次は何処に行く?」
圭が訊ねると、
「それじゃあ次はね……えっと、あのお店がいいな~」
ピノはぴょこんと少し離れた屋台を示した。
「次はあの店? クレープが食べたいの?」
桃葉は屋台を見てから、確認するように聞いた。
「うん! イチゴチョコのクレープ食べたい!」
ピノは林檎飴を平らげ、声を弾ませ屋台へ駆けて行った。
「屋台じゃなくても食べられるけど、まぁ、いっか☆」
桃葉は思う事はあれど、ピノの楽し気な様子に何も言わずついて行った。
そして、クレープを購入し、あっという間に平らげてから、
「あとね、お好みやきも食べるの~」
ピノはお好み焼きの屋台で足を止めた。
今度はお好み焼きを買って貰い、
「おいしい~♪」
もぐもぐと全力で頬張るピノ。
「お好み焼きも美味しそうに食べてるね」
「りんご飴とクレープとお好み焼きと……」
年上のお友達、お兄ちゃん目線でほのぼのとピノの食欲を見守る桃葉と圭。ちょっぴり、食べるペースが心配ではあるが。
「それから……」
ピノが次に食べる物を探してきょろりとした時、
「ピノさん……そんなペースで食べては最後まで持ちませんよ? まだまだお時間はありますし、ゆっくり食べましょうね。食べ物によっては持ち帰れるものもありますし……」
綾乃が心配から、待ったをかけた。
「あ、そうだねぇ。食べすぎちゃったらせっかくのお祭りで動けなくなるもんね!」
素直なピノは綾乃の心配をちゃんと聞き入れ、食べるのをお休みする事に決めた。
「ピノ、少しお腹の中を消化させるためにも一旦ゲームでもしようよ」
圭が夏祭りの別の楽しみ方を提案した。何も食べるだけが楽しむ方法ではない。
「うん! あの輪投げやりたーい」
ピノは軽く周囲を見回し、見つけた輪投げの屋台へ駆け寄った。三人も続いた。
輪投げの屋台に到着するなり、
「欲しいのあった?」
圭は景品に目をキラキラさせているピノに訊ねた。
「ネコちゃんのぬいぐるみ!」
ピノは、1等賞の景品をびしっと示しながら言った。意気込みは十分のようだ。
「うん、やってみなよ」
圭は料金を支払い、貰った三個の輪をピノに渡した。
「応援しますね」
「頑張って」
綾乃と桃葉は二人の後ろに控え温かく応援だ。
「みんな、見ててねー」
輪を受け取ったピノはぶんぶんと手を振って、声援に応えてからいざ挑戦だ。
「それぇえ!」
一投目、豪快に外れる。
「やぁぁ!!」
二投目、明後日の方向に飛ぶ。
「ピノ、がんばって(あらら、残念、外れまくっているわ)」
「ピノさん、そこです(あ、惜しい……次こそ……あ、また外れてしまいましたね。やはり着ぐるみの手で投げるのは無理があるのでしょうか……)」
桃葉と綾乃は精一杯応援するが、胸中では外れ続けるピノの様子にいたたまれない。
「おいちゃんがコツを教えてあげようか?」
外れぶりに同情した男性店主がピノに声を掛けた。
「おしえてー!」
ピノは速攻で乗った。それ程までにぬいぐるみが欲しいのだ。
「投げる時は輪っかを……」
店主は言葉優しく投げ方を教えてくれた。
「わかった! ありがとー!」
しっかりと投げ方を聞いたピノは店主に礼を言った後、ついに最後の挑戦だ。
「入れー、ペンギンボンバー!!」
ピノは、必殺技の名を意気込みたっぷりに叫びながら助言通りに輪を投げるが、
「ふみゅ、全然入らないよぉ……あのぬいぐるみほしいのにぃ」
大いに外れて、連敗を期してしょんぼり。着ぐるみの手では難しかったようだ。
「うーん……なかなか入らないね(あぁ……ピノがしょんぼりしてる……)」
圭は、落ち込むピノの頭を励まそうとなでなで。
「…………圭くん」
ピノがちょっぴり悲しそうに圭を見つめる。
「ピノ、取れるか分かんないけど僕もやってみるよ」
その顔を見た圭は優しい性格故に放っておけず、挑戦者として名乗りを上げた。
「……圭くん」
ピノが見守る中、圭は一投目を投げた。
「とりゃぁ!」
輪は美しい弧を描き、吸い込まれるように見事に入った。
「……割とすぐ取れたなぁ」
あまりのあっさり具合に圭は拍子抜けし、思わず肩を竦めた。
とにもかくにも、圭は店主から景品の猫のぬいぐるみを貰い、
「ピノ、はい、あげる」
ピノにあげた。
「わぁああ、ネコさん!」
受け取ったピノはぎゅっと猫のぬいぐるみを抱き締め、
「圭くん、ありがとー!」
嬉しそうに圭を見上げて礼を言った。
「どういたしまして(良かった、すごく嬉しそうにしてくれてる)」
圭は喜ぶ妹分の姿に安堵し、頭をなでなで。
「ピノさんが嬉しそうで安心しました」
「だね。自力ではないけど、喜んでるから良かった」
後ろで見守っていた綾乃と桃葉も安堵してにっこりだ。
「よし、次に行こうか、ピノ」
安堵した所で、圭は次の行き先を訊ねた。
「うん、次、あっちー」
ピノは、あっという間に目についた屋台へ駆けて行った。
「ヨーヨー釣りですか」
「あんなに楽しんで……来て良かったわ」
「結構回れそうだし、これならピノも満足かな?」
綾乃と桃葉と圭も続いた。可愛い妹分と過ごすひとときを心から愛しみながら。