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救助指令! 子供たちを連れ戻せ!

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救助指令! 子供たちを連れ戻せ!
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救助開始! 対象を見つけ出せ!

「ちょっと揺れるよ!」

 大胆なハンドルさばきで悪路を進むトラックを運転する日長 終日
 その荷台に乗り、ドローンの操作をしている弥久 ウォークス弥久 佳宵風華・S・エルデノヴァは、それぞれの担当区域の映像を食い入るように見つめていた。

「なかなか見つからんな」
「焦ってはダメです、もしかしたら向こうから気付いてくれるかもしれませんし」

 佳宵のドローンは向日葵を模しており、ライトをピカピカと光らせているので気を引きやすいだろう。
 風華のドローンはかなり小型なため、瓦礫の隙間などをすいすいとくぐり抜けている。

「万が一怪我をしていたらウォークスさんのドローンまで案内すればよろしいのですね」
「ああ、こちらのドローンには簡易だが浄化作用のある水を積んであるからな」

 その分他の二人に比べるとドローンのサイズは大型になっているため、細やかな部分は探索できないのだが、とウォークスは言う。

「役割分担しやすくていいじゃん! さて、この辺かな?」
「うん、この辺りを中心に捜索していけば、万が一の退路の確保も十分できるはずだよ」

 永見 博人は終日に言う。あらかじめドローンで調査しておいた旧都市の地形と子供たちの予測行動範囲を、他の特異者たちに共有して、自身も捜索に加わった。
 終日も自分のドローンをとりだし、担当区域に飛ばすと、しばし車内は沈黙とドローンの操作音だけになる。
 黙々と、集中して続けられた捜索の静寂を終わらせたのは、佳宵だった。

「……あら?」
「佳宵、どうした?」
「……いました! 子供たちです!」
「周囲に敵は?」
「索敵範囲内にはいませんが、十分気をつけてください」
『まかせて!』

 待ちかねたと言わんばかりに、トランシーバー越しに桐島 風花は勢いよく答えた。

「私も向かいます。全員いるかの確認もしなければいけませんし」

 風華も立ち上がると、トラックの荷台から飛び降りて駆け出した。


◇ ◇ ◇


 現場に着いた風花と風華の姿を見て、子供たちはびくりと体を震わせたが、二人が自分たちを助けに来てくれたのだと理解すると、案外素直に二人の元へと近づいてきた。
 子供の人数は四人。男の子と女の子が二人ずつだ。うち一人の男の子が、他三人を庇うように動いていた。

「怪我はない? 具合の悪い子は?」
「たっちゃんが、転んで膝をすりむいてるの」
「大丈夫だってのこれくらい!」
「でも……」
「はいはい喧嘩しないの。すぐに治せる人たちのとこに連れて行ってあげるからね」
「……ミカたちだけ連れてってくれ」

 たっちゃんと呼ばれた子が、他の三人を押しやるように風花たちに押しつけた。

「ダメですよ、怪我もしてるんでしょう?」
「俺はダメなんだよ! あいつらを探してやらないと……!」
「……まさか、はぐれた子がいるの?」
「…………ルリと、テツが。いつの間にかいなくなってて……」
「みんな、聞いた? 二人はぐれてるって! ルリちゃんと、テツくん、で良いのかな?」

 こくり、と子供たちは頷く。

『女の子一人、男の子一人、だね。了解。まだ探し切れてない範囲もあるからそこを重点的に調べてみよう』
「あと、けが人が一人います。軽傷ですが、準備をお願いしますね」
『わかった、すぐに治療できるよう準備しておこう』

 風花はひょい、と怪我をしている男の子を抱え上げる。うわ、と驚いた男の子は一瞬もがくが、特異者の力に敵うはずがなかった。

「大人しくしてなさいって。傷口からばい菌が入るよ」
「大丈夫だっての! だいたい、俺がみんなを連れてこなきゃ……」
「でも、だからみんなを守ろうとしたのですよね?」

 指先が白くなるくらい、力強く握りしめられたおもちゃの銃。
 他の子供たちを庇うように動いていた姿。
 はぐれた子を探そうとした姿。
 おそらく、この子がリーダー格の男の子なのだろう。

「俺、外が、こんな、……知らなく、て」

 泣き顔を見せたくないのだろう。風花の肩口に顔を押しつけるように埋めてしまった男の子の声は震えていた。
 つられて、他の子供たちもぐずぐずと鼻を鳴らし始める。

「お説教はあとでね。まずはみんな、無事に帰るよ!」


◇ ◇ ◇


「はぐれた子供さんのー捜索ですねー。 了解ですー」

 別のトラックで現場に到着していた取間 小鈴は、あらかじめ把握しておいた子供が隠れやすそうな場所の中から、まだ調査が及んでいない場所をピックアップして、地図に印をつけた。

