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【祓魔師/未廻組】祓魔師のカリキュラム8

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【祓魔師/未廻組】祓魔師のカリキュラム8
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 数々の実戦を熟した生徒たちに次なるステップに進んでもらうべくエリザベート・ワルプルギスは、改良した魔道具の習熟度を高める場を設けた。
 彼らはクオリアが長を務める人と魔性が共存する次元の都へ赴き、1日を通して課外授業を受け互いに協力し合い、数々の課題を全て達成したのだった。
 その課外授業の一つであった、モーントナハト・タウン付近にある遊園地に訪れ、行方不明となった人々について探る調査の結果は、惨憺たる状況のようだ。
 生徒たちは調査の過程で悲嘆や憤りを感じながらも、行方不明となっている魔女オメガ・ヤーウェの意思に憑依したステンノーが、その者の類まれな能力を利用したことによる仕業だと見解した。
 講師のラスコット・アリベルトは、生徒たちに全ての行方不明者の救助を行ってもらうための準備を整え、彼らをイルミンスールの教室に召集したのだった。
「本日の実戦の場は、モーントナハト・タウンに付近の遊園地だ。各自、資料と魔道具を受け取って、現地へ向かうように」
 ラスコットがそう告げると生徒たちは順次、資料の用紙と手慣れた魔道具へ手を伸ばし教室を後にした。
「あの…、ラスコット先生。少し、お伺いしたいことがあるのですが…」
 ベアトリーチェ・アイブリンガーは講師からハイリヒ・バイベルを受け取ると神妙な面持ちで声をかけ、ちらりと廊下の方へ視線をあてた。
 その仕草に込み入った話でもあるのだろうと感じたラスコットは一旦教室から離れた。
「オレに聞きたいこととは?」
「ラスコット先生。やはりエリザベート先生は、何かに悩まれているのでしょうか…。私、とても心配です。私たちにできることができることがあれば、教えていただきたいのです」
 どうすれば幼い校長が抱える心の痛みを解決できるのか、ベアトリーチェは真剣な面持ちで講師に問う。
「結論から言えば、元凶を断つことだ。しかし、それでは道理に反する。分かるよな?」
「えぇ、はい…。勿論です…」
 講師が口にした元凶のことについてベアトリーチェは薄々感じながらも、別の何かであってほしいと願うように心の中で葛藤していた。
 エリザベートが抱える憂いの元は、交友関係のあるアウラネルクが狙われたことから始まったのだ。
 ステンノーは相手の意思に憑依するだけでなく、次の獲物を捜すためその記憶の中にいる友好的な相手を探ることに飽き足らず、憑依体を物の如く傀儡として扱う。
 幼いながらも校長としての毅然とした心を崩そうと目論む、まるで真綿で締め付けるような手口だ。
 それを断つための手段を身に着けたとしても安易に行ってしまえば、祓魔師が掲げる道理に反してしまう。
 校長自身が、善しとするとは到底思えない。
「あの方と、互いに理解し合うというのは困難かもしれません。だからといって初めから諦めてしまうのは、何もしないことと同じですから…。私なりに最善を尽くします」
 いずれはステンノーの実体と対峙する可能性があるだろう。
 ベアトリーチェは魔性祓いを習い始めた頃の志へ戻った。
「いつも通りの君に戻れたようだな」
「はい、行ってまいります」
 柔らかな笑顔で一礼したベアトリーチェは仲間が待つ校舎の外へ駆けて行った。
 教室の方では、実戦の資料を手にしたルシェイメア・フローズンが、オメガの特徴や容姿についてエリザベートに質問していた。
「そうですねぇ~。アウラネルクさんから聞いた印象までしか分からないですねぇ。人が近づくと怖い…と思ってしまうようですが、本当はとても寂しがり屋みたいですぅ」
「なるほどのぅ…」
 エリザベートの説明と照らし合わせるため、ルシェイメアは資料のページを捲り、過去にオメガの身に起こったことを黙読する。
 彼女が触れる対象は全て傷つく等と繊細な心を打ち砕く言葉を投げ、悲嘆な孤独へ陥れた輩がいたようだ。
「この心情が特徴というわけじゃな」
「そうですねぇ~。以前、アウラネルクさんとお話した時に、詳しく聞けていたらよかったのですけど~」
「いや、よいのじゃ。あやつの憑依から解放されたとはいえ、心の療養が必要であろう」
 エリザベートから伝えられた情報を元に、オメガを捜すしかないようだ。
 校長よりも妖精の方が、その容貌についてレヴィアから耳にしているかもしれない。
 しかし、それを校長から問いかけることで、何かあったのか彼女に悟られる可能性があるのだ。
 魔性に意思を奪われたことにより身体を操られ、友人の大切な生徒たちと闘うこととなってしまった。
 未だ療養中のレヴィアのことだけでなく、続け様に起こってしまった要因の一旦となったことを知れば、さらに気に病んでしまうだろう。
「現地へ行けば、何か手掛かりなどがあるやもしれん。では、行って参るのじゃ」
 手元の資料とエリザベートから知れた情報を元に、新たな手掛かりを発見すればよいだろうと考え、ルシェイメアは教室を出た。
 彼女が教室から出るタイミングを見計らったかのように、アキラ・セイルーンはエリザベートの傍へ駆け寄った。
「なあ、エリザベート校長。課外授業以外とかでも、魔道具を貸してもらえないか?」
「え~っと。授業以外で使いたいということですかぁ~?」
「いつも頑張ってくれてるポレヴィークを楽しませてあげたいんだ、頼むっ!」
 紅葉のような愛らしい少女を呼び出すには、ニュンフェグラールという木の聖杯が不可欠であった。
 その魔道具を貸してもらうため、エリザベートを神の如く拝むように両手を合わせた。
「そぉ~ですねぇ、考えておきますぅ~」
「ありがたや~~っ!」
 天にも昇りそうな幼い女神の言葉に、アキラは心中に天使を溢れさせ感謝の気持ちで満たす。
 ニュンフェグラールと資料を手にし、ふわふわとした気分で教室から出ると、彼を待っていたルシェイメアに疑いの目を向けられた。
「のう、アキラ。先程、おぬしの大きな声が耳に入ったのじゃが。まさかよからぬことを…」
「天地神明に誓って、ポレヴィークを遊びに連れていくだけだって!その後で、ニュンフェグラールを校長に返すし」
 何一つ疚しい考えはなく、きちんと魔道具を返却する意思を伝えると、すぐにルシェイメアは納得したのだった。
「本来なら遊園地ってさ、すげ~楽しいところだろ?一緒に連れていけたらいいなって思ったんだ!」
「うむ。アキラにしては名案じゃな」
 普段ならアキラの考えに一言二言、小言を言っていたルシェイメアは今回の提案に対しは乗り気だ。
 エリザベートには具体的にどこへ…と伝えなかったのは、彼なりに配慮したつもりなのだろう。
 今から実戦となる場は、お世辞にも楽しい場所とは言い難い。
 ポレヴィークから見ても、そういった印象を持つ可能性があるだろう。
 遊園地という場所が、大勢の人々が捕らえられ苦しむための場として思われたままでは、ルシェイメアにとっても心苦しい。
 人々が笑顔で楽しむところへポレヴィークを連れていってやりたいのは、彼女としても同じ考えのようだ。
 イルミンスールの校舎の前で待つ仲間たちと共に、モーントナハト・タウンの付近に位置する遊園地へと向かった。
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