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それぞれの世界での夏祭り・8

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それぞれの世界での夏祭り・8
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■人と交わり対策を


 快晴の昼、20年前のザイトのネーヴィア、ヴィンサに佇む星霊石粉専門店『グッツエ』。

「ご機嫌よう。この前に買った品が良かったのでな。今度は予約が必要という品を求めたい。予約はできるか?(前回に引き続き、この店で扱っている星霊石粉の調査をするとしよう)」
 ネヴュラ・シェーレは、『令嬢の嗜み』の物腰優雅な所作で上流階級の女性らしく入店。『ブライダルエステ』と】『シャ○ルの5番』風香水に紅玉の指輪で女の武装も抜かりなくだ。
「これはお客様……予約は可能ですよ。ただ、店頭品とは質も値も違いますが……」
 以前、自分を接客してくれたら男性店員が迎えてくれた。
「あぁ、頼む(あの女性は以前、見掛けた……予約をしているみたいだな……少し話を聞いてみるか)」
 ネヴュラは男性店員に用意して貰った注文票に記入しつつ、『センシティビティ』の感覚を活かして、店内や他の来店者の様子を密かに探る。ちなみに、予約個数は調査用と資料用で二つ。
 予約の手続きを終えたネヴュラは、
「ご機嫌よう(前も感じたが、この者は、この店の星霊石粉の中毒者になってるのでは?)」
 予約品を受け取る以前見掛けた陰鬱な面持ちの上流階級の人間の女性に声を掛けた。
「あら、ご機嫌よう。初めて見る顔ですわね」
 女性は上品に挨拶を返し、ネヴュラの顔をまじまじと見る。
「あぁ、知人からこの店を勧められてな。実は予約を入れたばかりなのだが……」
 ネヴュラは自身について不自然を抱かれないように当たり障りなくかわして、予約品の情報を得るために『エリュディション』の博識さを活かして、相手の関心を引こうとする。
「店頭の品よりずっと質がよく心を満たして気分がよくなりますわよ……わたくしは、クレーナ・フルーラです」
 クレーナが予約品の素晴らしさを語る様は、心酔し縋る色が滲んでいた。
「そんなに気分が良くなるものなのか?」
 ネヴュラが何気なく探りを入れる。
「もちろんですわ。周囲と自分を比べ生まれる虚しさを……世間で言われる贅沢でそれを埋めようとしましたが埋まらず、ますます情けなくなって……この店の品があれば満たされて安らいで心が幸せに包まれて虚しさが消えるのですわ……効果が切れるまで、ですけど……」
 クレーナは、抱えるどうしようもない気持ちを言葉にする。
「……そうか」
 ネヴュラは情報を得るためもあり、余計な事を口走る事はしなかった。