 取りだしたドローンは、カブトムシの形をしたものだ。
 いくつかのポイントを調査し終わり、地図に調査済みの×印が埋まってきた頃、先行させていた一機にちらりと、小さな人影が映った。

「お、当たりーでしょうかー?」

 人影の正面に回り込ませる。うずくまっている少年だ。
 少年はドローンの飛行音に顔を上げると、目の前のカブトムシ型のドローンに目を輝かせた。
 手を伸ばそうとしてきたので、躱すように動かし、こちらへと誘導してやる。

「あ……!」
「無事ですかー? 大丈夫ーですよー、わたしはお迎えにー来たのですー」

 困惑と警戒を滲ませる少年に、小鈴はドローンを操って少年の手のひらにちょこんと一機を着陸させてやる。

「お怪我はーありませんかー?」
「う、うん……でも、みんなと、はぐれちゃって……」
「大丈夫ーですよー、他の子たちもー、無事に保護されてますからー」
「ほ、ほんと!? よかったぁ……」

 小鈴は安心して泣きじゃくる少年を連れて、トラックへと連れ帰ったのだった。


◇ ◇ ◇


『あと一人、女の子で、名前はルリちゃん。そちらの方向にいる可能性が高いと思う』
「了解、トラックを回しておいてくれるか?」
『うん、今そっちに急行してる』
「ま、そっちが着くまでに見つけられるように頑張るさ」

 博人からの通信を切り上げたロデス・ロ-デスは、改めて荒廃した都市の残骸を見回す。
 ロデスの調査はドローンで行うものではない。気配感知の技術と、聞き耳が主だ。
 機械技術が進んだアトラではあまりにアナログな調査方法ではあるが、専用の機械技術がなくとも行える、ある意味万能な方法。

 廃墟の中を歩き回るロデスの耳に、泣きじゃくる子供の声が聞こえた。
 気配はすぐ近く。ロデスは懐から煙草を取り出すと、火をつけた。

 すりむいたのだろう両膝を抱えて泣いている女の子を、物陰から見つけると、咥えていた煙草からふぅ、と長く煙を吐いた。
 煙はロデスのオーラと混ざり合い、鎮静効果のある煙として少女の周囲に漂い始めた。

「……?」

 少女が違和感に顔を上げた、その数秒後には、くてん、と力が抜けて眠り始めた。
 相当疲れていたのだろう。
 ロデスはそっと少女を抱え上げると、仲間たちとの合流地点へと向かって歩き出した。

「こちらロデス、ルリちゃんを見つけた。今からそっちに戻る」
『見つかってよかった! 周囲に獣の反応はないけど、気をつけてね』
「ああ、もちろん」


◇ ◇ ◇


「重傷者がいなくてよかった!」
「本当にな。全員無事で何よりだ」

 子供たちの治療を終えたウォークスと終日は、改めて子供たちの人数を確認してほっと胸をなで下ろす。
 トラックの荷台に身を寄せ合った子供たちは、それぞれ安堵しつつも、怒られるのだろう不安がありありと顔に浮かんでいた。
 ウォークスは、荷物から新東京饅頭とミックスソーダを取り出すと、子供たちに配り始めた。

「ひとまずこれを食べて落ち着こうじゃないか。何、俺たちは保護を頼まれはしたが叱ることは任務に入っていないからな」
「…………いいの?」
「もちろん! みんな無事でよかったね、っていうお祝いだよ」

 笑顔の終日に、子供たちの顔から不安が消えていく。
 わ、と饅頭に手が伸びて、それぞれ嬉しそうに頬張り始めた。

「さて、あとは無事に送り届けるだけだな」
「ある意味、ここからが本番ではあるよね」

 ウォークスと博人の小声のやりとりには、子供たちは気付かなかったようだ。
 子供たちに笑顔は戻ったが、ここはまだ混沌の領域、獣が息を潜めて獲物を待つ危険地帯だ。
 同じく飲み物やレーションを分け与える佳宵や小鈴も、未だその表情から緊張感は抜けていない。

「なあ、どうやったら兄ちゃん姉ちゃんたちみたいになれるんだ?」

 リーダー格の少年――たっちゃんことタツヤが博人たちを見上げて尋ねる。
 一瞬だけ顔を見合わせた一同。博人がタツヤの頭を優しく撫でながら微笑んだ。

「そうだね。知りたいのなら――コスモスアカデミーに入学するのは、どうかな」
「こすもす、あかでみー……」
「お勉強、しなきゃだめなの?」
「そりゃあ、もちろん。ドローンは簡単に動かせるものじゃないし、この「外」のことについてもちゃんと勉強してきているんだよ、僕たちは」
「そっかぁ……」

 見るからにしょげてしまった子供たちに、佳宵は微笑を浮かべて言う。

「テレビのヒーローも、修行やトレーニングをしたりするでしょう? そういうものですよ」
「あ、そっか!」

 納得した様子でお菓子とジュースに関心が戻っていく様を見て、一同は微笑ましく見守るのだった。

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