■観測すべし
昼、現代のザイト、ネーヴィアのジュロッス。
案内役の説明後。
「過去と現代を自由に行き来可能な世界、ですか。興味深いですね。過去の世界への干渉による現代での影響を調査してみましょう」
邑垣 舞花は好奇心もあり、
「映像に残しておけば改変後と比べる事が出来るはず」
情報収集のためビデオカメラのホライゾンカムコーダを回していく。
順調に記録する中、
「素敵な喫茶店ですね。色々お話を聞いてみましょう」
上品な外観をした喫茶店『シュザリス』に心がときめき入店し、店長である67歳の女性店長に許可を貰い録画を続けた。
「……香りが高くて……」
撮影だけでなく、『紅茶マイスター・極』を活かして紅茶も存分に味わう。
「ありがとうございます」
紅茶を自ら淹れた店長は大層喜んだ。
有する『気品』を発揮させつつ優雅に紅茶を楽しむ舞花は店内を見回したり、お喋りに興じた。
お喋りの内容は、
「常連の彼女は父親を亡くした20年前に起きた事件の犯人が分からず、家業を捨て犯人探しをしているようです」
『迷宮入り犯罪録』という本と怖い顔で睨めっこをする37歳の人間の女性客の事情。
「このパンフレットは、旦那とミュージの劇場に行った時の物です。無口なあの人から誘われて……」
棚に飾る演劇のパンフレットにまつわる店長の惚気話。
「ボクのお気に入りの星霊石粉の企業はウルギア企業かな。20年前に自然系に方向転換をした途端、業績が落ち込んで倒産したけど」
星霊石粉を扱う企業に関する男性妖人との真面目な話。
穏やかに過ごす事しばらく後。
ついに時が来た。
「!!」
眼前の事象に舞花はびっくり。
「あの探偵に会えなかったら犯人は捕まらなかったですね」
女性が閉じた本の題名に舞花はさらに驚いた。
なぜなら、
「……本の題名が『実録・有名事件』に」
変わっていたからだ。ちなみに撮影は止めない。
「ウルギア企業、モデルを雇うと決めても……」
妖人男性の残念そうな様子からウルギア企業の状況は変化無しのようだ。
「20年前に劇場の近くで幻獣が素敵な演奏をしていて……」
客とお喋りをする店長の様子を見つつ、
「……(なぜ過去改変が可能なのでしょうか。いえ、可能なのではなく必要なのでしょうか)」
舞花は過去改変について頭を巡らせた。
この後、舞花を含む特異者達が入手した情報は、皆で共有しワールドホライゾンの庁舎にも報告された。