 同時刻、ジュロッスにあるファルク新聞社では、
「今回も引き続き、護衛をするわ。ふふっ」
 ミラシファー・冴架・アテネメシアがイリク・ラーダとアジュラ・イカンの記者二人に向き直り、軽やかな笑みと共に言った。今回も護衛をやるつもりだ。ちなみに青井 竜一は彼らから記事を貰い活動場所へ向かった後だ。
「前は本当に助かったよ。君がいなかったら……」
 イリクは再会の言葉よりも感謝の言葉が先に出た。
「いいのよ(襲撃犯を捕まえたばかりだけど、念には念を)」
 ミラシファーは前回の襲撃の事もあり、無意識に『オーラサークル』を張り、周囲を警戒する。
「そんな事よりも、万が一に備えた方がいいんじゃないかしら? 例えば重要な記録や証拠は写しを作ったり……別の安全な場所に移しておく方がいいわ。ここに火をつけられる危険もあるから。ふふっ(このままでの未来を知る者として、記者二人に助言を)」
 未来を知る者としてミラシファーは何とか回避する流れになればと言葉を選び、助言の体で伝える。
 途端、
「……確かに私達記者にとって情報は命……すぐに写しを作って、どこかに移さなきゃ、場所は……星霊石粉関連の企業が多いネーヴィアは避けて……ヨウドゥが無難かな……」
「ヨウドゥには……妖人だけをよしとする村もあるし……写しは後で手分けをしないと」
 アジュラとイリクは資料を隠す場所の候補を挙げて、思案を始めた。
「ところで、種族変えの星霊石粉を使って、妖人から幻獣になろうとした……そんな話を聞かないのだけど、その辺りはどうなのかしら?」
 ミラシファーはイリクに気になる事を訊ねた。
「試してみても無理だった、それとも……妖人がそういうことをするのは本能が止めるとか、強い禁忌意識とかがあるの?」
 少しでも情報を得たく質問を重ねる。
「それは……色々取材をして回る中、幻獣になりたい妖人が企業に問い合わせたら、すでに挑戦していたみたいでね。してみるも本能が禁忌だと訴えるのか無理だったそうだ。それは幻獣が他の種族になるのも同じらしい。妖人と幻獣は似ているようで違うみたいで」
 ミラシファーを信用するイリクは隠す事も無く情報を明かした。
「……本能ねぇ。その情報は記事にするのかしら?」
 ミラシファーは何やら考え込んだ後、当然の質問を投げた。
「するよ」
 イリクは即答した。
 この後、ミラシファーの護衛のおかげで二人の身は守られ、写しを取り本物はヨウドゥのどこかに避難をさせたりと、助言は実行され記事は無事に世に出た。

 同時刻、ジュロッスの飛行船ホテルの支配人室にて、
「空から見る幻獣の姿や景色は、素晴らしいものですね」
 『ハイカラさん』で外見を整えている青井 竜一が50歳の体中に魚の如く鱗を持つ妖人男性に向かって、『令嬢の嗜み』を活かした紳士的な振る舞いで、褒めた。
「ありがとうございます。ファルク新聞社の記者さんですね。お話したい事があるとか。わたくし、当ホテル『フリィディ』を経営していますイヴ・レーアンと申します」
 経営者である妖人男性が丁寧に挨拶を返した。竜一は、新聞社の記者として名乗り、面会を求め、こちらに通されたのだ。
「実はこれから先、幻獣の数が減っていく可能性が高いのです。そうすると、このホテルの魅力がなくなっていく危険があるのではと(……何より、ザイトの現在を悪い方向に。そんな悪意を感じる)」
 竜一は見えぬ嫌なものをひしひしと感じつつ、訪問前に調達したファルク新聞社の記事をテーブルに置いた。内容は、アレトゥーサという幻獣のフィリーサの星霊石粉での被害と回復の顛末だ。
「……女優さんの話ですね……種族変えの星霊石粉……」
 心当たりがあるように記事を見るイヴ。
「ですから、縁のある幻獣の方達に、種族変えの星霊石粉に危険があることも伝えてほしいのです」
 竜一の注意喚起に対して、
「……我がホテル『フリィディ』は、星霊石粉の大手企業の利用や資金を提供して頂いていて……」
 イヴは渋い顔で、内輪の事情を明かした。
「つまり、彼らの意に沿わない事をすれば、資金の提供や利用が減ると……?」
 竜一はすぐに躊躇う理由を察した。
「おそらく」
 イヴは渋い顔のまま肯定した。
「対応策として、幻獣の方達を雇い、ホテル独自の演し物を模索する。新しい名所ができれば、ルートを変更して取り入れる……そういうことを積極的にされては?」
 竜一は考えていた提案をする。
「……確かに収入が増えれば……当ホテルの支配人と従業員と相談してみます」
 イヴの反応は前向きであった。
 話を終えた竜一は現代に帰還し、
「……提案を実行してくれたんだな(……幻獣への注意喚起により、大手の利用と資金の打ち切りと諸々の社会不安のため、次第に幻獣の従業員は減り、現代では存続してはいるが過去に行っていたサービスの幾つかが利用不可になったと……)」
 街角の雑誌からホテルの行く末を知った。

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