■まずは土を耕しましょう
「あっ、来てくれた! おーい!」
アルデアが手をぶんぶんと振り、集めた冒険者達――
星川 潤也、
アリーチェ・ビブリオテカリオ、
邑垣 舞花、
シン・カイファ・ラウベンタール、
ジャスティン・フォード、
マルチェロ・グラッペリ、
騎沙良 詩穂、
ロザンナ・神宮寺の8人が洞窟へ到着する。
そこそこに広い洞窟は8人が来たぐらいでは埋まることはない。この後も他の冒険者たちも来るらしいが、その人らを入れてもまだ広いよとアルデアは笑っていた。
「うわあ……広いな……」
「確かにこれだけ広いと、アルデアだけで薬草を栽培するのは難しそうだわ」
「いやいや、なんですかこれ? 全部が薬草の栽培地?!」
潤也とアリーチェがぐるりとあたりを見渡して呟くと同時、詩穂が驚きの声を上げる。
こんな広い土地で、アルデア1人に栽培させようとしていた依頼主。もしかして、と詩穂はある考えが浮かんでいた。
(……もしかして、依頼主の本来の目的はこっちだった可能性……アルデアさん、騙されたんだろうなー……)
(ちょっと可哀想だけど、それも冒険者よねー……)
1人で受けて、1人で頑張りたいからと受けた依頼。
兄のライアーに相談無く受けたため、魔物退治の裏に秘められた本質(薬草栽培)を見抜けなかったのが真相だろう、というのが詩穂とロザンナの予測だった。
……まあ、それが本当かどうかは……依頼人のみぞ知る……。
「ま、こんな依頼は気楽に考えりゃいい。これもお前が一人前になるための試練ってことだ!」
シンは逆に、こんな依頼は踏み台にしちまえばいいと言ってのけた。
こうして依頼内容に裏があることはよくあること。むしろ後になってでも先輩に相談したのは、よい働きだとも褒めた。
後輩の手助けをするのは先輩冒険者である自分達の役割でもあるからと。
「しかし、まだ魔物の気配がする……ので、少し考えながら土を耕したほうが良さそうですね」
ぐるっと辺りを見渡したマルチェロは、他に通じる穴を見て考え込む。
アルデアが倒したとは言え、まだ何処かへ通じる穴があるならこちらに近づいてくる可能性もある。
そこでマルチェロは冒険者達を集めて、ある作戦を告げた。